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食と農と環境

生産者消費者討論会 分科会での討論

生産者消費者討論会午後の部は、参加者が4つの分科会に分かれて討論しました。生産者の想いや取り組みを聞き、組合員の想いを伝え、ともにテーマを深めました。

分科会A テーマ「重イオンビーム育種米・遺伝子組み換え・ゲノム編集」

分科会Aの様子

 ゲストの印鑰智哉さんから「あきたこまちR」の秋田県内の動きについて詳しく聞きました。

 秋田県は2025年から重イオンビーム育種「あきたこまちR」への全量転換を決定していますが、県議会のパブリックコメントには6000件の反対の声が集まり、知事は全量転換を一旦やめると発表。しかし数日後には撤回しました。県内でも問題になっており、JA大潟村では従来の「あきたこまち」を守っていこうという動きもあります。秋田県有機農業推進協議会は「あきたこまちR」を有機農産物とは認めないと発表しています。

 地域では行政と問題意識を共有していくことや、農協を巻き込んでいくことも大切です。今後も秋田県の状況を注視するとともに、他県での同様の動きにも関心を持ち行動する必要があります。参加した生産者からは「秋田県の農家を守っていきましょう」と切実な声があがりました。

 下水汚泥肥料については、汚泥全てを否定するのではなく、汚泥の原料がどういったものなのかを知り、きちんと測定していくことが重要です。下水汚泥に含まれるPFAS(有機フッ素化合物)汚染に関しては、まだ測定方法も基準も定められていないので非常に問題です。

 食に関する様々な危機的状況を変えたり止めたりするのは、やはり消費者のチカラです。生産者とコミュニケーションを取りながら支えていく生協の取り組みが非常に重要です。今回の討論会に参加した人たちが知ったことを周りに伝え、みんなで活かしていきましょうと締めくくりました。

分科会B テーマ「農薬削減、ネオニコ排除の課題と対策」

分科会Bの様子

 ネオニコ排除の課題には大きく分けて3つあると考えました。ひとつは、ネオニコを排除した場合、その代わりとなる代替農薬や虫を防ぐ技術はあるのかという技術的な課題。2つめは、特に果樹では隣接園と密接していて、単独で排除するのが難しいという課題。自分だけが排除しても周囲から飛散してきたり、もしも害虫が発生した場合に周囲に多大な被害を与えてしまったりという心配があります。そして3つめは、販路が少ないという課題。コープ自然派以外の生協や量販店では、ネオニコ排除に取り組んでいるところがまだほとんどありません。限られた需要のために全量をネオニコフリーに切り替えるのは難しいというのが現状です。

 コープ自然派では2010年よりネオニコ排除を掲げ、青果、米、果樹と取り組みを進めてきました。ネオニコを使わないことで見た目などで「B品」とされてしまうものを、わけあり品として販売したり加工品に使用したり、買い支える体制も強化しています。わたしたち組合員がこれらを積極的に選ぶことで、生産者のネオニコ排除への切り替えを後押しすることができます。同時に、ネオニコの影響や危険性を広く伝え、ネオニコフリーの取り組みを他団体にも広げていくことの重要性も確認しました。気候変動の影響や、虫を防ぐ代替技術などについても情報交換し、知見を広める機会となりました。
 ※ネオニコ=ネオニコチノイド系農薬

分科会C テーマ「有機堆肥・肥料・地域循環」

分科会Cの様子

 産地の特徴はもちろん、農作物も堆肥の考え方も違うけれど、その中で共通するのは「良い堆肥を入れると良い作物は育つ」ということと、「肥料不足と資材価格高騰」の問題です。堆肥は肥沃な土にするための栄養です。大雪を囲む会の一戸さんは「堆肥づくりは難しいようで簡単な話。ある程度手順があり、どんな原料でも水分と酸素を上手に入れてきちんと管理してあげると上手につくれる」と。作物や緑肥の根で土をつくることも大切にすることが持続的で総合的な土づくりになります。堆肥の原料は様々、代表的なもみ殻や米ぬかは、お米を食べる人が減っているために不足気味。地域の資材で堆肥づくりを行うことを基本とし、廃菌床や、熊本では阿蘇山の火山灰や馬糞などを使い、その土地に馴染んだ堆肥をつくっています。それは地域循環であり、社会運動=有機農業です。自分で得たものを自分で育て、畑に還していくことが理想です。

 野菜セットはつくる人にも食べる人にもうれしい仕組み。ただ、単品より単価が下がるため価格重視の作物栽培に留まってしまいがち。野菜セットの価格に幅ができれば、生産者として果敢に挑戦できます。例えば、「夏の有機イチゴに挑戦したい!」というような若手がわくわくする農業をクリエイティブに行い、食べる人もわくわく感をもってもらえる野菜セットの新しい提案として、「農家が今、食べてほしいものの詰め合わせ」があってもおもしろいかもしれません。つくる人だけで解決できないことは、社会・食べる人を巻き込んで解決していきたい、そのために生産現場を想像して、産地の目線に立って私たちのくらしをつくる方法を模索したいです。

分科会Cアドバイザーの元木さん。
(中)「新規就農では一旦堆肥は統一し、施肥設計で生育診断すれば原因にあっという間にたどり着けます」と話すのらくら農場萩原さん。

分科会D テーマ「オーガニック給食」

分科会Dの様子

 子どもたちが毎日口にする給食を安全なものにしたいと、生産者と消費者がともに各地のオーガニック給食の取り組みや展望を話し合いました。

 飛騨市では来年度のオーガニックビレッジ宣言に向けて、有機米のオーガニック給食を今年度2回実施。飛騨市農林部食のまちづくり推進課・麻生さんは、カメムシによる斑点米が異物とされるケースなど現場との意識合わせが必要なことや、自治体として有機と慣行のどちらが良いという立場ではなく、選択肢を増やすことを意識していると話しました。ふしちゃんファーム・伏田さんは、野菜王国の茨城県で慣行農業が大多数を占める中、慣行を否定せず有機を広げるために、ひたちなか市のオーガニックビレッジ宣言を起爆剤に予算を確保した有機農業推進への期待を語りました。

 オーガニック給食に生産者が関わった事例も紹介されました。米卸会社のマゴメは昨年八王子市の全小学校に有機米を納入し、これから全中学校にも納入する予定とのこと。ビオ・マーケットは吹田市と茨木市の給食に有機野菜を納品し、有機給食に積極的な泉佐野市とはオーガニック農産物を使いたい優先リストをもとに調整中です。いそべじ農園・磯部さんは佐久穂町の給食に有機野菜を納入、子どもたちは美味しい野菜をよく食べることを目の当たりにし、「美味しい」を武器に有機給食にステップアップできるのではと話しました。

 分科会をきっかけにオーガニック給食が進んだ嬉しい事例として、昨年の分科会でビオ・マーケット・大矢さんのお話を聞いたことから、大阪市東住吉区の保育園でコープ自然派のオーガニックパンの導入が実現したという報告がありました。今回も活発に意見が交わされ、オーガニック給食に関わりたいと声が上がる一方で、予算や現場の衛生管理、市長はじめ行政の意思が大きいなど課題も山積です。保護者を巻き込んだ食育をはじめ、行政・学校・調理現場・生産者そして市民が協力して、オーガニック給食を進めていく必要性を参加者で共有しました。

Table Vol.499(2024年3月)

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