Table(タブル)はコープ自然派の情報メディアです。

食と農と環境

第7回コープ自然派生産者&消費者討論会①「わたしたちのみどり戦略をつくろう!~各産地で何ができるか~」

2022年1月20日(木)、全国の生産者と関西・四国の会員生協組合員・役職員など200名以上の参加者を得て、第7回コープ自然派生産者&消費者討論会をオンライン開催。「わたしたちのみどり戦略をつくろう!~各産地で何ができるか~」をテーマに、基調講演、各地の取り組み報告、パネルディスカッションが行われました。

※イメージ

BLOF理論の有機稲作

 第7回生産者&消費者討論会は、コープ自然派兵庫・久保山理事が司会を担当。コープ自然派事業連合・辰巳副理事長の挨拶の後、鈴木宣弘さんの基調講演、続いて小祝政明さん(一般社団法人日本有機農業普及協会理事長)が「BLOF理論によるネオニコフリーの栽培技術」について話しました。BLOF理論は、アミノ酸・ミネラル・土壌の団粒化促進という3つのカテゴリーに基づいて科学的・論理的に行う有機栽培技術。米栽培では、カメムシとウンカ対策にネオニコチノイド系農薬が広く使われています。しかし、BLOF理論に基づく有機栽培の稲は茎が固く、害虫が針を刺せないため稲が枯れません。一方、慣行栽培の稲は茎が柔らかいため、農薬をかけても害虫の被害で田んぼが全滅するケースがあります。BLOF栽培は害虫を攻撃することで作物を守るのではなく、作物の力を促すことで害虫・雑草から守るというもの。稲を頑丈にすることが1つの防除方法ですが、それにはエネルギー源として大量の炭水化物が必要で、炭水化物は水とCO2を栄養に葉緑素が光合成することでつくられます。農薬を使う前に作物がなぜ害虫から攻撃されるのかというメカニズムを理解し、弱点を補完することを伝えたいと小祝さんは話します。

 続いて、コープ自然派遺伝子組み換え食品ストップネットからGMOフリーゾーン登録の案内、そして、コープ自然派各生協から「学校給食」「有機農業推進協議会」「田んぼの生きもの調査」など多彩な活動が報告されました。

全国に広がる有機農業

 パネルディスカッション「わたしたちのみどり戦略実現に向けて」は、パネラーに西田聖さん(JA東とくしま坂野支所参与)、鳥越靖基さん(NPO法人ORGANICSMILE副理事長)、田中誠さん(アイチョイス・コープ自然派生産研究会会長)、今城正春さん(農業生産法人有限会社営農企画取締役専務)、アドバイザーとして小祝さんと南埜幸信さん(ジャパン・オーガニック・コンソーシアム代表理事)を迎え、辰巳副理事長の司会で進められました。

パネルディスカッションの様子。森をつくることで水の確保とセルロース(樹木や落ち葉など)の有効活用が可能になり、有機農業をすすめ、地球の環境を守ることにつながります。

 JA東とくしま・西田さんは自然派Styleツルをよぶお米の生産者。新型コロナウイルスなどの影響で2021年産の米価が暴落し、この正月明けから農家の経営が成り立たなくなり離農を迫られている状況について話します。西田さんたちは2010年頃から特別栽培で米づくりを始めました。その後、BLOF理論を使った稲作技術をマスターし、無農薬米を栽培する仲間づくりに取り組んできましたが、農家の高齢化で栽培面積は減少しています。さらに、ここにきて慣行栽培の米価が暴落したため、付加価値ある米づくりとしてネオニコフリーを宣言しました。そして、段階的に無農薬の田んぼの拡大を目ざします。

 YASUKIFARM・鳥越さんは、東日本大震災をきっかけにバンドメンバーとともに熊本県山都町に移住した異色の経歴の持ち主です。山都町有機農業サポートセンターでBLOF理論を学び、耕作放棄地を再開墾して、約4haの畑を有機JAS認証で栽培しています。NPO法人ORGANICSMILE(2021年10月設立)は有機農業を論理的・科学的に学べる有機の学校として今年4月に開校、「有機農業者と指導者を育て、みんながスマイルできる社会をつくりたいです」と鳥越さんは話します。

 田中さんは希少なBLOFインストラクターの1人。今年から活動開始したアイチョイス・コープ自然派生産研究会は、アイチョイス生産研究会として27年間活動してきました。BLOF理論、硝酸態窒素の測定、鮮度保持の研究、組合員との交流会など活動は多岐にわたります。「長年、熊本で有機農業活動を続けて有機農業面積が0.5%まで広がりました。みどりの食料システム戦略の25%は困難な目標ですが、生産・流通・消費者の理解を深め、輪を広げる活動を進めます」と田中さんは話しました。

 北海道で大規模農業(有機認証農地100ha、慣行栽培農地100ha)を経営する今城さんは異業種から農業に参入し、1991年に法人を設立。現在、有機小麦を年間1000t栽培するプロジェクトをコープ自然派とともに計画中です。有機資材は高価なため、慣行栽培から有機への転換は経営が容易ではありません。有機肥料や堆肥を自ら製造して経費をおさえ、原料となる有機廃棄物を近隣町村で集めることも必要。また、1000tの有機小麦をつくるには200haの農地が必要なため、大型コンバインの導入など作業の効率化も不可欠です。

 このような生産者の各地での有機栽培拠点づくりが、農水省の「みどりの食料システム戦略」達成に向けたモデルケースになることが期待されます。

Table Vol.460(2022年3月)より
一部修正・加筆

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

アーカイブ

関連記事

PAGE TOP