2021年12月4日(土)コープ自然派兵庫(食育チーム主催)は、医師・本間真二郎さんを迎え、「感染を恐れない暮らし方」について聴きました。

小児科医・微生物学者の本間真二郎さんは15メートル四方の畑で、家族と一緒に多種多様な野菜、豆、麦、雑穀を育てています。また、田んぼで採れた麹菌を培養し、ほとんどの調味料は自家製だということです。

日常生活を改善する

 本間さんは小児科医として勤務後、アメリカでウイルス学・ワクチン学の研究に携わり、現在は栃木県那須鳥山市にある「七合診療所」所長として地域医療に携わりながら、自然に沿った暮らしを実践しています。

 日本の主な慢性疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、痛風、骨粗鬆症、心疾患、アレルギー性疾患)の推定患者数は2億人以上、なかでもアレルギー性疾患は4600万人と日本人の2人に1人と言われ、現代人のほとんどが何かの病気を抱えています。症状に対してアプローチする治療(対症療法)は必要ですが、病気の原因を究明しなければ根本的な治療にはなりません。「すべての病気の原因は不自然な生活にあり、病気が再発しないよう生活指導をすることが本当の治療です。ほとんどの病気に対して私たちのからだは自然治癒力が働きます。発熱や咳、腹痛などの症状はつらいものですが、漫然と薬を飲み続けると自分の治す力を奪うことになります。西洋医学がまちがいだということではなく、そういう側面があることを知っておいてください」と本間さんは話します。

人間は微生物と共生

 人間は単独の生きものではなく、微生物と共生する複雑な生態系です。たくさんの微生物が私たちの皮膚の表面や腸内、口腔内などに存在し、共存しながら人の健康を支えています。なかでも腸内細菌は1000種類以上、総数にして100兆個以上と言われ、病原菌の排除や消化・吸収の補助、栄養素の供給、有害物質の分解、免疫系の調節、病気の予防、大脳活動・精神状態の安定、酵素の活性化、短鎖脂肪酸を産生し全身を調節するなどさまざまな役割があります。微生物の視点が大きく欠如している今までの医学・栄養学は、腸内細菌などの常在微生物の存在を考慮に入れなければ、時代遅れになるということです。

微生物と現代病の関係

 3歳までに確立される腸内細菌が生涯の健康のベースになります。多くの菌に触れ、とり込むことでバラエティに富んだ腸内環境が育まれ、腸内細菌などの微生物によって免疫がコントロールされます。除菌・抗菌など常識的な衛生管理を超えて微生物を排除したことが、現代病(アレルギー性疾患、自己免疫疾患、がん、生活習慣病、うつなど)を増やした根本の原因です。

 産業革命が始まる以前は9割の人が農業を営み土に触れる生活をしていました。産業革命で多数の人が都会の工場労働者になり、微生物との触れ合いが減り、微生物の排除が始まりました。上下水道が整備され衛生環境が整い、化学物質(農薬、化学肥料、抗生剤)が登場する度に微生物が減り、それと同時に現代病が登場し激増し続けています。なかでも先進国は抗生剤を使い過ぎ、抗生剤は腸内細菌へのダメージが大きいということです。すべての生きものは地球の分身であり、地球を傷つける行為は回り回って私たち自身を傷つける結果になります。

腸内細菌を育む食の基本

※イメージ

 日本人の体質には、昔ながらの和食が合います。無農薬・無化学肥料の農産物と無添加のごはん(玄米)、みそ汁、漬け物におかずを加えて「一汁三菜」が理想の食事です。腸内細菌が元気であればビタミン、ミネラルを補います。疲れ目にブルーベリーのサプリメントを摂るなど、気になる症状に特別なものを摂る必要はありません。腸内細菌にダメージを与えないよう余計なものを摂らないという考え方に切り替えることを本間さんはすすめています。

 現代人は食べ過ぎているため、大人は少食を心がけ、子どもは運動量に合わせて食事の量を調整しましょう。未精製の食物、難消化性の炭水化物(多糖類)、発酵食品、食物繊維、地産地消で旬の食材をまるごと(一物全体)いただきます。砂糖、牛乳、小麦、油、精製塩、化学物質(食品添加物、化学調味料、人工甘味料など)は控え、白砂糖よりもはちみつ、メープルシロップを選び、牛乳や小麦は嗜好品の範囲で楽しみます。また、冷えは万病のもと、からだを温め、規則正しい生活、適度な運動、ストレスをためずによく笑い、鼻呼吸・腹式呼吸を意識し、日光に当たる、土に触れる、快眠が日常生活の基本。これらのほとんどが満たされる農作業は理想的と言えます。

 「現代の私たちは、病気の改善を外(治療薬、ワクチンなど)に求め、自分の内(免疫力、抵抗力)を忘れがちです。感染症を恐れるのではなく、何が起きても大丈夫なからだや心をつくることが大事です」と本間さんは話しました。

Table Vol.457(2022年2月)より
一部修正・加筆