2021年11月16日(火)、コープ自然派連合商品委員会は麻布大学教授・大木茂さんによるアニマルウェルフェア学習会を開催、ヨーロッパの取り組みについて学び、新たな基準づくりにつなげます。

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持続可能な食糧システム

 欧州委員会(EUの行政執行機関)は、EUの持続可能な食糧システムへの包括的なアプローチを示した「ファームtoフォーク(農場から食卓まで)」戦略を掲げ、2030年までに「化学農薬の使用及びリスクの50%削減」「1人当たり食品廃棄物を50%削減」「肥料の使用を少なくとも20%削減」「家畜及び養殖に使用される抗菌剤販売を50%削減」「有機農業に利用される農地を少なくとも25%到達」の数値目標を設定。EUのフードシステムをグローバル・スタンダードにすることを目ざしています。また、「エンド・ザ・ケージ・エイジ」というケージ飼いを禁止する運動が広がり、140万人の署名を獲得。欧州委員会は畜産動物(ウサギ、採卵鶏、繁殖豚、ウズラ、鴨、ガチョウ)のケージ飼いを禁止するための法律案を2023年末までに提出します。

オランダアニマルウェルフェア認証マーク

 EUではアニマルウェルフェアに基づく「WQ(WelfareQuality)評価法」による認証を検討していますが、調査に時間と費用がかかるため十分に活用されていないようです。そこで、2007年からオランダでアニマルウェルフェア認証マーク「ベター・レーベン(BeterLeven)の商品販売が始まり、売上高が0.68億ユーロ(2008年)から25億ユーロ以上(2020年)に上昇。飼育基準は星の数で3段階にランク付けされていますが、1つ星の基準が厳しいため、「チキン・オブ・トゥモロー(以下COT)」という基準を生産・加工・流通業者が共同開発し、あるスーパーマーケットでは販売するすべての冷蔵鶏肉をCOT基準にすることを決定しました(2020年)。飼育費用が従来のブロイラーに比べてベター・レーベンは42%増加しますが、COTは19〜25%増と低く抑えられています。飼育面積密度で比べると、日本47㎏/㎡、EUブロイラー42㎏/㎡(条件付き)、COT30〜38㎏/㎡、ベター・レーベン1つ星25㎏/㎡。2016年の販売割合はブロイラー30%強、COT40%強、ベター・レーベン20%弱。COTの消費者価格はブロイラーの1.2倍。また、治療用の抗生物質の使用が従来のブロイラーに比べてCOTは6分の1に抑えられるということです。大手食料品店「AH」が従来のブロイラーをCOTに、大手食料品店「JUMBO」でも独自基準ブランドに入れ換えたことで、オランダ国内の鶏肉市場は従来のブロイラーからCOT基準以上に置き換わり、従来のブロイラーは輸出向けにつくられるようになりました。

各国の認証制度の動向

 英国の「レッド・トラクター」ラベルは2000年に設立した英国最大の農場および食品の保証制度で、アニマルウェルフェアや食品安全、トレーサビリティ、環境保護を網羅しています。約5万人の英国農家が認定を受け、年間6万回以上の検査を実施。BSE(牛海綿状脳症)問題をきっかけに農場基準として発足し、畜産・穀物・野菜果物など物流システム全体をカバーしています。鶏卵には「ライオン・コード」が使用され、飼養方法タイプ、生産国、農場IDなどが数字・アルファベットで全ての卵に印字。これらの識別コードから卵の履歴を追うことができます。

 仏国には「ラベル・ルージュ」という公的認証・品質保証制度があり、アニマルウェルフェアを尊重し環境を保護する製造方法と放し飼いの伝統的な生産方法で飼育された鶏肉につけられます。ブロイラーの2倍以上の消費者価格で販売され、全体の10%程度を占めます。2018年に仏国で創設された動物福祉ラベリングスキーム「AEBEA」は動物保護NGO・小売業者・養鶏業者による認証制度で、アニマルウェルフェアに関する生産方法が5段階基準でピクトグラム表示。ブロイラー年間総生産量の約10%に相当し、カルフールが参加しています。

 米国でも鶏卵のケージフリーが増えていますが、USDA(米国農務省)は明確な定義をしていません。ケージフリーのマークがあっても第三者認証があるかどうかはまちまちでかつ認証団体ごとの基準も異なっています。流通大手「ウォルマート」は商品に第三者認証マークがなく(HPにはケージフリーの第三者監査を実施していると記載)、高級食料品店「ホールフーズマーケット」は第三者監査の実施に関しては不明であるなど、消費者にとってマークを信用する以外の手立ては限られているのが実態と思われます。

 日本国内では、2021年に山梨県で全国初の地方自治体独自のアニマルウェルフェア認証制度基準が策定されました。認証基準は畜種ごとに具体的な項目を設定し3段階で評価する実績認証と、講習会・実習の受講および取り組み宣言をすれば得られる取組認証に分けられます。

 「中小家畜は穀物を飼料にし、温暖化への影響もあり、その存在意義が問われています。生産者にとって畜産業への価値観やこだわりは自己実現でもあり、危機感をもってアニマルウェルフェアの対応を進めていかなければなりません」と大木さんは話しました。

※ アニマルウェルフェアは家畜の感受性を理解し、その生態や習性による行動を妨げない飼育をめざす考え方です。

講師の麻布大学獣医学部教授・大木茂さん、有機畜産物のフードシステム、アニマルウェルフェア食品の社会経済的研究が専門。

Table Vol.457(2022年2月)より
一部修正・加筆