国産大豆に収穫前除草剤の使用が認められ、特にここ数年は農薬メーカーがグリホサートをプレハーベスト(収穫直前散布)農薬として盛んに宣伝しています。2021年2月15日(月)ジャーナリスト・天笠啓祐さんを講師にオンライン講演会を開催、約200名の生産者・組合員が参加しました。
世界で広がる散布と被害
グリホサートは世界中で最も多く使用されている除草剤ラウンドアップの主成分です。発がん性など人体や環境への影響から世界中で規制が進み、米国ではがん患者による損害賠償訴訟が相次いでいます。1970年、モンサント社(現在はバイエル社が吸収)はグリホサートを開発、ラウンドアップという商品名で販売し、世界中で約1000万トン散布されたと言われています。除草剤に強い性質(除草剤耐性)をもつ遺伝子組み換え(以下、GM)作物の栽培開始とともにラウンドアップ使用量が増加。2013年、世界全体に占めるGM作物の割合が約半分になりましたが、除草剤が効かないスーパー雑草が増え始め、GM作物の栽培量は徐々に減少しています。
2000年、ラウンドアップの特許権が切れ、日本ではさまざまな商品名(レインボー薬品「ネコソギ」、大成農材「サンフーロン」など)で販売されています。ラウンドアップはグリホサート以外に含まれる化学物質が問題だと仏国カーン大学・セラリーニ教授が指摘。グリホサート以外の薬品は企業秘密のため不明で、含まれていると考えられる添加剤や石油残渣、重金属(ヒ素など)などがグリホサートと組み合わされることで毒性が強くなるということです。
グリホサートの危険性
国際がん研究機関・IARC(世界保健機関WHOの専門機関)がグリホサートの発がん性についてグループ「2A」(発がん性がかなり疑われる)に分類。2018年から米国でグリホサートの発がん性を問う裁判が多数起こされ(いずれも被害者が勝訴)、現在、約4万8000件の訴訟が起きています(10万件超えとの報道も)。
発がん性以外のグリホサートの危害性について、自閉症などの発達障害、強い神経毒性、生殖や出産への影響(妊娠期間短縮、低体重児出産、へその緒から胎児へ移行)、環境ホルモン作用(非アルコール性脂肪性肝疾患)、世代を超えた影響(受精能力の障害、孫の代での成長遅滞)、早期死亡率の増大、腎臓・肝臓への影響(慢性腎炎)、パーキンソン病など、世界中の研究機関から多数の論文が発表されています。また、ミツバチの腸内細菌・脳・神経系に影響、抗生物質耐性菌の増加、土壌細菌の細胞内の代謝異常、ミミズの活動低下、水質汚濁など昆虫・細菌・環境中への影響も指摘されています。
市民グループ「デトックス・プロジェクト・ジャパン(DPJ)」が国会議員を含む28名の協力を得て毛髪中の農薬検査を実施したところ、19名からグリホサートとその代謝物質を検出。また、小麦製品の残留検査で輸入小麦(北米中心)を使用したパン製品のほとんどから検出されましたが、日本は小麦の収穫前除草剤を禁止しているため、国産小麦を使用した製品からは検出されていません(一部、製粉会社での混入の痕跡あり)。
近年、EU諸国でグリホサート使用禁止の動きが広がり、2024年に共通農業政策で全面禁止を予定。一方、日本はグリホサートの残留基準値を2017年3月に緩和しました。「日本は消費者や農家など市民の健康を守るより、貿易を優先しているのです」と天笠さんは話します。
コープ自然派では、大豆加工品(豆腐、納豆)のグリホサート残留検査を独自に行い、原料大豆と加工品の両方から検出した商品は代替品に差し替え、原料大豆を汚染されていないものに変更するよう生産者に働きかけています。
Table Vol.441(2021年6月)より
一部修正・加筆