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食と農と環境

コウノトリの野生復帰を支える地域づくり~とくしまコウノトリ基金の取り組み〜

今秋の「コープ自然派だいすきキャンペーン2021」は、「有機の田んぼを拡げよう!」を基本テーマにビオトープ米の利用を拡げ、さらに省農薬、無農薬へのステップアップをすすめています。その一環として、2021年11月8日(月)、NPO法人とくしまコウノトリ基金理事・柴折史昭さんに取り組みの過程や現状について聴きました。

手前の羽根の先が黒いのがコウノトリ、右後方がナベヅル。

生きものたちとの共存へ

 コウノトリは弥生時代から稲作と共存し、江戸時代には全国各地に生息していました。しかし、明治時代になり銃猟による乱獲で個体数が減り続けました。第二次大戦後は農薬の大量使用などによってさらに減り続けました。そして、1971年には野生コウノトリは絶滅してしまいました。そこで、兵庫県豊岡市では1965年から人工飼育に取り組み、2005年に豊岡で7羽のコウノトリを野外に放鳥、2020年には野生コウノトリは200羽を超えました。

 2015年、豊岡市で生まれたコウノトリが徳島県鳴門市で初めて繁殖し、2017年に巣立ちました、2020年には7県23巣から56羽が巣立ち、この中には2018年に鳴門で生まれた雌のコウノトリが栃木県小山市で生み育てた2羽も含まれています。今のところコウノトリの生息地は西日本の日本海側に集中し、徳島県は全国で最南県。2019年には鳴門市の豊かな自然環境を守り、生きものたちと人が共存できる地域づくりを目ざしてNPO法人とくしまコウノトリ基金が設立されました。

水生動物のえさ場づくり

 鳴門市ではコウノトリ生息エリアはれんこん栽培地帯とほぼ一致しています。れんこん畑は10センチから15センチ程度の深さで年中水を溜め、慣行栽培でも水稲や露地野菜の2割から3割程度の農薬使用量、特別栽培のコウノトリれんこんはその半分以下なので、コウノトリのえさ場に適しています。しかし、夏場は草対策が課題です。そこで、「とくしまコウノトリ基金」では耕作放棄地を利用してビオトープ化に取り組み、コウノトリだけでなくさまざまな鳥類のえさ場になっています。

 2020年11月から2021年3月にかけてコウノトリ生息エリア内で8羽のナベヅルが越冬。「とくしまコウノトリ基金」と日本野鳥の会徳島支部との合同調査によると、ナベヅルは越冬に際してコウノトリを頼り、コウノトリもナベヅルには寛容で互いに引きつけ合う関係だということがわかりました。動物食のコウノトリと冬場は主に植物食のナベヅルは餌が競合しないことも共存要因になっています。

協働事業として取り組む

 鳴門市ではコウノトリとの共生を目ざしてさまざまな取り組みがすすめられています。昨年からビオトープ米を使った日本酒を地元の酒造場が販売、売上金の一部はコウノトリ保全活動に寄付されています。2021年5月には、足輪装着プロジェクトチームが孵化後41日のヒナに足輪を装着し、「とくしまコウノトリ基金」は調査や情報収集・分析、機材調達、技術研修などを担当しました。

 また、コウノトリや「とくしまコウノトリ基金」について知ってもらおうと徳島河川国道事務所と共同で徳島県庁にパネル展示。徳島マルシェではコウノトリの剥製を展示し、コウノトリ巣づくりワークショップを行いました。さらに、環境省の支援を得てコウノトリ生息地を自転車で巡ったり、大谷川をカヌーで下るモニターツアーやれんこん畑を巡るポタリングツアーなども実施、小学校での環境学習にも取り組んでいます。

 コープ自然派との協働・連携の提案として、柴折さんはビオトープ整備や人工巣塔設置、ナベヅル誘致のための実験、環境学習プログラム、エコツアー、活動情報の共有、コウノトリ関連商品販売などを提案。コープ自然派は「とくしまコウノトリ基金」と連携し飛来地づくりをさらにすすめます。

Table Vol.454(2021年12月)より
一部修正・加筆

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