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くらしと社会

政治や行政を「自分ごと」にするために

2020年9月12日(土)、コープ自然派奈良(「みらい委員会」「civic~より良い市民になるために」共催)は、「構想日本」・田中俊さんを講師に、市民と行政とのより良い関係について学びました。

講師の「構想日本」・田中俊さん。「構想日本」は元大蔵省職員・加藤秀樹代表が設立。田中さんは10年前から「構想日本」に参加しています。学習会はオンラインで行いました。

社会を良くするために

 「構想日本」は社会を良くしたいという強い想いのもと、政策を立案・提言・実践するために設立された非営利系シンクタンクです。日本の政治・行政には改善しなければならないことは多々ありますが、政治・行政を「他人ごと」として政治家や官僚、公務員に任せ続けてきた市民の問題もあります。投票率が低いのもそのひとつです。そして、このような状況が続くと不正や税金の無駄遣いが増え、政治家や公務員の質も低下します。

 「構想日本」は政治・行政を「ふつうの人たち」が「自分ごと」とするためにさまざまな試みを実践してきました。そして、政策提言に留まらず、政策が行政の動きに実際に組み込まれるよう「動くシンクタンク」を目ざして活動しています。

「ふつうの人たち」が参画

 では、「構想日本」はどのような活動を行っているのでしょうか。田中さんは「構想日本」の3つの柱として、①開かれた場で市民が参加②抽象論ではなく具体論③外部かつ現場の視点を大切に、を挙げます。

 行政への市民参加としては公募制が一般的ですが、この場合、意識の高い人たちの声を聴くことはできますが、利害関係者など参加者が特定の人に固定化する傾向があります。また、推薦や一本釣り方式では、専門的な人や地域の有力者などを選ぶことができる反面、団体のトップを毎回選ぶことによる形骸化や参加者の固定化などの課題があります。

 そこで、「構想日本」は10年程前から「無作為抽出法」を採用。無作為に案内状を送付して参加を募ります。この方法だと行政に少しは関心あるけれど、特にかかわりがなかったような広範な人たちの参加を望むことができます。

政治を「自分ごと」に

 「構想日本」では、「事業仕分け」「住民協議会」「施設仕分け」「計画づくり」などを行っています。そのうち、「事業仕分け」は、外部の立場から「構想日本」メンバーや自治体職員、経営者、弁護士などが評価者として行政の人たちと議論し、それを無作為に選ばれた市民が市民判定人として判定するというスタイルです。その例として、千葉県銚子市の「プレミアム付き商品券」について市民は「必要ない」という選択をしました。

 「住民協議会」は、子育て支援、介護、ゴミ問題、防災など幅広いテーマについて市民が議論します。例えば、子育て支援については子育て中の人や子育て経験のない人、子育てを終えた人などさまざまな立場の人たちが話し合います。行政への要望も出てきますが、自分や地域で何ができるかをセットで考えます。原発立地市・松江市では住民団体主催で、2018年に「原発」を「自分ごと」にする取り組みが行われ、現在、来年開催予定の第2期「自然エネルギーってどげかね?」に向けて準備中です。これらの活動記録はオンラインでも配信されています。

 2018年に群馬県太田市で行われた「住民協議会」では、ゴミ処理施設の更新を控え、1人当たりのゴミ減量化について話し合いました。毎月1回・計5回開催、最初は現状について学び、次に現状を把握して処理コストなどについて確認。その後、課題や解決方法を議論しました。無作為に選ばれた人たちなので特にゴミについて詳しくない人たちも真剣に考え、話し合い、さらに、議論したことを生活の中で実践したことを報告し合いました。結果的にゴミの量が半減できたことに参加者が驚きました。そして、42人の参加者の中で20人が継続的・自発的にゴミ減量活動を続けているということです。

住民と行政の良い関係

 「行政の人たちは頑張っていますが、一方でひとりよがりになっていることが多いのも事実です。もう少し市民と一緒に取り組めばよいのにと思うことがありますね」と田中さん。先に挙げた太田市では、コロナ禍で家庭ゴミが増えたことについて市長に解決策を求められた担当者は、レジ袋を使わないようマイバック配布を考えて市民と意見交換しました。ところが「マイバックで代替できるゴミではない」と市民から批判され、家庭ゴミを減らすための啓発活動に力を入れることになりました。「これまでだと担当者の提案がそのまま実施されたでしょうが、市民と行政の関係性が変わることでより良い公益につながることが多いですね」と田中さんは話します。

 最後に、田中さんは国の各省庁が行う年間約5000の事業の「目的」「内容」「成果」「予算の支払い先」などを誰でも検索できるサイト「JUDGIT!(ジャジット!)」を紹介。「JUDGIT!」は民主党政権時に「構想日本」が公開した事業シートをデータベース化し、検索エンジンで省庁横断的に検索できるようにしたもので、政権交代後も国の事業(事業シート)が毎年公表されています。

参考:JUDGIT!(ジャジット!)

Table Vol.427(2020年11月)より
一部修正・加筆

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