2020年、営農企画とコープ自然派は北海道有機農業推進協議会を結成し、国産有機小麦1000tの生産と新たな市場創出を目標に、生産・加工・販売のネットワークづくりに取り組んでいます。今回のツアーでは、栽培技術と食品市場について3名の講師から話を聴き、生産者・メーカー・消費者によるトークセッションで議論を深めました。今回は、北海道有機農業推進協議会会長・今城正春さん(いましろオーガニック・ファーム/営農企画)による学習会「 北海道における有機農業栽培技術について」を紹介します。
有機資材のコストを削減
今城さんは「自分でつくったものは自分で売る」という考えを経営の基本に、栽培から加工、販売まですべてを自社で行います。有機資材は高価で経営を圧迫しますが、農作物乾燥調整施設・堆肥製造センター・微生物培養施設・農産物定温倉庫を自社で運用することで、コストを削減し利益を出しています。
「有機の畑には外部から購入した資材は1円も入れません。設備投資に費用はかかりますが、長く大切に使うことで採算が取れます」と今城さんは話します。
「みどりの食料システム戦略」による有機農業の推進で、有機農業への参入の増加が予想されますが、農業資材が高騰し不足しています。家庭や飲食店などから大量に発生する食品残渣を地域で回収し堆肥化するために、全国の各市町村に堆肥場をつくることを今城さんは農水省に提案してきました。来春始動の堆肥製造プラントには、農産物の残渣と加工食品会社から出る野菜くずの残渣年間5000tを投入する計画です。
従来、小麦は連作障害の問題から大豆とジャガイモの輪作で栽培します。今城さんは麦、大豆、大麦の輪作体系で栽培し、さらに、麦だけの連作技術を確立しつつあるということです。
安定供給とブランド力
「有機市場は無限にあり、営業する必要はありません。しかし、販売はパートナー選びが重要で、コープ自然派のようなパートナーが必要です」と今城さん。農作物は市場動向に左右されますが、信頼関係を結んで契約することで安定して生産できます。そのため、今城さんは現在収穫している小麦を農産物定温倉庫で来年まで保管し、来年4月から3月末に使用する原料として販売します。収穫後、すぐに現金化できず、種まきから現金収入が得られるまで1年以上かかりますが、サイクルが回り始めれば、生産者は安定して供給でき安心して生産が始められるということです。
関東で「北海道今城さんのオーガニッククリーミーSOYアイス」などの商品が“今城さんブランド“として定着し、販路が確立されています。「有機農業に参入する方は堆肥など弊社の有機資材や栽培技術、ノウハウ、ブランド力を利用し、パートナーとしてみんなで成長していきましょう」と有機農業の発展に協力を惜しまないことを今城さんは伝えました。
Vol.473(2022年10月)より
一部修正・加筆