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食と農と環境

もっと!まちを森にしよう、山に木を植えよう

コープ自然派の住まい事業の原点と意義を学ぼうと、自然の住まい協議会では7月16〜17日に梼原訪問ツアーを開催しました。

自然の住まい協議会は、「まちに森をつくろう」をスローガンに、コープ自然派、NPO里山の風景をつくる会、NPO 国産材住宅推進協会が連携して活動しています。

源流のまち、梼原(ゆすはら)へ

 「自然の住まい協議会」は、森・川・海の循環を大切にしたいという想いから、設計士や工務店と提携するNPOとともに始まりました。家の材料はどこから?誰が建てたの?分からない住宅がほとんどですが、森とまちがつながることで、つくり手と住まい手の顔の見える関係を築くことができます。

 ツアーの行き先は、高知県四万十川の源流域、面積の91%を森林が占める山間の小さな町、梼原町。標高1455mの雄大な四国カルストに抱かれた自然豊かな町の中心部には、日本を代表する建築家、隈研吾のモダンな建築物がいくつもあります。町の総合庁舎もその一つ。圧倒的な外観もさることながら、一歩中に入ると広がる大きな空間、4本の柱で1本となる「組柱」や格子状に組まれた「重ね梁」は圧巻です。他にも、梼原町では一般住宅だけでなく公共施設や非住宅の木造化も推奨しており、橋を含む木造建築があふれています。

梼原橋

森林と水

 梼原町では、森林整備を進めるうえで、水源のかん養や自然環境に配慮することを大切に考えています。森の落ち葉や豊かな微生物などがふかふかに積み重なった土の層がふり注ぐ雨を浄化し、ゆっくりと下流へと水を運び、人々のいのち、暮らしを支えます。地球には水が多いといわれていますが、そのうち森で浄化されて暮らしに使える水はほんのわずか。森が荒れ、浄化の力を失くしたらどうなるのでしょうか。

森づくりは人づくり

 日本の森林の約4割は人工林です。人工林とは、木材生産のために植栽から収穫までの間、下草刈り、間伐、枝打ちなどの手入れや管理が必要な「木の畑」。1950年に制定された「造林臨時措置法」を契機に全国で一気に植林が進められましたが、1950年代後半から燃料の主役が石炭そして石油に代わったことにより、燃料として使われてきた広葉樹ではなく、構造材に向くスギやヒノキがほとんどを占めるようになりました。梼原町の森林も例にもれず、樹齢50年を超えた木の活用が急がれています。一方で林業従事者は減っています。町では「梼原町森林再生プロジェクトReMORI」を起こし、国の地域おこし協力隊制度を活用して若い林業家を育てています。また、moretrees※など環境先進企業とパートナーズ協定を締結して、森にかかわる人口を増やしています。若手林業研究会CoMORIも立ち上がり、有限責任事業組合KIRecubでは、育苗やアロマ開発、木育などを展開中です。

 ツアーでは、KIRecubの下村さんと長谷川さんの案内で伐採実習地や植栽現場を見学しました。急斜面や炎天下の作業もあり、異業種からの転職で肉体的なしんどさはあるけれど山の作業が楽しく、梼原での暮らしを選択したそうです。
※moretrees:坂本龍一が創立した「都市と森をつなぐ」森林保護団体

まちに森をつくる

 日本で最初にFSC認証※を受けた梼原町森林組合では、町内の森をデータ管理し、原木から製材乾燥した部材を提供することができます。施主の希望で伐採祈願や製材所の見学も可能です。戸建てはもちろん、床材や建具や家具に国産材を取り入れると森を身近に感じられます。
※FSC認証:持続可能的に森林管理が行われた木材とその製品を識別する認証

森の人たちと共想して

 国の施策で翻弄されてきたと言える「森林」の課題は今も山積していますが、梼原町ではまちの人も一緒に森の恩恵を受け、そして考えようという取り組みを続けています。

 コープ自然派が最初に出会った『森の人』田岡さん(故人)がよく使っていた言葉は「共想」。「過去に木を植えたものは未来の世代を想い、未来に木を使うものは過去の世代に感謝をして、植林をして未来にその想いをつないでいく」と。参加したメンバーは「私たちもこれから出会う森の人たちと共感し、コープ自然派ならではの住まい事業をすすめていきたい」と語りました。

Table Vol.506(2024年10月)

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