2022年7月15日(金)~17日(日)、コープ自然派生産者クラブ(国産オーガニック研究会)、コープ自然派事業連合産直委員会、北海道有機農業推進協議会(事務局:コープ自然派事業連合商品部)は各生協の役職員と生産者による「2022年度北海道・国産有機小麦アンバサダー」ツアーを開催。有限会社営農企画・今城正春さんが運営する「いましろオーガニックファーム」の有機小麦圃場・加工工場の見学、学習会、交流を行いました。
大規模有機農業をリード
「いましろオーガニックファーム」は北海道中央部、旭川市に隣接した比布(ピップ)町と当麻町に約200haの畑をもつ大規模農家です。うち、有機認証農地100haでは有機小麦、有機大豆、有機もち麦、有機なたねを栽培しています。「自然派Styleオーガニック山食パン」「自然派Style今城さんの大豆で作った国産有機豆腐」など今城さんの有機小麦や有機大豆を使ったコープ自然派のオリジナル商品が組合員に人気です。
当麻町の有機JAS認証農場(32ha)では、大豆(とよみずき)・もち麦を栽培。畑は見渡す限り山に囲まれ、外部から農薬などの飛散物がなく、有機作物を栽培するには最適な環境です。「いましろオーガニックファーム」では今城さんと息子の浩貴さんの2人で広大な畑を管理。種まきはGPSを利用した自動運転の真空播種機で行い、3年後には完全無人化を目ざします。有機小麦畑では横幅6メートルある米国製大型コンバインを使い、あっという間に収穫と脱穀が行われます。雑草対策にはカルチという除草機械を使い人力・時間を省力化。大豆畑では植え付けの幅を狭くして太陽光を遮り、酸性のもみ酢液をまいて雑草の成長を抑制します。また、「自前で大量の堆肥をつくらなければ、大規模有機農場は成り立たない」と今城さんは自社のJAS有機肥料センターを運営。近隣町村から出る有機廃棄物(おが粉・鶏糞・もみ殻・廃菌床)を混ぜ、70~75℃で数ヵ月発酵させます。廃菌床は北海道産きのこの約3割を生産する隣町の愛別町産、もみ殻は1年ほど乾燥させてから使用。露天での堆肥づくりは天候に左右され理想的な熟成状態を保ちにくいため、来春には自動設備が整う堆肥製造プラントを始動させる予定です。L字自走式発酵撹拌機によるスクリューと床からの温風で発酵促進できる、最新の堆肥工場に期待が高まります。
CaoCao掲載の「今城さんの仲間たちのお米」は3名の生産者がつくっています。比布町の久保農園・久保昌義さんの田んぼは今年から有機に転換。「当初、稲は小さく、色が薄いため、あきらめそうになりましたが、今は青々と大きく育っています」と久保さん。カエルやオタマジャクシ、ゲンゴロウなどたくさんの生きものが見られました。
有機原料を自社で加工
1988年、デパートなどの陳列棚を手掛ける店舗設備の会社を経営していた今城さんは、生まれ育った比布町で農業経営に参入。オーガニックで差別化をはかろうと有機栽培の勉強を独学で始め、農機具や工場の機械、設備投資も積極的に行いました。自社の乾燥調整工場を設け、収穫した原料は有機JAS加工食品認証を取得した自社工場で製品化する一貫生産を実践しています。一行は、旭川市にある「オーガニック旭川工場」で包餡機、レトルト機、ガス充填や真空パックができる機械、オーブンなどピカピカに磨き上げられた最新機器を見学。「オーガニックどら焼き」「北海道今城さんのオーガニッククリーミーSOYアイス」「オーガニック発芽蒸し大豆」などを加工しています。
「有機農業は天候・タイミング・運に左右されますが、知識と経験を深めながら挑んでいます」と今城さんは話しました。
Vol.473(2022年10月)より
一部修正・加筆