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くらしと社会

自分たちでつくる新しい働き方

2022年8月29日(月)、コープ自然派おおさかはワーカーズ学習会をオンライン開催。
ワーカーズコープ・センター事業団・田代明さんと、はんしんワーカーズコープ・馬場義竜さんを講師に迎え、新しい働き方について聴きました。

※イメージ

民主的で自発的な組織

 学習会はワーカーズコープ・センター事業団・田代さんのお話から始まりました。
 「協同組合」は共通の目的をもった人どうしが自発的に集まってつくる経済組織です。「組合員による出資」「1人1票の民主的な経営」「みんなで働くこと」を原則とし、安全安心な食の提供をする生活協同組合や仕事と暮らしを守る労働者協同組合など、みんなの共通の願いを事業と経営で実現します。「ワーカーズコープ」(労働者協同組合)とは、仕事をおこして就労機会をつくり、地域や社会に貢献する組織です。

 ワーカーズコープが実践する働き方を「協同労働」といい、働く人どうしが協同し、また、利用する人と協同し、地域に協同を広げるものです。みんなで話し合い、経営方針を決め、給与も決める、平等で民主的、差別の無い働き方でもあります。

 1971年、失業者や中高年の人たちの仕事と暮らしを守るために兵庫県西宮市で「就労事業団」が誕生、全国に広がり「中高年雇用福祉事業団全国協議会」が結成されました。1986年、同団体が労働者協同組合を目ざして「日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会」に名称変更(現在、就労者数1万6000人、総事業高350億円)。1987年、連合会の下に労働者協同組合のモデルとしての「ワーカーズコープ・センター事業団」を設立しました。

労働者協同組合法の施行

 2022年10月1日、「労働者協同組合法」が施行されました。これまで、ワーカーズコープに法人格を与える法律が日本にはありませんでした。法人格がないと、事業に必要な取引や契約がしにくい、社会的な信用がない、介護保険事業や国・自治体の委託事業など公的な仕事ができない、車両の購入や賃貸契約などを個人名義で行わなければならないなどの問題があります。そのため、ワーカーズコープ・センター事業団ではNPO法人と企業組合、任意団体の3つの団体として運営してきました。1998年から始まった労働者協同組合法制定運動が実り、2020年に臨時国会にて全会派一致で「労働者協同組合法」が可決。「労働者協同組合法」は多様な働き方の実現と地域の課題解決をすすめながら、持続可能で活力ある地域社会の実現を目ざすことを目的としています。

 NPO法人の設立には認証主義、企業組合や生活協同組合は認可主義が採用され、行政の裁量によって団体設立が左右されます。しかし、労働者協同組合は準則主義がとられているため、法律の要件を満たせば誰でも登記し、簡単に法人格が得られます。また、企業組合やNPO法人で活動している団体は施行から2年以内にワーカーズコープへと組織変更することができます。

 ワーカーズコープ(一般労働者協同組合)で出資配当は認められませんが、従事分量配当(労働配当)を行うことができます。また、ワーカーズコープは組合員と労働契約を締結し、組合員を労働基準法に基づく労働者として扱い、労働法規を遵守しなければなりません。一方、非営利性が高い「特定労働者協同組合」は一切の配当が認められませんが、税制上の優遇措置があります。

「夢を叶え、豊かなまちづくりをすすめ、地域課題をみんなで解決するためにワーカーズコープで仕事をおこしてみませんか?」とワーカーズコープ・センター事業団関西事業本部・田代明さん。

ワーカーズコープの発展

 1987年に設立したワーカーズコープ・センター事業団の仕事は公園清掃などから始まり、病院清掃や生協物流の安定した仕事を受託するようになります。2000年の介護保険法施行に伴い訪問介護や福祉事業を立ち上げ、2003年の指定管理者制度(民間事業者を含む法人・団体に公共施設の管理運営の代行をさせる制度)の導入により、公共サービスの市民化を目ざして制度に挑戦。また、学童クラブ・児童館など子育て支援事業に取り組み、飛躍的に前進します。2008年リーマンショック、2013年「生活困窮者自立支援法」が成立するなか、生活困窮者の職業訓練・雇用とともに、その人らしい生き方を模索する伴走型支援に取り組みました。現在、ワーカーズコープは地域の困りごとの相談や助け合い、みんなのよりどころとしての”みんなのおうち“づくりをすすめています。

地域とともに成長する

 続いて、はんしんワーカーズコープ・馬場さんから「協同労働の実践と組織づくり〜はたらくをもっと楽しく共創するまちづくり〜」をテーマに話を聴きます。

 兵庫県尼崎市出身の馬場さんは地元のワーカーズコープで働いていましたが、組織運営の方法や理念で意見が対立したことから、2014年に解雇または退職した仲間7名で「はんしんワーカーズコープ」を立ち上げました。現在、尼崎市に6ヵ所の拠点を構え、介護事業、障害児支援事業、就労支援事業、生活総合支援、高齢者生きがい就労事業、自立支援金受付業務事業を運営。就労者数40名(組合員16名)、事業高は約1億円に成長しました。また、組合員や利用者、地域の人たちと無農薬米栽培による自給の取り組み、みんなの食堂「ごはんどきっちん」開催、コミュニティスペースの運営、清掃活動など地域連帯活動を展開。さらに、地元の商店街「三和本通商店街」の活性化を目標に、近隣住民・学生・教師・自治体職員・NPO法人・銀行・保育所の人たちと「三和みらい会議」を立ち上げ、イベント開催など商店街を盛り上げています。

意見の表明、反映、決定

 はんしんワーカーズコープは昨年から毎月会議を開き、ミッション(企業の使命・目的、存在価値)・ビジョン(3〜5年の中期的な企業の目標、理想の姿)・バリュー(企業の価値観、行動指針)を考え、言語化するクレドづくりをしています。現在の組織文化の確認と伸ばしたい文化、利用者・組合員・地域社会の存在や目ざすべき姿、利用者への対応、組合員の自立・成長、仕事の取り組み方、チームワーク・人材育成、仕事への誇り・目標、組織の経営姿勢など自分たちでルールづくりをすすめているということです。

 はんしんワーカーズコープは事業を通じて目の前の問題を解決し、運動(問題提起)を通じて在り方やマイノリティに目を向けることを大切にしています。ワーカーズコープの原理原則やミッションを忠実に守り、常識を疑い活動していきたいとのこと。「協同労働の運営をする際、初めに行うべきことは『意見の表明』です。表明から、反映、決定まですすめるためには、話し合う時間や回数の確保なども含め意見が言える環境づくりが大切。また、現場で働く組合員が権限・裁量をもち、楽しく働きながら責任を行使できることも重要です。非効率なことも多いですが、意見反映は民主主義のトレーニングであると考え、一人ひとりが納得して運営に参加できることを探求し続けたいと思います」と馬場さんは話しました。

「ワーカーズコープは資金・ルール・働くことすべてをみんなでつくります。みんなでチームを所有しているという感覚をどこまで高められるかが鍵です」とはんしんワーカーズコープ代表理事・馬場義竜さん。

Table Vol.476(2022年11月)より
一部修正・加筆

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