遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンおよび日本消費者 連盟代表・天笠啓祐さん。あらゆる生命をもてあそぶゲノム編 集技術に憤りをこめて話します。

環境省と厚生労働省はゲノム編集を遺伝子組み換えに当たらないとして規制対象外と決定。食品表示が不要なため、私たちは知らないままゲノム編集食品を食べてしまうことになります。2019年5月23日(木)、コープ自然派事業連合はジャーナリスト・天笠啓祐さんを講師にゲノム編集食品について学習会を開催しました。

生命をもてあそぶ技術

 遺伝子組み換え(以下、GM)作物の商業栽培開始から23年、栽培国・開発作物(現在、大豆・トウモロコシ・ナタネ・綿が流通)は増えず、稲・小麦の開発・流通も進んでいません。そこで、目的とする遺伝子の働きを壊すゲノム編集技術が登場しました。壊したい遺伝子がある位置へ誘導する「ガイドRNA」と、DNAを切断して遺伝子を壊す「制限酵素」を組み合わせた手法で、「CRISPR – Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)」と呼ばれ、2012年に開発されました。

 寒さに強いトマトの開発を例にあげると、従来の品種改良では寒さに強いトマトと美味しいトマトを何度も交配させ、寒さに強く美味しいトマトをつくります。GM技術は美味しいトマトに異生物種のヒラメの遺伝子(寒さに強い性質をもつ)を導入して開発します。一方、ゲノム編集は美味しいトマトがもつ寒さに弱い遺伝子を壊して開発するのです。

 生命体はバランスや調和で成り立つもの、トマトにも寒さに強い遺伝子と弱い遺伝子の両方があり、バランスを保っています。「ゲノム編集は意図的に障がいや病気を引き起こすもの。壊してよい遺伝子などないのです」と天笠さんは話します。

人間への応用が始まる

 現在、除草剤耐性ナタネと高オレイン酸大豆が米国で流通しています。米国はゲノム編集の規制がないため、開発されるとすぐに販売され、何が流通しているかも不明で、日本に輸入されても私たちにはわかりません。現在、高食物繊維小麦、うどんこ病抵抗性小麦、高収量小麦、アルカロイド(ソラニン)を含まないジャガイモ、トランス脂肪酸を含まない大豆などが多数開発されています。

 家畜や魚など動物での開発も盛んに行われ、ミオスタチンという筋肉の成長を抑制する遺伝子を壊された豚は、成長が早くムキムキのマッチョ豚になります。一方、成長ホルモン受容体を壊された小さい豚はマイクロ豚と呼ばれ、中国でペット用に開発されました。日本でもマダイやトラフグなど成長の早い魚の開発が進んでいます。

 そして、人が自分をゲノム編集するDIYバイオが行われ、ミオスタチン遺伝子を壊してマッチョになった体をインターネット上で公開する人が登場。バイオテクノロジー会社「タカラバイオ社」からゲノム編集キットが販売され、自宅で簡単に実験することができます。また、今年の1月にはゲノム編集された双子が中国で誕生。エイズウイルスに感染しにくい性質に編集されている一方で、西ナイルウイルスとインフルエンザウイルスに感染しやすく、知能に影響が現れることが懸念されています。

食料を支配する巨大企業

 「CRISPR – Cas9」の関連特許は300件を超え(2014年)、ゲノム編集の特許権紛争が世界で起きています。巨大多国籍企業は利益を独占し、GM作物やゲノム編集技術の特許権を得ることで「種子の権利」を抑え、世界の食料を支配しようとしているのです。

 世界のアグリビジネス市場は企業の買収・合併が相次ぎ、「バイエル、モンサント連合」のシェア率は種子29%・農薬26%、「デュポン、ダウ・ケミカル連合」は種子24%・農薬26%、「中国化工集団公司、シンジェンタ連合」は種子8%・農薬20%(2013年)と巨大多国籍企業に世界の種子と農薬の約70%が支配されています。

 日本では、生物多様性への影響、食品の安全性評価、飼料の安全性評価についてそれぞれの法律のもと各省庁や委員会で規制されていますが、生命倫理に法的規制はありません。生物多様性への影響についてはカルタヘナ法で、食品の安全性評価は食品衛生法により、3つに分類(1.DNAの切断、2.遺伝子を切断して少量のDNAを導入する、3.遺伝子の切断と同時に遺伝子を導入する)。カルタヘナ法では「DNAを切断するだけでは遺伝素材の新たな組み合わせを有する生物ではない」として「1.DNAの切断」を規制の対象外としました。また、食品衛生法では1〜3のすべてを規制の対処外とし、食品としての安全審査の必要はなく、届け出も不要です。

 このような事態に対して、天笠さんは「すべてのゲノム編集食品の規制と表示を求める」署名活動への協力を求め、100万人を目標に多くの人たちに知らせようと訴えました。

キケンな技術が続々!!

 ゲノム編集には、「遺伝子ドライブ」「RNA干渉法」といった容易に遺伝子組み換えできる技術も誕生しています。「遺伝子ドライブ」はゲノム編集技術を応用したもので、「CRISPR-Cas9」を遺伝子の形で導入し、世代を超えて特性が受け継がれる技術です。ミバエやマラリア蚊など害虫や害獣駆除に有効とされています。

 従来の蚊の駆除方法では、メスが産まれないよう改造された蚊を放ち、野生の蚊と交雑させて数を減らしますが、その特性は子の50%しか受け継がれません。改造した蚊は相対的に減少するため、絶滅することなく数を減らすことができます。しかし、遺伝子ドライブで雌になる機能を破壊された蚊は、野生の蚊と交雑するとオスの蚊しか誕生しないため、わずかな改造蚊を放つことで種の絶滅を可能にするとのこと。人にとっては有害な蚊であっても、ボウフラは魚のエサになるなど別の側面では有益です。2018年、エジプトで開催されたCOP14(生物多様性条約締約国会議)では、遺伝子ドライブが種の絶滅をもたらす大きな問題として予防原則を適用するべきと結論付けました。しかし、米国で軍事技術への応用が研究され、豪州と米国の島で遺伝子ドライブ技術を用いた動物を放つ実験が行われているということです。

 「RNA干渉法」はゲノム編集より容易に遺伝子の働きを壊すことができる技術で、「J.R.シンプロット社」がアクリルアミド・打撲黒斑低減ジャガイモを開発しています。このジャガイモの開発者から有害物質チャコニンの増加と黒斑しないため有害物質を摂取する恐れがあることなどが告発本によって暴露されました(現在、告発者は行方不明、本は絶版)。韓国や台湾ではそのジャガイモの輸入反対運動が活発に行われていますが、日本は承認済みです。環境への影響評価が行われていないことから国内では栽培できませんが、フライドポテトやポテトチップスの形で輸入され、ファミレスやファストフード店での使用が懸念されます。また、RNA干渉法を用いたスプレー散布型の除草剤・殺虫剤も開発されています。RNAに界面活性剤を加えることで農産物や虫に侵入させる仕組みで、人にどのような影響があらわれるか、予測不能だということです。

 ゲノム編集技術はDNAを切断して目的の遺伝子を壊す際、それ以外のDNAを切断する危険性があることがわかっています。「オフターゲット作用」といい、大切な遺伝子の機能を失う恐れがあるとのこと。また、ゲノム編集されている細胞とされていない受精卵の細胞が入り乱れる「モザイク」という現象が生じます。しかし、どのような影響をもたらすか不明で、世界中の大学・研究機関から危険性が指摘され、生命体だけでなく環境や食の安全への影響も懸念される問題です。

Table Vol.394(2019年6月)