2020年11月16日(月)、コープ自然派事業連合・商品委員会はアニマルウェルフェア講演会(オンライン)を開催、環境ジャーナリスト・枝廣淳子さんを講師に世界のアニマルウェルフェアの状況と日本の現状、私たちにできることについて聴きました。

枝廣淳子さん(大学院大学至善館教授・幸せ経済社 会研究所所長)は、環境・エネルギー問題に関する 講演・執筆、企業のCSRコンサルティングや異業種 勉強会などの活動を通じて、地球環境の現状や国内 外の動きを発信しています。

注目ワード「ローカル」

 米国オレゴン州ポートランドの街並みが映し出され、枝廣さんが実施したエシカル消費・海外動向調査のバーチャルツアーがスタートします。ポートランドは米国の中でも先進的なライフスタイルで知られる街です。通りにはトラムや自転車積載可能バスが走り、自転車専用道の整備など、環境に配慮した交通機関が広く利用されています。

 米国では「サスティナブル」「オーガニック」「ローカル」をキーワードに消費行動が広がり、なかでも生産者とのつながりを大切にした「ローカル」が注目されています。スーパーマーケットのオーガニック商品は農産物から生鮮食品、冷凍食品、調味料類など種類と数が豊富で、高級店はもちろん一般・庶民クラスの店舗でも広く売り場を設置。地元で人気のハンバーガーショップ、パン屋、レストランなどでは、メニューや店内に生産者の紹介、オレゴン州産とわかる目印、低炭素社会を目ざしていること、オーガニック牛乳、ケージフリーの鶏卵、オールナチュラル肉(ホルモン剤・抗生物質不使用、牧草による飼育)など原材料の調達方法のガイドラインや店の方針などを明記。これらの表示は、生産者と消費者を結びつけ農家の誇りを守ります。

欧州で広がる動物福祉

 欧州で肉を食べない人たちが増えています。主な理由は「自分や家族の健康を考えて」「地球温暖化や環境問題に加担したくない」「アニマルウェルフェア」です。

 アニマルウェルフェアは、「動物たちは生まれてから死ぬまで、その動物本来の行動をとることができ、well–being(良好な存在)の状態でなければならない」とされ、輸送から屠殺に至るまで苦しむことのないように配慮されなければならないと国際的に認められている定義です。

 採卵鶏は①バタリーケージ、②エンリッチドケージ、③平飼い、④放牧などの飼育方法があります。①バタリーケージとは、金網でできたカゴを重ねてその中で鶏を飼育する方法です。体より小さいスペース、足元が不安定な状態で身体的苦痛を与えられ続け、死ぬまで太陽光を浴びることなく卵を産む機械として一生を終えます。②エンリッチドケージは、1羽あたりの飼養面積が広めに設定され(750㎠以上)、産卵場所、敷き材、とまり木など鶏の生活環境を豊かにするものを設置することが決められている飼い方。③平飼いは屋内の地面に放し飼い。④放牧は屋内・屋外の両方にアクセス可能な最も自然に近い飼育方法です。日本の養鶏場の92%がバタリーケージを使用していますが、EUをはじめ多くの国で禁止または廃止され、さらにケージ自体が廃止される方向です。

 肉用若鶏(ブロイラー)は60年前の4倍の体重に品種改良されているため自分の体重が支えられず足の炎症や皮膚炎が多発します。日本の飼育密度はEU平均の1.4〜1.78倍、短期間で育てるために24時間点灯で眠ることなく成長させ、「若鶏」(飼育期間50日間)として販売。EUでは1日あたり6時間以上暗闇をもうけることが義務付けられています。

 企業のアニマルウェルフェアの取り組みを調査し、通信簿を発表している団体「BBFAW」が世界の主要食品企業150社を調査し6つのレベルに分類(2019年)。日本企業では「イオン」「セブン&アイ・ホールディングス」「マルハニチロ」「明治」「日本ハム」が対象となり、5社とも最低ランクの評価でした。

消費者の力で変えよう!

 家畜の飼料に大量の抗生物質が使われているため、食べることで耐性菌が感染し、抗生物質が効かなくなるという問題が起きています。不健康な環境下での飼育による病気、密集による感染から、大量の抗生物質が必要になりました。日本の抗生物質使用量1747トン(2011年)のうち動物用医薬品・飼料添加物に約1000トンが病気予防のために使用されています。「2015年までに毎年1000万人が耐性菌によって死ぬだろう」(エコノミストのジム・オニール)との予想が世界に衝撃を与えました。

 アニマルウェルフェアの取り組みが遅れている日本の現状を変えるために、「知ること、学ぶことを続けてください。そして、店舗に対応商品の取り扱いを消費者として求めること。これらの声が集まれば、企業は時代の流れを感じとり、必ず変化につながります。声を出すこと、それが私たち消費者の最大のパワーです」と枝廣さんは話しました。

Table Vol.433(2021年2月)より
一部修正