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くらしと社会

ジェニーさんに聴く、シリアの現状と想い

2011年から始まったシリア内戦では20万人以上が命を失い、400万人以上が難民として他国に避難しています。
9月18日(日)、コープ自然派おおさか(チームJINKEN主催)は、シリアから大阪に一家で避難しているジェニーさんに紛争時の体験や現状などを聴きました。

多民族国家・シリア

 ジェニーさんはシリア・アレッポ出身。3年前、戦争で破壊された故郷から大阪大学で学ぶ妹を頼って夫と息子とともに来日しました。2021年に大阪で双子を出産。現在は幼児体操教室や英会話講師を務めながらカフェ・サバナ(豊中市)でシリア料理を紹介しています。

 シリアの正式名称はシリア・アラブ共和国。1946年にフランスから独立する形で建国され、北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、西にレバノン、南西にイスラエルと国境を接しています。国民の90%はアラブ人で、クルド人が8%、その他はアルメニア人やギリシア人、アッシリア人、北コーカサス系民族、南トルコ系民族などで構成される多民族国家です。宗教的にはイスラム教スンニ派がもっとも多く人口の約70%を占め、その他はアラウィー派などイスラム教他宗派が約20%、キリスト教系のシリア正教会などが約10%、少数ながらヤジディ教などの信者がいます。

カフェ・サバナ(豊中市)でジェニーさんにお話を聴きました。参加者のなかには平和だった頃のアレッポで暮らしたことがある組合員も。

苦境が続くシリア情勢

 2011年、「アラブの春」を皮切りにシリアでも内戦が始まりました。40年間続いていたアサド政権に対して抗議運動が始まったのです。「アラブの春」の火種となったのはジャスミン革命という民主化運動で、2010年12月にチュニジアで起こり、その波が中東諸国へ波及しました。そして、この民主化運動はやがて近隣アラブ諸国へと広がり、シリアへも広がっていきます。現在、シリアはアサド政権政府軍と反政府軍の戦いだけでなく、クルド人勢力やトルコ支援勢力、それぞれを支援するアメリカとロシア、それに宗教的・政治的思惑が複雑に絡み合っている状況にあります。

 かつてシリア第二の都市として活気のあったアレッポは内戦によってホテルや学校などの施設やストリートも破壊されました。古くからの市場と歴史的建造物ウマイヤド・モスクは破壊しつくされ、11世紀に建てられたイスラム寺院の尖塔も倒壊しました。アレッポの特産品として1000年以上前からつくられていた石けんはオリーブオイルとローレルオイルでつくられたシンプルな石けんで、洗い上がりがしっとりとして安心して使える石けんとして世界中の多くの人に愛用されています。ジェニーさんの両親と弟は現在もアレッポに住んでいますが、1日2時間だけしか電気が使えずキャンドルを灯して勉強する弟の様子が映像で送られてきました。父親は心臓病を持っていますが、病院にも通えず薬も買えず。食べものも高価だということです。

 ジェニーさんは両親と弟も日本に呼び寄せたいのですが、コロナ禍で海外渡航ができず、渡航費用も高くなっています。これまでに日本に難民申請したシリア人は60人で、そのうち認められたのはわずか3人。欧州やアメリカでは数万~数十万人単位で受け入れている現状を考えると日本はあまりにも少ない現状です。

 当日は、中東では欠かせないスパイスだというザータルとオリーブオイルを混ぜてパンに塗った「ザータル・ブレッド」と、牛乳や砂糖を主原料にコーンスターチでとろみをつけ、冷やし固めた「メハラビア(マハラビア)」をいただきました。

フルーティーな香りが楽しめる「ザータル・ブレッド」。

Table Vol.476(2022年11月)より
一部修正・加筆

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