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生産者訪問・商品学習会

ネオニコフリーで頑張っています!!

2021年11月18日(木)、コープ自然派おおさか(おおさか南ブロック主催)は自由個性集団「あくと」・小嶋哲也さんを迎えてオンライン学習会を開催。「あくと」は長野県山ノ内町でネオニコチノイド系農薬不使用のりんご栽培に取り組む生産者グループです。

「あくと」のりんごは高社山(休火山)の火山灰土で根を張り、大きくておいしく実ります。

自由個性集団「あくと」

 1970年代、減農薬栽培りんごを農協などの大きな組織に頼らず、自分たちで販売しようと立ち上がった若手農家の集まりが「あくと」の始まりでした。「あくと」は長野県の方言「かかと」という意味と、英語の「アクション」に由来します。当時、有吉佐和子著「複合汚染」やレイチェル・カーソン著「沈黙の春」など環境問題を告発する著書が話題になりました。また、ベトナム戦争で使用された枯葉剤など、農薬の人体への影響が社会問題となっていました。「あくとは変わった人たちの集まりです」と笑いながらも誇らしそうに話す小嶋さん。当初、無農薬栽培を試みましたが害虫が発生して失敗、その後は減農薬栽培を続けてきました。りんごは風と雨が大敵、近年は長い梅雨や台風の異常な雨量と風など温暖化の影響で病害虫の発生が増加し、10年前からあくとでも農薬の使用量が増えているということです。

「りんご狩りや生産者に会いに長野県にぜひ遊びにきてください。大阪で直売会もしたいです」と話す「あくと」・小嶋さん。

ネオニコフリーに挑戦

 2016年、コープ自然派からの要望に応えて、ネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ)不使用のりんご栽培がスタート。ネオニコは安価で残効性に優れ、カメムシ・ダニ・蛾の幼虫・シンクイムシなどの害虫に幅広く効果があることから農家にとって夢のような農薬です。ネオニコは昆虫の神経伝達を乱して効果を発揮しますが、ヒトと昆虫の神経伝達物質は同じであることから、脳神経の発達が盛んな子どもへの影響が懸念されます。また、害虫だけでなく益虫(ミツバチなど)まで殺すため、生態系のバランスを崩します。しかし、農薬メーカーは「残留基準(希釈)を守って使用すれば安全」と説明し、危険性が知らされることはありません。ネオニコの使用をやめることは、当初、「あくと」内で賛否両論がありました。代替農薬の価格はネオニコの2倍になり、畑の面積が広いメンバーは費用がかさみます。近隣にネオニコフリーを実施する農家が皆無だったので、「あくと」オリジナルのネオニコフリー計画をつくるための協議を重ね、防除体系(病害虫を効果的に防除するための方法や薬剤、時期など)をつくりました。

 ネオニコフリーに取り組むようになってカメムシの吸害によるへこみが目立つようになりました。シンクイムシは収穫が終わった桃畑からりんご畑へ移動するため防除の時期が予測できますが、年中活動するカメムシは防除の時期を特定できず、現在、カメムシ対策は直面している課題のひとつです。

りんご栽培の難しさ

 りんごを含む果樹は栄養を根から枝の先まで届けるため、下の方から花が咲きます。5月の開花時、下から一斉に花が咲くと養分がきれいに行き届いている証となり、開花にばらつきがあると実のつき方や収穫にも影響が出てしまいます。一斉に花を咲かせるためには、収穫後の施肥が重要です。小嶋さんは小祝政明さんからBLOF理論(高品質・高栄養価・多収穫を実現する生態系調和型農業理論)を学び、隣町のきのこ工場から分けてもらったおが粉を発酵させた廃菌床を肥料にしています。軽トラック1台分(約400㎏)を10往復して施肥。畑が雪に覆われ、やがて雪解け水とともに成分が土中に吸収されると翌年の実のつき方が良くなるということです。

 また、りんごは1ヵ所に5~6個の実をつけ、中心果を残して周囲の側果をとります。しかし、2021年は遅霜による被害があり、中心果が落ちて小ぶりの実になりました(小ぶりのふじはおいしいそうです)。霜が降ると実にサビ(茶色いかさぶた状)が出てきます。小嶋さんの畑にはさらに雹(ヒョウ)が降り、氷の粒が当たって傷ついた実は、加工用になってしまいました。

 「寒気に当たると蜜の入りが良くなります。でも、市場ではりんごの出荷数が少ない時期に早く出そうと、完熟する前に収穫したりんごが多く並びます。11月下旬まで収穫を待ったりんごは完熟の証・蜜入りでほんとうにおいしいですよ」と小嶋さんは話します。

 高齢化などにより「あくと」メンバーが今年は10軒から6軒に減少、現在、新規就農者の迎え入れを検討中です。

「最近の子どもは下のあごが弱くて、りんごの丸かじりができないと聞きます。皮ごと安心して食べられる、歯固め用の小ぶりなりんごがあるとうれしいですね」と進行役のコープ自然派おおさか・内田真美さん(おおさか南ブロック委員長)。

Table Vol.457(2022年2月)より
一部修正・加筆

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