2019年11月21日(木)〜23日(土)、コープ自然派アンバサダーは九州の生産者を訪問。今号では、非遺伝子組み換えなたねを原材料に圧搾油を製造する「平田産業」(福岡県朝倉市)のこだわりの製造方法と取り組みについて紹介します。
非遺伝子組み換えのなたねに限定
平田産業の創業は1902年。なたねの特産地であった福岡県三井郡で油を搾る搾油業を興し、現在、非遺伝子組み換えなたね油専門メーカーとして日本一の生産量と販売実績を誇ります。
1960年代は日本各地で黄色い菜の花畑を見ることができ、平田産業も地域で栽培されるなたねを中心に搾っていました。しかし、1970年代になたねの輸入自由化などの影響で国内のなたねの栽培は激減。原料なたねを国産からカナダ産に切り替えざるを得ない状況になりました。その後、1996年にカナダで遺伝子組み換え(GM)なたねの栽培がはじまり、「人体への影響がはっきりわかっていないGMなたねを取り扱うことは絶対に避けたい」との考えから、平田産業はカナダ産なたねの取り扱いを中止。2006年から南オーストラリア州・カンガルー島のNON-GMOのなたねに変更しました。カンガルー島は固有の野生動物が生息し、面積の3分の1が自然保護区の島で、世界最古のミツバチ保護区があることでも知られています。
また、平田産業では、菜種油メーカーとして国産菜種油を復興して日本の自給率に貢献したいという考えから2010年から北海道産なたねの搾油を始め、キザキノナタネ、ナナシキブという品種の「圧搾一番搾り国産なたねサラダ油」を商品化しています。
こだわりの圧搾と精製
原料のなたねはオーストラリアから1度も開封されずに専用船で運ばれ、巨大サイロに保管されます。精選機でなたねから茎や葉などを取り除き、加熱、破砕、圧ぺん(ローラーでつぶす)して油を搾りやすくし、圧搾機で圧力をかけて搾油。酢のタンパク質を固める性質を利用して、搾った油に含まれるタンパク質などの不純物を取り除きます。続いて、湯を入れて比重の軽い油、不純物、湯の順番で層に分離。この工程を湯洗いといい、湯は朝倉市の天然地下水を利用。湯洗いをくり返した後、白土(天然の土)に色素を吸着させて脱色、さらに真空状態で高温加熱して脱臭します。
植物油の抽出方法には、「圧搾法」「抽出法」「圧抽法」があり、「圧搾法」はなたねやトウモロコシ、紅花など油分の多い原料に用いられる方法、「抽出法」は大豆や米ぬかなど油分の少ない原料をノルマルヘキサンという溶剤を加えて油分を溶かし出す方法、「圧抽法」は圧搾と抽出を併用した方法です。圧搾法で抽出できる原油量は原料の20%〜30%、大手製油会社では溶剤を使用し、油かすからさらに油を抽出する圧抽法が多く、精製工程では時間と手間を省くため一般的にリン酸・シュウ酸・苛性ソーダなどの薬剤が使用されています。
鑑定士セレクトのオイル
2019年11月に自然派Styleに仲間入りした「自然派Styleオーガニックエキストラバージンオリーブオイル」は、イタリアの有機栽培オリーブを搾って(薬剤などは不使用)ろ過したフレッシュジュースのようなオイルです。オリーブの実の出来は毎年違うため、オリーブオイル鑑定士・荻堂紀里さんその年イタリアで採れた有機オリーブの品種・作柄とオリーブオイルの品質を見極め、その年「最高」のブレンドを作り出します。イタリアから直接輸入したオリーブオイルは平田産業でろ過し、分析・検査・最終確認をして瓶詰めしています。
また、平田産業の本社工場近くの敷地にはオリーブの木が植えられ、工場から出たなたねの油かすが肥料に使われています。九州はオリーブ栽培に適した気候で休耕田が多いため、九州でオリーブ栽培を拡げ新しい産業に育てていこうと、「九州にオリーブ100万本プロジェクト」が進行中です。
貴重なNON-GMOなたね油を利用しやすい価格で提供する平田産業。国内生産者を守り育てる取り組みにも期待し、買い支えていこうと参加者たちは思いを新たにしました。
自然派Styleのウェブサイトもぜひご覧ください。
Table Vol.411(2020年3月)より一部修正・加筆