2024年3月12日、コープ自然派京都(ビジョン食べること&商品委員会)は、菌興椎茸協同組合の岸本隆吉さんと平家久枝さんを招いて学習会を開催。山の恵み「きのこ」の豆知識やおいしく食べるコツを聞き、きのこづくしのごちそうを堪能しました。
鳥取から全国へ、きのこの魅力を発信
菌興椎茸協同組合は、戦後日本の復興をめざして「全国椎茸普及会(現・日本きのこセンター)」とともに鳥取で設立した組合です。世界有数のきのこ研究機関である日本きのこセンターと密接に連携して種菌の育成や製造販売を行い、日本の中山間地の活性化や伝統的食文化を守るために、全国にきのこの魅力を届けています。
菌興椎茸のきのこ栽培
菌興椎茸のきのこには、ナラやクヌギなどの広葉樹で育てる原木栽培と、きのこを育てる「培地」に杉などの針葉樹を積極的に使っている菌床栽培があります。
菌興椎茸の原木生しいたけは広島・岐阜・鳥取・愛知の4県で生産しています。エリンギの栽培では、中国地方の杉のオガくずを2年ものあいだ雨にあて、杉の油を落としてから培地に使っています。エリンギは他のきのこに比べて培地の香りを吸収しやすいきのこ。菌興椎茸のエリンギは山と杉の香りがします。まいたけは椎茸の栽培が終わったほだ木をオガくずにして培地にしていましたが、ほだ木の供給が減少。現在は、兵庫県佐用町の広葉樹をメインにしたオガくずと、米ぬかを培地にして育てています。やなぎまつたけは杉50%とブナ、小麦のふすまを合わせます。
培地はきのこを生育する土台です。一般にはスイートコーンの芯を砕いたものが多いのですが、残留農薬や遺伝子組み換えの懸念があるとのこと。また、培地によっては放射能検査にひっかかることもあるそう。きのこは放射性物質を吸収しやすいですが、「13年間、毎週コープ自然派で放射能検査をしているので安心して食べてください」と岸本さんは話します。
原木栽培は循環型農林業
原木栽培につかう広葉樹の落ち葉や枝は、土壌の菌類が分解して養分となり、川や海に豊かな栄養を運び、漁業を支えることにつながります。そして、肥沃な土壌をもたらすことで森は若返り、土砂の流出を防ぎ、二酸化炭素を吸収して温暖化防止などに役立ち、山全体を保全します。岸本さんは「原木栽培は生態系の営みを守り、環境保全につながる循環型農林業なのです」と語ります。
知っておきたい干し椎茸の調理のキホン
干し椎茸を戻す前にお日様に3時間ほど当てると、ビタミンDが27倍になるそう!生椎茸でも同じことがいえます。岸本さんは「干し椎茸を水につけて冷蔵庫で半日から1日寝かせると、旨み成分グアニル酸を十分に味わうことができます。昆布をひと切れ入れると、グルタミン酸との相乗効果でぐっと深みのある味に仕上がります。でも、急ぐ時には熱いお湯に15分つけるとOKなんですよ」と、よりおいしく食べるためのコツを伝授。
菌興椎茸の特許製法「低温乾燥」の干し椎茸は、90℃のお湯に15分浸けるだけで戻せます。そして、通常の干し椎茸は匂いやえぐみがあり敬遠されがちですが、苦みや渋みの成分も大きく減っています。また、平家さんは「干し椎茸も生椎茸も冷凍保存できます。解凍せずそのまま調理するのがポイント」と話します。
自然の法則にかなった「菌食」
自然界の生き物は植物、動物、菌類の3つがあり、互いに作用しながら生態系を形づくっています。肉食、菜食にプラスして菌類も食べることで、自然の法則にかなった健全な食生活が実現するというのが「菌食」という栄養論です。少量で栄養満点なきのこはどんな料理とも相性が良く、試食した干し椎茸のポタージュやパエリアはとても美味でした。きのこは食物繊維、ビタミンB、ビタミンDが豊富です。平家さんは最後に「上手にきのこを取り入れて、元気で過ごしましょう!」と呼びかけました。
Table Vol.503(2024年7月)