子どもの将来において、IQでは測れない非認知能力が社会を生き抜く力の支えになると言われています。
2022年9月29日(木)、コープ自然派おおさか「キッズ活動の会」は、摂津ポッポせんりおか保育園の壷井文栄園長を講師に迎え、非認知能力へつながる「アタッチメント(愛着)」をテーマに研修を行いました。
不安な感情を受け止める
子どもと養育者の間に築かれる情緒的な結びつきをアタッチメントと言います。子どもは保護者や周囲の大人に不安な感情を受け止めてもらい、愛される経験を通してアタッチメントを形成していきます。乳幼児期に安定したアタッチメントが形成できると、人とのつながりを感じ、自分や他人にプラスの感情を抱けるようになり、自分の感情をコントロールする力が身に付きます。一方、アタッチメント形成ができていない子どもは、周りの大人が信じられず、心を許さなくなります。
アタッチメントはスキンシップをとることだけではありません。ミルクをあげる、おむつをかえる、抱っこするなど、泣いている子どもの欲求をすぐに正しく理解できなくても寄り添う時間が大切です。なぜ泣くのかわからないのが当たり前で大人が落ち込む必要はなく、子どもの欲求に3割程度応えられれば良いということです。
安全基地になるために
では、アタッチメント形成に必要な関わりはどのようにすればいいのか。子どもが出す信号にすぐに気付いて応答するために、普段から子どもをしっかり見ていることが重要になります。しんどそうだな、けんかっぱやいな、顔色が悪いな、などいつもと違うことに気付いてあげたいものです。例えば運動会の練習を子どもが「やりたくない」と言った時、本当にやりたくないのか、みんなの前で恥ずかしいだけなのか、失敗するのが怖いのか、子どもの言葉の裏にある心と行動を察知しなければなりません。「お友だちがやっているのを見てみよう」と声をかけ、時間をおくとできるようになることもあり、楽しいという経験をすると次からは進んで取り組み始めます。
積み木でつくっていたお城が崩れたら、子どもはもっとも信頼できる大人の所に助けを求めます。そんな時は、「大丈夫だよ、応援しているよ、もう1回がんばってつくってみる?」と声をかけ、子どもの気持ちを受け止めてあげましょう。満足した子どもは心を立て直して積み木に再チャレンジすることができます。子どもは安心・信頼できる基地から探索に出かけ、基地に戻るということを繰り返すのです。子どもの安全基地になるには、子どもが安心しているのか不安なのか観察します。安心して探索し好奇心を発揮していれば、集中できるようそっと見守りましょう。見守る距離は成長とともに広がり、その子の発達に合わせなければなりません。何をして遊べばいいかわからない子どももいますが、絵本はさまざまな成長段階に合わせられるので、子ども自身が選び遊ぶのに最適です。
子どもが不安や悲しみを感じていたら、優しくなぐさめ励ましましょう。自分が守られていることを実感し、楽になったり気持ちが落ち着いたりする経験を通して、人への思いやりや優しい気持ちが芽生えてきます。信じられる仲間や頼れる人がいて、不安な気持ちをひとりで抱え込まず助けてと言える大人になることは、自殺やうつ、虐待を防ぐことにもつながります。「乳幼児期は、大人からの愛情行動だけでなく、不安な時に子どもが感情を素直にだせる、心のよりどころとなる安全基地になってあげてください」と壷井園長は話しました。
Table Vol.477(2022年12月)より
一部修正・加筆