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くらしと社会

望月衣塑子さん講演会「破壊される民主主義」

2021年2月27日(土)、コープ自然派京都は東京新聞社会部記者・望月衣塑子さん講演会を開催。望月さんは、東京オリンピックや報道の自由などについて、記者の目を通して熱く語りました。

東京新聞社会部記者・望月衣塑子さん。「新聞記者」(映画「新聞記者」の原案)「武器輸出と日本企業」、共著に「同調圧力」など著書多数。

菅政権と進むネポチズム

 東北新社に勤める菅首相の長男などによる総務省幹部高額接待問題で、安倍・菅政権下で蔓延するネポチズム(縁故主義)が浮き彫りになりました。高額接待を受けていた総務省幹部は、菅首相が進めていた「NHK改革」「ふるさと納税」を後押しする旧郵政省系の官僚たちでした。接待問題で注目を集めた山田広報官は菅政権発足とともに女性初の内閣府広報官として就任。7回行われた首相会見の質問では東京新聞と日本テレビを一度も指名せず、首相の曖昧な答えに対する記者の追及を遮り続けました。接待問題発覚後、「女性の広報官として期待している、そのまま専念してほしい」と菅首相は続投を指示。菅首相は総務省時代から山田広報官に目をかけてきたということです。

 2月3日、東京五輪・パラリンピック組織委員会・森喜朗元会長は、JOC(日本オリンピック委員会)臨時評議委員会での女性蔑視発言がIOC(国際オリンピック委員会)や世界中のメディア・政治家・著名人などから批判を受けて辞意を表明。JOC評議員は男性56人、女性1人で構成され、森元会長だけでなく組織の男尊女卑意識が強いことも問題でした。これらの出来事をきっかけに、10〜20歳代の若者たちが、森元会長の処遇の検討や再発防止を求めるオンライン署名15万7427筆を集め、組織委員会に提出。また、自民党の幹部会の女性議員のオブザーバー参加(発言権なし)にもつながり、女性の声が届くようさらなる意識改革を望月さんは望みます。

声をあげ、政治を変える

 世界報道の自由度ランキングで、日本は2010年の11位(当時、鳩山政権)から67位に急降下しました。ジョージ・オーウェルの名言「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報にすぎない」を引用し、「メディアの役割とは、権力の監視、チェック。権力側が隠そうとすることを明るみにすることが、新聞記者としての私のテーマです」と望月さん。2018年、官房長官会見で望月さんが質問した辺野古埋め立ての赤土(環境に影響)使用について、事実誤認であるとの文書の貼り出しや抗議文による申し入れを官邸が行いました。質問を妨害して記者に精神的な圧力をかけたと、朝日新聞、共同通信、13地方紙などのメディアが大きく報道して批判。さらに、市民や弁護士、記者のOB・OG、9条の会など全国から官邸に批判の声が殺到。そして、官邸前で多数の記者がデモを行い、取材の自由や国民の知る権利を訴えました。それをきっかけに、記者会見場の雰囲気が変化し、当時の上村報道室長の質問妨害がなくなりました。会社の垣根を超えて連帯し、抗議の声やアクションを起こすことで世論が変化し、政治を自分たちの手に取り戻せることを学んだということです。

 「検察庁法改正に抗議したTwitterデモ、大学英語入試の民間試験導入への抗議活動と報道の拡大など、微力でも無力ではないと実感しました。今年は衆議院選挙の年、2大政党制に向けて野党の選挙協力が進んでいます。女性、LGBTの方々が輝ける多様性のある社会は男性にとっても生きやすいものになるはず」と望月さんは語り、尊敬するガンジーの言葉「あなたのすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分自身が変えられないようにするためである」で締めくくりました。

「コープ自然派は情報公開を大切にしている生協です。ほしい情報が得にくい中、私たちとともに活動し、望月さんの活動を応援するなど、世の中を良くするためにともにがんばりましょう」とコープ自然派京都・坂本理事長。

Table Vol.441(2021年6月)より
一部修正・加筆

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