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くらしと社会

せやろがい!ではおさまらない

トレードマークの赤ふんどし&赤Tシャツ姿、「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さんは沖縄を舞台に時事問題をYouTubeで発信、約34万人のフォロアーを得ています。コープ自然派兵庫第20回総代会・第2部では、「せやろがいおじさん」が政治や社会の多岐にわたる問題を自身の言葉でテンポよく話しました。

「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さん。初著書「せやろがい!ではおさまらない」(ワニブックス)はアマゾン総合ランキング2位に。会場でも販売されました。

言葉のキャッチボールを

 「何かおかしいなと思ったら声を上げてほしい。それはとても大切なことだから」とせやろがいおじさん。しかし、勇気を出して声を上げると、必ず何らかの批判を受けます。「ぼく自身も動画を投稿するごとにたくさんの批判を頂戴しています。最近では東京オリンピック開催を批判してYouTubeチャンネルが炎上しました」。

 せやろがいおじさんは、YouTubeのコメントを眺めているとそれらが3つに分かれることがわかりました。1つ目は、ただ悪口を言いたいだけで口ぎたなくののしるコメント。2つ目は、まっとうな意見や指摘、情報の間違いを正してくれるコメント。2つ目に関してはきちんと受け止め、向き合いますが、1つ目は完全にスルーするということです。

 難しいのは、「言いたいことや批判したいことがあるのはわかるけれど、言葉がきたない」という3つ目のコメント。「なるほどと思えても言葉がきたないと受け止める気持ちになりません。例えば極上ステーキにウ〇コがついてたら、よし、ウ〇コだけ取り除いて食べようとはならないですよね。それと同じです」。相手が聴きやすい批判をどのように表現するか、「相手にぶつけて勝つドッジボールではなく、会話のキャッチボールをしたい」とせやろがいおじさんは言います。

過去の過ちは認めるべき

 せやろがいおじさんは奈良県出身、沖縄国際大学に進学し、在学中からお笑いコンビ「リップサービス」として活動していました。沖縄は戦後アメリカ軍に占領され、今なお米軍基地が残されています。2004年には母校・沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落する事故が起き、その後も保育園に米軍ヘリのパーツが落ちるという事故が起きました。普天間基地は1969年にアメリカと「5年ないし、7年以内の返還」が合意されていたのに返還されないまま代替施設を辺野古につくろうということになりました。沖縄には日本中のアメリカ軍事用施設の7割が詰め込まれ、戦争中に被害を背負わせた側がさらに被害を負わせようとしています。2017年の教科書検定では、沖縄の渡嘉敷村に米軍が上陸し、多くの人たちが日本軍の命令により集団自決したという記述は削除されました。

 本土決戦を遅らせるために沖縄南部は激戦地となり、遺骨がたくさん残されて今も収集作業が行われています。ところが、辺野古基地建設に際して軟弱地盤を埋め立てるための土砂の7割以上を激戦地となった本島南部から調達しようとしているのです。

 「ガマフヤー(遺骨収集ボランティア)具志堅隆松さんに同行させてもらって遺骨収集に参加しましたが、めちゃくちゃたくさん遺骨があります。黄色だったり、黒ずんでいたりで、政府は骨と土砂を選別すると言っていますが、遺骨収集の経験がない人には選別は難しく、具志堅さんによると1回掘り返して戻したらその人がどんな状態で亡くなったかなどがわからなくなり、他の人の遺骨とも混じってしまうということでした」とせやろがいおじさん。そして、「沖縄戦戦没者の遺骨が混じる土砂を埋め立てに使うことは、戦争で一度命を落とした人たちを二度殺すようなことをやろうとしています。戦争への反省が失われてきているのではないでしょうか」と強い口調で話します。

憲法は権力者を縛るもの

 「憲法は権力者を縛るもの。権力者をもっと縛るものに変えるのなら憲法改正は良いと思います。でも、縛られる側が変えようというのは危険。国民をもっと縛ることができるものに変えられるかもしれません」とせやろがいおじさん。自民党の改憲草案の1つとして、「緊急事態条項」設置が挙げられていますが、コロナ禍で慣れ過ぎた「緊急事態宣言」とはまったく異なるものです。「緊急事態条項」は戦争や内乱、大災害など非常事態が発生した場合、内閣の判断だけで命令でき、国会や裁判所でも歯止めできないものです。

 ロシア軍のウクライナ侵攻後、敵基地攻撃能力が必要だという論議が盛んになっています。「敵基地攻撃能力には際限がなく、敵基地攻撃能力を持つこと自体が危険です。憲法9条がなくなれば徴兵制も出てくるかもしれません。でも、僕は赤紙が来ても行かない。せいぜい行けたら行くね(沖縄では100%行かない)と答えるかな」とせやろがいおじさんは苦笑します。

おなじみの赤ふんどし&赤Tシャツ姿、難しい問題もテンポよく楽しく一気に話します。

気候変動にどう向かう?

 気候変動が危機的状況だと言われています。しかし、地球環境のために何をしたらいいのでしょうか。「一度、沖縄の海に潜ってみてください。それが難しかったら、近くの美しい景色を見てください」とせやろがいおじさん。そして、自身が撮影した動画を紹介しながら「沖縄の海にはサンゴ礁が一面に広がり、その周りに小さくておしゃれな魚たちが泳いでいます。温暖化の影響でサンゴ礁がどんどん減り、美しい景色の半分がなくなったと思うと胸が痛くなります。人間がつくった世界ではなく、他の生物たちが織り成す美しい世界。こんな世界を人間が壊すのはめちゃくちゃはずかしい」と話します。

 そこで、自分たちにできることは何か。各自がエコバッグを持ち歩くというレベルはすでに超えています。「営利を出す企業側に我々の声を届けるのが大事。東京オリンピックはSDGsを謳っていましたが、実際はオランウータンが棲む森林を伐採し、先住民たちが大切にしてきた森林を壊しました。これらのことを報道するメディアには称賛の声を届けよう。また、環境破壊を行う企業には批判の声を上げよう」とせやろがいおじさんは訴えます。

 IUU漁業についても声を届ける必要があります。IUU漁業とは違法・無報告・無規制漁業のことで、国家や操業海域の規制に従わない漁業を指す言葉です。日本でも輸入される魚の30%はIUU漁業によるものだということで、MSC認証されたものを販売してほしいと店舗に要望を伝えることなども必要です。

民主主義を育む第一歩に

 せやろがいおじさんは教育についても話します。ただ生徒たちの自由な行動を規制するための「ブラック校則」があります。例えば下着の色を規制し、教師がチェックするというような理不尽な校則です。教師たちに聞くと、制服の白いブラウスは透けやすいので下着は白と決めているとのこと。「わざわざ透けるようなブラウスにしなければいいのです。被害を受ける側に規制をかけるのはおかしい」とせやろがいおじさん。しかし、「民主主義な手続きで校則を変えられるようにすれば生徒たちの意識は変わるかもしれません。自分の一票で変えられるという体験をすると主権者意識が育まれます。そして、校則が社会参加の一歩となるかもしれません」と話します。

 今、教師は本当に忙しく、心を病んだり辞める教師も多いということですが、「割をくうのは子どもたち。教師の働く環境もしっかりチェックしてほしいですね」とせやろがいおじさんは話しました。

司会・進行は石井常任理事が務めました。

 Vol.471(2022年9月)より
一部修正

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