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くらしと社会

いじめをしたりされたりしない子を育てるために

2019年11月17日(日)、コープ自然派奈良(地域医療を考える奈良の会主催)では、深江誠子さん(元平安女学院大学女性学研究センター長)を講師に、講演会「いじめをされたりしない子に育てるために」を行いました。

経済学、社会学、女性学を専門とする深江誠子さん。自身の子育て中にいじめ問題を解決するためにPTA会長に立候補した体験も持っています。

自尊感情を身に付ける

 文部科学省の問題行動調査によると、2018年度に全国小中高校などが把握したいじめは約54万3933件で年々増加。2017年度中に全国210ヵ所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は13万3778件で過去最多となっています。

 「いじめが生まれる要因として、教師も親も勉強できる子を育てることだけが目的になっていて、人権教育が行われず、自尊感情を身に付けていないからではないでしょうか」と深江さん。自身の子育てでは娘さんをほめて育て、小学4年生までは寝る前に「あなたは世の中にたった1人しかいない大切な存在」だと伝えて抱きしめていたということです。

 「親は子どもを指導しなければならないと思っていますが、そうではなく、子どもの方が無限の可能性を持っていて、それを邪魔せずのびのび育てることが大切」だと深江さんはチャレンジ精神を大切にしてきました。大学教師だった深江さんは学生たちからも娘さんからもたくさん学び、とても得したと。そして、教育とは生きるための知恵を学ぶこと、教育の究極のテーマは1人で生きられるようにすることだと深江さんは話します。

「いじめる子」を育てない

 親としてできることとしては、子どもが学校などでいじめられていることに気づくことが大切です。①急に泣き出すなど感情の不安定さが目立つ②人を避けたり、学校に行きたがらなくなる③成績の低下、食欲不振、不眠、自室にこもる④わざとはしゃいでみせたり、頑張り過ぎたりする④不自然な身辺整理をする、などは「いじめ」のサインだととらえるべきです。いじめられていることを親に相談できるかどうかは日常的な親子関係が問われ、頭ごなしに叱るのではなく、一緒に考えようという関係性をつくることが必要だと深江さんは話します。

 教育者・金森敏郎さんは「いじめの問題は大人にある」として、「人権軽視、弱い者いじめ、自己中心的な行動、犯罪、リストラ、環境破壊、戦争などの問題に社会の形成者としてどう立ち向かうか。大人の生き方が、問われている」と語っています。深江さんは婚外子として娘さんを育て、婚外子差別に対して女性たちとともに闘ってきました。また、学生たちと日雇い労働者の町をしばしば訪ね、その時には娘さんも連れて行きました。「日本では多くの政治家や官僚は高学歴で出世街道を走ってきた人たちなので、弱い立場の人たちに目を向けず、強い者に忖度する人が多いです。弱者にやさしい社会にするためにも、人に勝つことを『いい子』の基準にしないで謙虚な目線で子どもを育てたいですね」と深江さん。そして、「いじめられない子」を育てるのではなく、「いじめる子」を育てないことが大切だと話します。

「いじめ」を解決するには

 深江さんは「いじめ」を解決するために大切なこととして以下を挙げました。①子どもの自尊感情を育む②競争を強いない③今が楽しいと感じられる毎日を保障する④自然と触れ合う機会を増やす⑤何でも話せる親子関係をつくる⑥子どもを叱るのは子どもに悪意があったときだけ⑥チャレンジ精神を大切にする⑦違ったことをする人を勇気あるねとほめる⑧差別を受けている人との触れ合いの場を増やす⑨ほめて育てる⑩不登校は病気ではなく、健康的な批判精神をもっているからだと無理に学校に行かせない⑪家族が平等で何でも言い合える関係⑫子どもに親孝行を求めない⑬「死ぬ」ことの意味を具体的に提示する⑭親離れ・子離れをする⑭小さいときから家事・育児を男女問わずさせる⑮遊ぶ時間をたっぷりとる⑯外国でも暮らせるよう準備しておく⑯環境破壊や戦争になることに対して精いっぱい抵抗する姿勢を見せる⑰性教育や環境問題を生活の中で教える。

 講演会では食の問題についても言及。また、質疑応答では自尊感情を育むことの大切さについても話し合いました。

Table Vol.407(2020年1月)

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