西谷文和さん

西谷文和さんは各地での講演や執筆、テレビ・ラジオ出演のほか、「西谷文和 路上のラジオ」では一般メディアで取り上げられない情報を発信しています。

2020年8月29日(土)、コープ自然派兵庫(ビジョン平和主催)は西谷文和さん(フリージャーナリスト)を講師にオンライン講演会を開催。西谷さんは紛争地や戦場での取材体験をベースに、日本の政治・社会について言及、講演ではコロナ後の社会についても独自の視点で話しました。

尊敬する中村医師を取材

 2010年、西谷さんは医師・中村哲さんを取材。中村さんはハンセン病治療のためアフガニスタンに渡りましたが、多くの人たちの命を救うには水や食料が必要だと2003年から用水路事業を開始、砂漠に3000ヘクタールの農地が蘇りました。事業には現地の人たちを雇用、費用のほとんどは日本人からの募金で賄われました。用水路の隣には学校も建設し、教育の充実も図りますが、2019年12月、中村さんは銃撃されました。映像では西谷さんに現地を説明する中村さんの元気な姿が映し出されました。

核兵器戦争と原発

 2001年、アメリカの侵攻によって始まったアフガン戦争。西谷さんは戦禍で苦しむ人たちの様子を取材。ロケット弾で両足を失った10歳の子、父親は10年前に自爆テロで犠牲になりました。人口200万人の首都カブールではマンション建設も進んでいましたが、すぐそばには約80人が居住する難民キャンプがあり、不衛生な暮らしと過酷な環境下、半年で5人の子が亡くなりました。また、生まれてくる子は先天性異常や白血病の子が多く、アメリカ軍が使った劣化ウラン弾によるものだと医師たちは説明。アフガニスタンの子どもの6人に1人が1歳の誕生を迎える前に亡くなっています。

 劣化ウラン弾に使われる劣化ウランは、天然ウランを核燃料や核兵器に使用するために濃縮した後の残存物。世界でもっとも早く核兵器を使ったのはアメリカで、マンハッタン計画のもと1943年にウラン濃縮工場を建設、1944年にはハンフォードでプルトニウム精製を行いました。1945年7月16日、アメリカは世界初の核実験に成功。その1ヵ月後の8月6日に広島にウラン型原爆、9日に長崎にプルトニウム型原爆を投下しました。原爆を2回投下したのは戦争を早く終わらせるためではなく2種類を試したかったから。米ソ冷戦期には両国が核開発に血眼になり、1954年にアメリカは原子力潜水艦を開発。3年後に潜水艦に積んだ原子炉を陸に上げて原子力発電が始まりました。「原子力発電は電気をつくるためにつくられたのではなく、戦争のためのものを応用しただけ、日本にも54基ありますが、だまされてはいけません」と西谷さんは話します。

情報への冷静な判断を

 西谷さんは内戦下のシリアを4回訪ね、1発のミサイルで150人が殺害されたという現場も見ました。シリア内戦では1発5000万円から1億円のロシア製ミサイルが使われました。「宗教が違うとか領土争い、テロリストの攻撃、他国からの侵略などで恐怖をあおって戦争状態にすると儲かる人がいるんです」と西谷さん。戦争はウソから始まり情報操作が行われることが多く、1991年に始まった湾岸戦争では、直前にアメリカは当時15歳の高校生にウソの証言をさせました。「イラク軍はクウェートに侵攻し、病院で保育器に眠る赤ちゃんを次々取り出し冷たい床の上に放置して312人を殺した」と彼女は泣きながら証言。それを全米700のTV局が報道し、国民のイラクへの反感を背景にアメリカ軍は先制攻撃、裏で操ったのは広告会社でした。1年後に彼女の証言はウソだったことが明らかになりますが、劣化ウラン弾や戦車、ミサイル、戦闘機などが大量に使われました。

 「満州事変は日本軍のウソで始まり、トンキン湾事件はアメリカのでっち上げ。私たちはメディア情報をうのみにするのではなく、いろいろな角度から冷静に判断しなければだまされます」と西谷さん。メディアは権力側につくことが多く、アメリカはCMで若者を戦争に駆り立てました。日本では戦争賛美のCMはなかったものの関西電力は原発の安全性を強調するCMを福島原発事故まで頻繁に流しました。

コロナ禍の世界では

 続いて、西谷さんはパワーポイントを用いて格差社会の実態について説明。世界的に格差が広がり、コロナ禍によってさらに多くの人たちが危機に瀕しています。アメリカで警官に殺された黒人男性はコロナ禍で失業し、偽札を使った容疑で拘束され、首を絞められて殺されました。アメリカでは警察に黒人は白人の2倍以上殺され、背景には銃社会の問題があります。アメリカは長く戦争を続けてきて武器や銃を大量に生産、その余剰分を国内外で消費しています。日本にはF35購入を迫り、その費用に6兆円が見込まれています。

 コロナ後は世界的に大不況が予想され、日本でも企業の成長は望めません。すでに原発輸出は失敗していて、カジノ誘致もコロナ禍で危うくなっています。「ただ、先進国の中で賃金が下がっているのは日本だけ、他の国は労働組合がしっかり闘って賃金を守っています。日本もせめて賃金をもとに戻さなければ景気は回復しないです」と西谷さんは話します。

 さらに、地球温暖化が深刻です。今後、私たちが何もしなければ2100年に気温は5℃上昇すると言われています。台風は大型化しスピードが遅くなって被害が甚大になると気象庁は発表。昨年、オーストラリアでは雨が降らなかったため山林火災で日本の面積の3分の1相当分が消失しました。アフリカではバッタが大量発生して農産物を食いつぶしました。これは東アフリカに低気圧が居座り、砂漠に雨が大量に降ったため草木が生えバッタが産卵、ケニア、エチオピア、ソマリアのトウモロコシを食いつぶしてパキスタンやインドまで広がりました。グリーンランドの氷も溶け始めています。もはや気候危機という状況下、日本政府は気象庁の予算を削減しています。

あきらめずともに闘おう

 「政府やメディアはずる賢いのでA案かB案の選択を迫りますが、C案があることに気づかなければならない」と西谷さん。たとえば、A案「消費税を8%に据え置くが、年金を半分にする」、B案「消費税を10%に引き上げるが、年金はそのままにする」。そのどちらでもなく「税金は大金もちや大企業からしっかりとれば消費税をゼロにして年金も守れる」というC案があります。

 また、A案「沖縄の普天間基地は世界一危険な基地なので辺野古に移設する」、B案「辺野古新基地建設は県民の反対が強いので普天間をそのまま使う」という案だけでなく、C案「沖縄の海兵隊はグアムに行くことが決まっているので普天間基地を閉じても支障ない」というC案があります。

 9・11後、「アメリカにつくかテロリストにつくか」と二者択一を迫られ、日本は「アメリカにつく」ことを選択、それは戦争に参加するという選択です。しかし、「日本は平和憲法があるので話し合いで戦争をなくす努力をするという選択があったはずです。忘れない、あきらめない、だまされないをキーワードにともに闘いましょう。安倍首相の辞任で森友問題や加計問題、桜を見る会問題などなかったことにし、新首相のもとで一致団結して頑張ろうという動きがメディアでも強調されますが、しかるべき人にしかるべき責任を取らせなければなりません」と西谷さん。最後に西谷さんが編集した全国的な闘いの映像を共有して元気をもらいました。

Table Vol.427(2020年11月)より
一部修正・加筆