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くらしと社会

講演会「世界とぼくらの繋がりのお話」

2012年4月、四国のコープ自然派4生協が合併してコープ自然派しこくを設立。10周年記念事業の一環として、2021年9月4日(土)、コープ自然派しこく・えひめセンターは、NPO法人 NGO GOODEARTH代表・藤原ひろのぶさんの講演会をオンライン開催しました。

バングラデシュでの食事支援・就労支援・学校建設やギニア共和国での製氷事業などの活動や情報発信を行うNPO法人 NGO GOODEARTH代表・藤原ひろのぶさん。

黙って従う「思考停止」

 新型コロナウイルス感染症は、子どもたちの暮らしに深刻な影響を与えました。世界の飢餓人口8億2160万人(2018年)は新型コロナの影響で1億5000万人増加し、栄養失調による5歳未満の死亡者数は1000万人を超えたと言われています。一方、コロナ禍の3ヵ月間で米国の富裕層の資産は62兆円増加、米国ファイザー社のワクチン売上高は2兆8000億円が見込まれるということです。

 世の中が混乱するほどメディアの売上高は好調になります。コロナ禍でテレビ視聴率は前年を大きく上回り、第二次大戦中に日本の新聞主要3社は発行部数を倍以上に伸ばしました。当時、メディアが戦争をあおったと言われていますが、購読したのは国民です。

 自分で考えることなく多数派の意見になびくことを「思考停止」と言います。日本の教育は規律を守る人材を育てることに適していますが、理不尽な校則や矛盾することに黙って従う思考停止に陥りやすくなるということです。

正義と悪の「二項対立」

 正義と悪の「二項対立」のストーリーはわかりやすく、気分が良いものです。しかし、すべてのものには良い面と悪い面があり、どちらかだけが正しいということはありません。昔話の「桃太郎」は鬼の立場に立つと桃太郎は悪者です。鬼退治は異形のもの、よくわからないものを恐れ排除しようとする無知の現れと言えるでしょう。イラク戦争(2003年~2011年)は大量破壊兵器保持を理由に始まり、日本でもイラクを危険な国だと報道し続けました。しかし、イラクの大量破壊兵器は発見されず、60万人以上の犠牲者を出し、開戦前よりテロ発生数は増加。問題の本質に向き合うことなく、単純な敵をつくり、敵を倒せば解決するという浅はかな考え方が二項対立の怖さです。一生懸命な人ほど陥りやすく、自分が正しく相手は間違えていると攻撃し、分断が生まれます。

利益の優先「拝金主義」

 お金はすべての人に平等に渡りません。金利でお金は急速に増えますが、自然環境はお金と同じ速度で育ちません。日本人と同様の生活を世界中の人々が維持するには、地球が2.7個必要と言われています。生命は繋がり、地球上で人間だけが生命の輪からはずれて生きることはできません。温室効果ガスは日本などの豊かな国から排出され、その影響を最も受けているのは貧しい国の人々です。東京電力は放射能汚染水を2023年から海洋放出することを決定しました。その被害を受ける可能性があるのは子どもたちです。しかし、これらの政策を決めた政治家を選んだのは大人たちで、目先の利益を優先した投票行動の結果、大きな課題に目を向けられない「拝金主義」に陥っています。「思考停止」「二項対立」「拝金主義」に蝕まれた大人が子どもの未来を壊しているのです。

分け合い、自ら行動する

 レアメタル、パーム油、コーヒー豆、カカオ、綿、大豆、小麦、ボーキサイトのために世界中で1億6800万人の子どもたちが労働しています。私たちの豊かな生活は、安価な労働賃金に支えられているのです。バングラデシュの縫製工場で12歳~25歳の女性が時給17円で働き、世界で約60%の衣服が廃棄されています。現地の環境を破壊し住民から搾取を繰り返す一方で、私たちは一生懸命働いて得たお金で安価なものを大量に買い、捨てることを繰り返しているのです。

 藤原さんが食事の支援活動を行っているバングラデシュのスラムには、自分の年齢を知らない子どもがいます。食料や寒さを凌ぐ毛布すらない孤児院の子どもたちは、最初の1皿を藤原さんに差し出し、「お腹が空いていませんか?」と気づかいます。「現地の人たちと交流して、分け合うことの大切さに気付かされました。私たちは持ちきれないほどモノがあるのに、まだ奪い合いをしています。日本の食品ロスは1年間に約600万トン、廃棄に約1兆円が使われています。飢えている子どもがいるのに、豊かな国の人々は食べすぎて病気になる、お互いに不幸な状況です。解決方法は『分け合う』ことと『自ら差し出す勇気』、自らが行動する人が増えれば問題は即解決するでしょう」と藤原さんは話します。

 Facebook「病気を治そう」で藤原さんは「無関心という病気を治しましょう」と発信。「問題の大きさに絶望する人がいますが、問題を紐解くと、自分たちの目の前にある小さな課題とつながっていることがわかります。例えば、コンビニでレジ袋を断ることは、断るという意思表示が大切なのです。一人ひとりの意思表示が企業や政治家を動かし、世の中がゆっくり変わります。世の中の問題を知りながら『誰かがやってくれるだろう』と逃げるのではなく、向き合う姿勢を子どもたちに見せることが大人の責任です。行動しなければ世の中は変わりません。今日の私の話が行動のきっかけになればと思います」と藤原さんは結びました。

司会は愛媛県で活躍するフリーアナウンサー・大澤さつきさん、出産をきっかけにコープ自然派に加入。

Table Vol.452(2021年11月)より
一部修正・加筆

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