ウンドアップによる長期的有害性を証明した論文を発表したジル=エリック・セラリーニ教授(左)はモンサント社からさまざまな嫌がらせを受け、論文撤回へと追い込まれました。ジェローム・ドゥーズレさん(右)は、セラリーニ教授の動物実験を支えた民間研究グループ「遺伝子工学独立研究情報委員会」の役員で、
現在、セラリーニ教授とともに執筆・講演活動を行っています。

2019年10月31日(木)、東京ウィメンズプラザにて、講演会「科学者とシェフが語る遺伝子組み換え食品と農薬の危険性」が開催され、全国から300名が参加しました。主催は日本消費者連盟と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン(コープ自然派は賛同団体)。講演では除草剤ラウンドアップの実験結果が参加者に衝撃を与えました。

モンサント社が隠す成分

 講演会はカーン大学・セラリーニ教授(分子生物学者)と、オーガニックレストランのオーナーシェフ・ドゥーズレさんを招いて行われました。セラリーニ教授は、2012年、除草剤ラウンドアップとラウンドアップ耐性遺伝子組み換えトウモロコシの長期動物実験でその危険性を明らかにし、映画「世界が食べられなくなる日」で紹介しています。

 人体には石油化学系の化学物質による毒性負荷がかかっています。石油化合物・石油由来の残渣や廃棄物である排気ガス、農薬、可塑剤、重金属、添加物、保存剤などは、内分泌かく乱物質、神経かく乱物質と呼ばれ、生態系に大きく影響、これらは生物濃縮、複合作用、世代を超えた影響があり、従来の医学知識を超えるものです。細胞の表面に石油物質の残渣が付着し、細胞間の伝達物質が機能しなくなることが原因で免疫疾患、ガン、内分泌疾患、神経疾患などを引き起こすとされています。

 セラリーニ教授が「ラウンドアップ レンジャー・プロ」の成分を調べたところ、41%がグリホサート、残り59%が不明なことが判明。これまでラウンドアップのほとんどの成分はグリホサートと考えられていたため、セラリーニ教授は不明な成分の解明に取り組みました。まず、グリホサートのみ与えた植物とラウンドアップを与えた植物を比較する実験を行い、グリホサートのみ与えた植物はほとんど枯れることなく、ラウンドアップを与えた植物は完全に枯れました。そして、ラウンドアップの不明な成分から「POEA」という石油の残渣物が組み合わされたものが検出され、POEA単独で植物が枯れることがわかりました。モンサント社は不明な成分について不活性成分と回答するのみで、中身について一切公表しません。

 続いて、培養した人の胚細胞とラットに与える影響を調べたところ、ラウンドアップはグリホサート単体より毒性が最大1万倍も強くなりました。さらに、9種類のラウンドアップの化学成分を分析し、グリホサート以外の毒性を高めている化合物が石油の廃棄物成分と重金属(ヒ素・ニッケル)であることが判明。モンサント社は秘密にしていますが、成分の中に含まれていたヒ素は1974年以降、農薬としての使用が禁止されています。また、0.17ppbでヒ素中毒誘引の可能性があり、ラウンドアップには500ppbで含まれているということです。

規制がないワインの農薬

 ワイン用のブドウ畑には大量の農薬が使用されています。セラリーニ教授がワインの成分を計測したところ、1本当たり1〜6種類の農薬が平均292ppb検出され、水道水質基準の1100倍になることが判明。ワインに使用される農薬には規制がなく、農薬に含まれる成分として、「イプロディオン:肝毒性、生殖毒性、発がん可能性あり」「フェンヘキサミド:内分泌かく乱物質」「イプロバリカルブ:肝毒性、生殖毒性、発がん可能性あり」「ピリメタニル:甲状腺中毒症、発がん可能性あり」「ボスカリド:甲状腺中毒症、神経系毒性、肝毒性、生殖毒性および発生毒性(化学物質など環境要因が次世代の発生過程に対して有毒な反応を引き起こす性質)」などがあり、250種類以上の農薬が特定されました。「動物には毒性のあるものを感知する能力が備わっていますが、農薬は味覚を麻痺させ、ワインのアロマと農薬から発生するアロマとの違いをわからなくさせます」とセラリーニ教授は警告します。

ハーブの解毒作用を活用

 2人は農薬など有害な化学物質の解毒方法として、「味覚を養う」「良質な食材を使う」「ハーブを使う」ことを推奨。人の幹細胞とラットを使った検証で、ハーブは解毒作用が強いことがわかり、特にタンポポが効果的とのこと(ただし体を冷やす作用があるので、温かいタンポポティーなどがよい)。新鮮なハーブを1日に3種類程度、ごぼうやタマネギ、ニンニクなどを多種類摂取することをドゥーズレさんは勧めます。

 「現在の作物は工業的かつ単一的、さらに、食品の味を変える農薬はシェフにとっても高リスクです。昔からフランスでは毎日5種類の野菜とフルーツを食べるよう言われていますが、現在ではこのような食生活をすると何百種類もの農薬を摂取することになります」とドゥーズレさん。「私たちの体は食べものの質で決まるため、自分自身で化学物質を回避しなければなりません。味覚を育て、毒物の避け方を身につける方法を子どもたちに教えることも大切です。食べものは五感をフル活動させ、注意深く選びましょう」とセラリーニ教授は締めくくりました。

※ ラウンドアップ・・・巨大アグロバイオ企業のモンサント社が開発した除草剤の商品名で、主成分はグリホサートとされています。アメリカでラウンドアップをめぐる訴訟(発がん性など)が4万2700件に達し(2019年10月現在)、多額の賠償金支払命令がバイエル社(2018年モンサント社を買収)に下されています。

Table Vol.406(2019年12月)