ドキュメンタリー映画監督・海南友子さんは福島第一原発事故後、東京から京都へ移住、コープ自然派京都組合員。自身の妊娠出産を記録したドキュメンタリー映画「抱く(HUG)」、絵本画家の半生を綴ったドキュメンタリー映画「いわさきちひろ~ 27歳の旅立ち~」、著書「ママと若者の起業が変えたドイツの自然エネルギー」(高文研)など作品多数。

2018年12月1日(土)、コープ自然派京都はドキュメンタリー映画「ビューティフル アイランズ〜気候変動 沈む島の記憶〜」上映会を開催。
上映後は監督・海南友子(かなともこ)さんのトークショーを行いました。

沈みゆく3つの島の記録

 映画の舞台は、気候変動の影響を強く受ける3島、南太平洋のツバル、イタリアのヴェネツィア、アラスカ州のシシマレフ。島の深刻な現状を広く伝える責任を感じた海南さんは、構想10年間と撮影3年間を費やして映画を制作しました。島に息づくありのままの美しさを感じてもらうため、あえてナレーションやBGMは入れていません。子どもたちのまばゆい笑顔、その地に住む人々の暮らしや文化を観て感じる映画です。

 ツバルは9つの島からなる人口約1万人の小さな国。海抜が低いため、地球温暖化による海面上昇で最初に沈むと言われています。青い海、白い砂浜、跳び駆け廻る子どもたち、地上の楽園という言葉がピッタリの美しさ。映像はシレタちゃん(13歳)・アマタちゃん(10歳)姉妹の暮らしを追い、食卓を囲む大家族が食前に合掌する様子などが映し出され、ヤシの木でお酒をつくるおじいさんは「好きなときに魚を獲り、椰子の実を食べる」と話します。しかし、現実には学校で地球温暖化の授業が行われ、姉妹の親戚は高潮を恐れてニュージーランドへ移住しました。それでも、「島が好き、家族が一緒なら幸せ」だと少女たちは話します。

 世界遺産の街・ヴェネツィアは、アクア・アルタ(高潮)の被害に苦しめられています。1000年以上続く伝統工芸のヴェネツィアングラス、ナポレオンが世界一美しいと讃えたサンマルコ広場、誇り高きゴンドラ乗り、13世紀の古城を改装した名門ホテル「ダニエリ」、幻想的な仮面舞踏会の様子などを交え、美しい街並みを映し出します。一方、高潮警報が街中に響くなか、高潮用の台を並べた簡易通路がつくられ、住民は太ももまである長靴を履き日常生活を送ります。

 北極圏から南へ32㎞に位置するシシマレフは永久凍土が土台になった土地。温暖化の影響で溶け始めた海岸沿いが崩落し、家が壊れたままになっています。「海と陸が身近で両方の動物が捕れます。遭難しても銃があれば食べていけるので、子どもたちには銃の手入れ方法を教えています」と語る先住民族・イヌピアック族の主な職業は狩猟と漁業。24歳の息子が狩猟に出かけた帰り道、氷が溶け落ちて亡くなった島民が「自然も世界も何もかも変わっちまった」と語ります。

失われる島の伝統・文化

 2002年、海南さんは撮影で南米のパタゴニアを訪問。氷河、ラピスラズリのような青い海など美しい大自然を撮影している時、突然の轟音が響き、8階建てビルほどある氷河が音を立てて崩れ落ちました。今までつながっていた場所が一瞬で崩れるという体験に、気候変動をリアルに感じ、映画制作のきっかけになったとのこと。「初めは高潮などから逃げ惑う人々を撮影しようという浅ましい気持ちもありました。でも、リサーチを重ねるなか、それぞれの島で人々がどのように暮らしを紡いできたかを伝えたいと思うようなりました」と海南さんは話します。

 ツバルからニュージーランドへ移住する人たちも多く、移住先ではツバルの人たちの村ができ、祭りや合唱など文化・伝統を継承していますが、その土地に根づいたものが土地を離れて本当の意味で残ったと言えるでしょうか。ヴェネツィアでは、可動堰を設置して海水を止める「モーゼ計画」が開始されて10年。しかし、今も完成にいたらず、予算は当初の3倍に膨れ上がっているとのこと。ヴェネツィア住民は3割減少、観光業を生業としているために島自体は守られても、根づいてきた伝統・文化は変化しています。また、シシマレフは、島民の2割が自宅を失い、子どもたちの世代は移住を現実のものとして受け止めなければなりません。しかし、狩猟が続けられる移住先が見つからず、島だけでなくアイデンティティも失おうとしています。

司会を務めたコープ自然派京都・高尾理事。ビジョン「食と環境」担当理事として活躍。

Table Vol.385(2019年2月)