Table(タブル)はコープ自然派の情報メディアです。

食と農と環境

放射線照射食品って何?

1974年から日本で放射線照射ジャガイモの販売が始まり、現在も市場に流れています。
2022年10月11日(火)、コープ自然派事業連合・脱原発ネットワーク連絡会は放射線照射食品について学習会を開催、公衆衛生学博士・里見宏さんを迎えて、放射線照射食品の問題点や現状を聴きました。

※イメージ

米軍で始まり、禁止へ

 放射線照射食品の歴史は、1943年、食料の腐敗防止のために放射線を照射して殺菌するアメリカ陸軍での研究から始まりました。1952年、植物に放射線を照射すると被ばくして発芽しないことを発見、米軍・ネイティック研究所が中心になり本格的に研究が開始されます。1964年、FDA(アメリカ食品医薬品局)から許可を得て、兵士の食事に放射線照射ベーコンを出しますが、FDAによる独自の動物実験で放射線照射ハムを食べると繁殖力の低下や死亡率の増加、体重の減少などの異常が判明。1968年、放射線照射ベーコンとハムが禁止になります。1970年、米軍は放射線照射食品の開発を中止し(他の保存技術が開発されたこと、健全性の証明が難しいこと、開発費用が増大したことが理由)、米原子力委員会が研究・開発を引き継ぎました。その時の軍の研究データは機密扱いになり公開されていません。2007年、放射線照射食品から放射線が出ていることが50年前から隠され続けていたと判明しています。

 放射線照射すると食品の中の成分が変化します。しかし、1979年、FDAは食事全体の量の0.01%以下の分解物なら食べても良いことにしました。1980年、FAO(国際連合食糧農業機関)・IAEA(国際原子力機関)・WHO(世界保健機関)は”10kGy(キログレイ・吸収線量と呼ばれる単位)までの照射は健全性に問題がない“と発表。放射線照射ジャガイモについては、1977年、FAO・IAEA・WHOの合同専門家会議が毒性を否定しました。「私たちが食べているものは長い歴史の中で人体実験を続け安全性が証明されたものです。放射線照射ジャガイモの安全性は国際機関を使って捻じ曲げられました」と里見さんは話します。

放射線照射食品の危険性

 放射線照射するとシクロブタノンという物質が生成されます。2002年、パスツール研究所が行ったシクロブタノンの毒性実験で強い発がん促進作用が判明しました。厚生労働省の研究機関が調査したところ、50kGy照射した牛肉とベーコンからバックグラウンド放射線(宇宙線や天然の放射性物質などに起因する放射線)の2.4〜3倍の誘導放射能(放射線を照射すると食品から放射線が出る)が検出されることが判明しました。

 1967年、日本で放射線照射食品のマウスによる毒性実験が始まります。放射線照射ジャガイモで卵巣の重量低下、体重の減少、死亡率の増加、甲状腺脳下垂体の異常が確認され、生殖器など生命活動に重要な臓器に影響が及ぶことがわかりました。放射線照射タマネギは、3代目で肋軟骨融合という骨の異常、卵巣と睾丸の重量減少を確認、追試験では2代目で首の骨に肋骨が発生する頸肋という病気が2倍に。しかし、この実験データは科学技術庁原子力局によって隠蔽されます。

 インドの国立栄養研究所で照射小麦を栄養失調の子どもに6週間食べさせた調査では、照射直後の小麦と12週間貯蔵した小麦を食べた子どもの血液中から白血球の染色体異常が見られました。

 オーストラリアでは照射キャットフードを食べた猫が致命的な神経障害を引き起こす事件が起き、2009年からキャットフードの放射線照射が禁止されています。

反対運動と推進派の思惑

 日本で流通している放射線照射ジャガイモは、北海道士幌町農業協同組合から「芽どめじゃが」の商品名で販売されています。商品の袋に「芽どめじゃが(ガンマ線照射済み)」と表示シールが貼られていますが、販売店によって貼られていないこともあります。当初、国は年間製造量3万トンを目標にしていましたが、消費者団体による反対運動で3000〜4000トンまで減少。製造されている士幌町の照射センターは、小型のミサイルや爆弾が打ち込まれるだけでコバルト60(30万キュリー)というガンマ線源が外に飛び散る無防備な状態で、テロの標的にされると甚大な被害を被ります。

 「原子力委員会は原発を安全で身近なものと感じさせるために放射線照射食品を推進してきました。放射線照射食品は発がん物質や未知の物質ができる、放射線を照射すると食品から放射線が出る(誘導放射能)、推進派が推定で安全としている、照射施設がテロの対象となる危険性がある、照射しなくても殺菌・殺虫・発芽防止など代替する方法がある、照射ベビーフード事件のような悪用・乱用がおきるといった問題点が多数あります。また、飢え防止・食中毒防止など机上の空論で推進を図るのは、飢えている人に放射線照射食品を食べさせることになり、それ自体が差別につながります」と里見さんは話しました。

講師の里見宏さんは公衆衛生学博士、健康情報研究センター代表、照射食品反対連絡会世話人をしています。

Table Vol.476(2022年11月)より
一部修正・加筆

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

アーカイブ

関連記事

PAGE TOP