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食と農と環境

菌は敵じゃない!地球を支える菌と虫

2020年10月3日(土)・4(日)、コープ自然派しこくは「菌ちゃん先生」こと吉田俊道さんの講演会を徳島市と高知市の2会場で開催。長年、微生物豊富な土づくりによる有機農業に取り組む吉田さんに、野菜づくりを通して見える生命の循環、人の健康との関係についてお話を聴きました。

10月3日(土)、徳島会場では子育て世代から家庭菜園など有機栽培に取り 組む人まで多数参加。ユーモアあふれるお話に笑いが絶えませんでした。

虫食いと栄養価の関係

 吉田さんが代表を務める「菌ちゃんふぁーむ」には色鮮やかに育ったキャベツが並ぶ一角に虫食いだらけの場所があります。これらは同じ日に種を蒔き、同じ条件で栽培したものです。キャベツは青虫に食べられ弱り続けますが、1ヵ月後、元気に復活することを吉田さんは発見します。野菜は虫に食われた場所を修復しようと栄養を集めるため、復活した野菜は美味しさが増すことがわかり、吉田さんは虫取りをやめたということです。

 吉田さんが農業大学と協力して行った実験では、虫が栄養成分を嫌い、腐敗したものを好むことがわかりました。吉田さんの農場で栽培したキャベツ(栄養価が高い)と大学の農場で栽培したキャベツ(栄養価が低い)を分けて青虫に与えます。青虫は吉田さんのキャベツを半量しか食べませんでしたが、同量の糞を出しました。つまり、栄養価が高いキャベツは分解されずに排出され、青虫の成長効率が悪くなることが判明。虫は栄養を摂取しても消化吸収できないことがわかりました。虫をはじめミミズやムカデ、ナメクジ、菌類は死んだものを栄養源にする分解者といいます。

「NPO法人大地といのちの会」理事長、「農業法人菌ちゃんふぁーむ」代表取締役の吉田俊道さん。1996年、長崎県職員から農業に新規参入し、有機農業に取り組む傍ら講演や執筆活動を行っています。

発酵型の土で美味野菜

 野菜は虫に食べられないよう虫が消化吸収しにくい成分を体の周りにつくります。この成分を抗酸化作用、または生物農薬といい、抗酸化成分が豊富なナスの皮は、夏の紫外線から体を守り、虫を寄せ付けない成分を発しています。しかし、植物は受粉するために殺虫成分をつくることはありません。

 団粒構造のフカフカの土で育った野菜には病害虫がほとんど発生しません。一方、濡れた状態で耕した土は腐敗し、野菜に病害虫が発生します。土の腐敗が野菜を弱らせる原因となり、有機栽培でも未熟な堆肥でつくった土は野菜が臭くなり、人間の汗や排泄物の匂い同様、野菜からも腐敗臭がするということです。「美味しくない野菜は買うのをやめるのではなく、生産者に声をかけ、原因を追求してください」と吉田さん。野菜の味には理由があり、栄養豊富なおいしい野菜をつくれば、結果的に農薬が不要になるということです。

世界を浄化する虫たち

 宮崎駿監督の長編アニメ「風の谷のナウシカ」は地球の自然の循環を描いた作品だと吉田さんは言います。映画の中で、腐海とそこに棲む虫たちは人間が汚した世界を浄化し、新たな腐海へと移動します。「人間や動物の体は毎日何千万個の細胞が死に、常に新しい細胞が生まれています。死んだ細胞を復活させるのが虫や菌類であり、死を食べて命を復活させる虫たちのおかげで地球は生命で満たされているのです。ナウシカのセリフ『腐海は人間が汚した世界をきれいにするために生まれたの。みんなに伝えて、腐海が生まれた訳を、蟲が世界を守ってるって』は有機農業の基本原理を言い表しています。地球に役割のないものはありません。すべて必要なのです」と吉田さんは話します。

 病原菌に強い健康体をつくるには腸内細菌を増やすことが有効です。有機農産物を食べることで植物内生菌が腸内に定着し、5〜6ヵ月間で腸内細菌の種類が増えます。また、4歳までに菌に触れてきた量がその人の腸内細菌の数と種類を決めるとのこと。新型コロナウイルス感染症の影響で、常に無菌状態をつくっている状況に「今後、免疫力が低く、体の弱い人が増えるでしょう」と吉田さんは警鐘を鳴らします。

 そして、腸内細菌を増やす食習慣について、有機農産物、旬の野菜、抗酸化成分が豊富な野菜の皮・成長点(根と茎の先端部分)、玄米、生命力に重要な微量栄養素(煮干し、小魚、雑穀、昆布、未精製油、エゴマ)、無添加発酵食品(長期醸造の醤油・味噌など)を選び、よく噛み、肉食を控え、空腹時間を増やし、お腹を冷やさないなどを吉田さんは勧めました。

司会を務めたコープ自然派しこく(徳島センター)エリアコーディネーター・樋口さん。

Table Vol.432(2021年1月)より
一部修正

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