2020年9月15日(火)、コープ自然派兵庫はパーム油についてオンライン学習会を開催。
「ウータン・森と生活を考える会」・石崎雄一郎さんにパーム油を生産するために熱帯雨林が破壊されている現状について聴きました。
環境を破壊するパーム油
スナック菓子やインスタントラーメン、マーガリンなど加工食品に使われる植物油脂のほとんどはパーム油です。アブラヤシの実からつくられるパーム油は1年を通して収穫、生産性が高く用途が広いため世界中で使用されています。
アブラヤシは大規模単一農園であるプランテーションで栽培します。企業は採算性を求めて皆伐(熱帯林をすべて切り取ってしまう)を行い、プランテーションを開発。皆伐された土地には、生きものが生存できなくなり、オランウータンをはじめ、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫、寄生植物、食虫植物などその土地に棲むあらゆる貴重な動植物の命が失われます。また、アブラヤシ栽培には膨大な量の農薬が使用されているため、農薬が川に流れ、川を生活用水として使う住民たちの健康を脅かしています。そして、開発時につくられた水路の排水作業によって農地が干ばつや洪水の被害に見舞われるようになりました。
現在、世界のアブラヤシプランテーション面積は2000万ha以上(日本の面積の半分以上)、ボルネオやスマトラは「熱帯泥炭地」と呼ばれる枯れた樹木が十分に分解されず炭素になって堆積している沼のような湿地があり、森林伐採により地中の膨大な炭素が温室効果ガスとして排出。さらに、森林がなくなると泥炭が乾燥して燃えやすくなり、大規模な森林火災につながります。
パーム油はバイオマス発電の燃料にも使われようとしています。固定価格買取制度(FIT)は再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取ることを国が約束し、CO2排出量削減を目的に再生可能エネルギーの普及を支援する制度です。その買取費用は賦課金として電気料金に上乗せ(一般的な家庭で年9288円の負担)されますが、パーム油発電は石炭火力発電の8〜20倍のCO2が排出されると国連環境計画が指摘しています。
環境保全と生活の向上
現地では子どもの教育やバイク購入などのために現金収入を必要とし、安定収入が見込まれるアブラヤシ労働に多くの若者たちが従事しています。「ウータン」は現地のNGOとともに、在来種による森林再生とプランテーション開発に頼らない住民の生活向上の両立を目ざしています。在来種にこだわった植林活動では、村人が植えた苗をNGOや企業が買い取り、現金収入を支援する仕組みをつくりました。また、有機農業や森でできる農業「森林農法」を実践、自然や現地の生活体験を通して開発問題を伝え、現地の人たちはガイドによる現金収入を得るボルネオ・エコツアーなども行っています。そして、日本人との交流が活動に誇りをもたらしているということです。
私たちにできること
植物油脂にはパーム油以外に大豆油やなたね油なども使われていますが、日本では表示義務がないため、消費者は選択できません。食用以外にも種からとれるパーム核油が石けんや洗剤、化粧品などに利用され、洗剤の石けん素地にパーム油が使われていても判別は困難で、現在、日本1人当たりのパーム油年間使用量は5リットル以上だということです。
パックスナチュロンシリーズの太陽油脂では、RSPO認証を取得したパーム油を商品に使用しています。RSPO認証はパーム油生産時の環境、労働、企業の透明性やコンプライアンスなどの原則と基準を設けて、基準を満たした農園から生産されたパーム油およびそれを使用した製品に対して与える認証です。欧米で認証油の使用が広がり、日本でも生協やイオン、日清などの大手食品会社が加盟するなど取り扱いや製品化が進んでいます。しかし、現場ではRSPO認証が持続可能とは程遠い状況だと批判があるということです。
ウータンが参加する「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」(約40のNGO・NPO・消費者団体が参加)は、環境・経済・社会を持続可能なものに変えるために私たちが生活の中でできることを提案。油を使った製品の使用を減らす努力を訴え、グリーンでエシカルな商品の情報を提供するウェブサイト「ぐりちょ」を運営するなどライフスタイルを見つめ直すきっかけづくりに貢献しています。「パーム油の問題はごく一部、われわれの消費行動は海外の環境問題、貧困問題、人権問題などとつながっています」と石崎さんは話しました。
Table Vol.428(2020年11月)より
一部修正・加筆