2018年5月30日(水)、コープ自然派奈良では予防医学講師・牧香奈子さんによる学習会「若さを保つ!アンチエイジング食材と予防医学」を開催。牧さんは東洋医学と西洋医学の両方の視点で「0歳からの予防医学」をテーマに食育活動を行っています。
経験から予防医学の道へ
日本人の死亡原因はガン、心疾患、脳血管疾患と続き、死因の60%は生活習慣病です。看護師歴23年の牧さんは、20代で抗がん剤治療・骨髄移植など最先端のガン治療に従事し、多数の重篤な患者を診てきました。なかでも、10代で亡くなる子どもたちや、病気の原因は自分にあるのではないかと苦しむ母親の姿に牧さんは心を傷めました。これらの経験を経て、30代で人間ドック施設のクリニックに転職、予防医学の道へと進み始めます。「何万人もの血液検査などを見てきた結果、生活習慣病の原因は幼少期からの食習慣にもあると気づきました。出産をきっかけに食について真剣に考えるようになり、コープ自然派に加入。離乳食から始める予防食育講座を開始しました」と牧さんは話します。
東洋医学的な視点から
牧さんは東洋医学的な体質診断から「腎」「脾」「肺」の3タイプに分けてその特徴と改善法を見ていきます。病院には病気を繰り返し症状が改善しない患者も多く、体質改善の必要性を感じた牧さんは、薬膳や自然療法、陰陽、マクロビオティックなどについても勉強し、治療医学と予防医学の両面からアプローチします。「腎」は生命力の源とされ、慢性疾患をもつ人や高齢者は「腎」が弱いタイプ。「腎」を補う食材は山芋・黒ごま・クコの実などで、生で食べられるクコの実は手軽でおすすめとのこと。「脾」は消化吸収など消化器系の機能を司り、機能低下から体内に余分な水分や汚れが溜まって胃腸の不調が起きると言われています。おすすめ食材はシソ、ショウガ、モヤシ、バナナなど。「肺」は身体機能の防衛力を高める役割を担い、東洋医学的に肺と大腸はつながっていると考えられ、ネギ、シソ、ショウガ、梨などが「肺」機能を整えます。
また、生命活動に必要な「気」「血」「水」がバランス良く巡ることで健康が保たれます。「気」は生命のエネルギーで、不足すると疲れやすく気分が落ち込むと考えられ、「気」を補う食材は山芋。「血」は血液のこと、不足すると貧血になりやすく、滞ると肩こりや月経痛、アレルギー症状などを引き起こします。造血作用のある食材としてヘム鉄が豊富な赤身の肉や魚、非ヘム鉄はホウレンソウや小松菜、プルーンなど植物系の食材です。「水」は血液以外の体液を指し、不足すると便秘や乾燥肌、滞るとむくみや冷えの原因に。「腎」との関係が深く、小豆や緑豆モヤシなどの豆類、はと麦茶、コーン茶などがおすすめです。
免疫力と代謝を高める米
そして、予防医学10か条として、「1.免疫力を高める主食はパンよりお米」「2.アンチエイジング効果には雑穀米や豆類」「3.腸内環境を整える発酵食品で免疫アップ」「4.脳が若返る油、オメガ3」「5.ガン予防には抗酸化力、フィトケミカルが多い野菜」「6.魚料理で迷ったら?鮭を利用」「7.食物繊維で腸内美人」「8.ねばねば食材で年中元気」「9.痩せ体質をつくるには炭水化物1:タンパク質2:野菜3のバランス」「10.お酒はおつまみと一緒がベター」を挙げ、おすすめ食材とその選び方や食べ方などを教えていただきました。昔から米を主食にしてきた日本人は、米のデンプンを分解する消化酵素を持つため、米は日本人の免疫力を高め、代謝を上げるとのこと。一方、小麦を分解する酵素が少なく、摂りすぎると小腸の粘膜がただれやすくなります。また、雑穀は鉄分、カルシウム、ミネラル、食物繊維などが豊富で加熱に強く栄養素が壊れにくいのが特徴で、サプリメントのマルチビタミンに含まれる栄養素と同等の場合もあります。「老化には個人差があり環境因子が大きく関係しますが、講座で伝えている病気を予防するメソッドが美容を含めたアンチエイジングにつながると確信しています」と牧さん。食事から体質改善することの大切さを学びました。
Table Vol.374(2018年9月)