2019年10月11日(金)、コープ自然派しこく・えひめセンターは役職員・エリアコーディネーターによる産地見学を実施、自家配合飼料で育てた熟成赤身肉が人気の岡崎牧場(西予市)を(株)ゆうぼく代表取締役・岡崎晋也さんに案内していただきました。
豊かな自然と快適な環境
近くに肱川が流れる高森山の山間にある岡崎牧場、1980年代に会長の岡崎哲さんが養鶏場を買い取り、現在の牛舎に改造しました。
岡崎牧場で飼育されている牛の種類はホルスタイン牛、交雑種、ジャージー種などヘルシーな赤身肉です。ホルスタイン種のオスを去勢した牛、ホルスタイン種のメスと黒毛和種のオスを交配した交雑種(F1)、ジャージー種のオスなど、レストランに併設する売店「ゆうぼくの里」では「はなが牛」ブランド(牧場のある歯長峠に由来)として販売されています。
山の斜面に建てられた牛舎には近隣の酪農家から入荷した生後1〜2週間の子牛、離乳期の子牛、飼育期を迎えた牛に分けて飼育されています。病気が持ち込まれないよう、牛舎に入る前に靴カバーを履き、石けん水(環境や食の安全に配慮)で靴底を消毒してから見学しました。口蹄疫は中国や台湾など海外の土から菌が持ち込まれることが多く、体や洋服に付着すると洗濯しても取り除けないほど強力なため、過去3ヵ月以内の渡航者の見学を禁止しています。
牛は集団になると個体間の優位性を誇示する習性(マウンティング)があるため、入荷したばかりの子牛は1頭ずつ隔離して牛舎の環境に慣れさせます。牛舎は1頭あたり8㎡(一般的に5.5㎡以上推奨)のスペースが与えられ、アニマルウェルフェアにも配慮し、のびのびとリラックスできる環境で飼育されていました。
自家配合飼料と地域循環
岡崎牧場では抗生物質・成長促進剤(モネンシン)不使用、地元産の飼料米を利用した飼料の自家配合に取り組んでいます。一般的に、エサはメーカーが配合した抗生物質・成長促進剤入りの飼料が使われ、成長促進剤は下痢の予防、消化促進による安定した増体目的で日本では多用されています(EUでは使用禁止)。飼料米は消化が悪いため、白米を粉砕することで20%まで配合を可能に。また、粗飼料に飼料米の稲わらを使用し、牛糞は敷地内の堆肥場で発酵させ地元の田んぼや畑で土壌改良に活用、地域循環にも貢献しています。「岡崎牧場の牛ふん100%の堆肥は良質で安心して使える」と米農家から好評で、発酵させる工程で殺菌されているため牛舎の床に撒くと牛の身体にも負荷が少ないということです。
岡崎牧場の霜降り度合いは2〜3等級で、牛肉が体質的に合わず苦手な人から「岡崎牧場の肉はおいしく食べられる」と喜ばれています。
データ分析と新しい畜産
ジャージー種はオレイン酸やベータカロチンの含有量が高く肉の味が濃いのが特長ですが、ホルスタイン種や交雑種に比べて太りにくいため、オスは産まれてすぐに殺処分されることが一般的です。「現在、ジャージー種にいかに価値をつけて販売できるか、試みている最中です。直営店を運営しているため、さまざまな取り組みが可能になります。美味しさからファンも増え、肥育頭数も徐々に増えています」と晋也さん。今年から豚の飼育も始め、7月に初出荷を終えました。非遺伝子組み換え飼料、抗生物質不使用で、飼育期間は通常6ヵ月のところ、7〜8ヵ月かけて育てています。
晋也さんは大学の電気電子工学科を卒業後、化学メーカーでシステムエンジニアとして5年間勤務し、畜産農家の後継者になったという異色の経歴の持ち主です。「知識ゼロからスタートし、父のやり方とその背景を探りながら6年が経ちました。初めの5年間は創業者の想いを理解しながら経営の仕事を覚えることだけで精一杯でしたが、最近、自分らしさを活かしたやり方に取り組めるようになりました。カメラを使い病気の牛の早期発見、個体管理を徹底して行い、牛の太り方から病気や栄養、エサのやり方などを分析しています。また、肥育から販売までデータを記録、牛へのストレスを減らして肉質が良く最も利益が上がる飼育方法の研究に励んでいます。牛が牛らしく幸せに暮らせる農業を目ざして、目標は放牧です」と晋也さんは瞳を輝かせます。
Table Vol.405(2019年12月)