NPO法人大地といのちの会代表・吉田俊道さん。全国の小学校・幼稚園・保育園の子どもたちの食育にも力を入れています。

2019年3月10日(日)、豊中市立MIRAIE環境交流センターにて、吉田俊道さん(NPO法人大地といのちの会)の講演会が行われました。当日は、地域での食の取り組みも紹介され、地域ぐるみの食育の大切さを学びました(NPO自然派食育・きちんときほんなどが協力)。

司会はENJOY♡こどもごはん・足立ともこさん。コープ自然派おおさか組合員です。

虫は元気な野菜がきらい

 「菌ちゃん先生」こと吉田俊道さんの元気な講演が始まりました。「菌ちゃん」とは微生物のことで、吉田さんは親しみをこめてこう呼んでいます。吉田さんは「菌ちゃんふぁーむ」で年間30種類の野菜をスタッフ2人とともに栽培、微生物たっぷりの土で育った元気な野菜は無農薬なのに病害虫の被害はほとんどないとのこと。なぜなら虫は腐敗しやすい元気のない野菜が大好き、野菜が健康だと虫はほとんど寄り付きません。生ごみや雑草を微生物の力で発酵させて土づくりすると、野菜自体の抗酸化力が高まって害虫を寄せ付けない元気な野菜が育つのだと菌ちゃん先生は話します。

「菌ちゃん人間」づくり

 菌ちゃん先生は考えました。野菜が元気に育つのと同じことを人間にも適用すればいいのではないかと。つまり、土を発酵菌たっぷりにして元気な野菜を育てたように、人間のおなかを良い菌でいっぱいにするという食生活を菌ちゃん先生は思いつきました。本格的に取り組んだ最初の事例は、長崎県佐世保市の私立保育園マミー。2006年半ばから生ごみリサイクルと微量栄養素を摂る給食に変えたところ、わずか2年で3〜5歳児は年間1人当たり5.4日の欠席だったのが0.5〜0.4日に激減。インフルエンザにもかかりにくくなり、かかっても医者に行く前に治ってしまうという状態になりました。

 香川県三豊市立仁尾小学校では給食で煮干しを使った天然ダシに変えたところ、病欠日数が激減、体温36℃台の子が増えました。今、低体温の子が多く、中学3年生の1割が35℃前半、小学生の3割が低体温です。

現代人はミネラル不足

 では、なぜ煮干しを使っただけで体温が上がったのでしょうか、煮干しにどんな栄養分があるのでしょうか。栄養素の中でも特に摂取量が多く、体温を保つためのエネルギーとなる炭水化物・タンパク質・脂質を「3大栄養素」と呼んでいます。これに身体の調子を整え、代謝を促進するビタミン、ミネラルを加えると「5大栄養素」。さらに、食物繊維、ファイトケミカルを追加したのが「7大栄養素」です。

 生命にとって大切なのはカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など微量栄養素のミネラル。しかし、生命を維持するために必要不可欠な栄養素なのに、多くの人たちがミネラル不足に陥っています。その原因として挙げられるのは、レトルト食品や冷凍食品、袋詰め食品などの原料に水溶性成分とともにミネラルが溶け出た「水煮食品」が使われているから。また、多くの加工食品にはリン酸塩が添加され、ミネラルの吸収を阻害しています。

 ミネラルが不足すると、神経伝達物質が足りなくなって、頭の働きが鈍くなり混乱が起きます。「毎日、煮干しを10匹食べるだけで髪の質が変わり、爪切りの回数が増えます。ミネラル分豊富な煮干しと昆布、トビウオでダシをとり、メザシは頭ごと食べる。食べられない場合は粉末にしてスープに入れる。そして、子どもが食べたらほめることも忘れずに」と菌ちゃん先生は話します。

参加者に質問を投げかける吉田さんの講演はとにかく元気、笑いが絶えません。

より元気になるために

 さらに健康を高める栄養素はファイトケミカル。ポリフェノールやリコピン、スルフォラファンなどファイトケミカルは、植物が紫外線や虫たちから身を守るためにつくられた抗酸化成分で、人間にとっては老化や病気を防ぐための微量栄養素です。

 野菜の皮はバリア部分で、人参の皮にはポリフェノールや抗酸化物質、ナスのアントシアニンはほとんど皮の部分に含まれています。野菜の芯の分部は生長点で生命力の宝庫です。

 しかし、何と言っても旬の野菜を食べることが大切だと菌ちゃん先生。特に栄養があるのは夏の葉物野菜で空心菜はキャベツの代わりにもなり、ファイトケミカルたっぷりです。

 日本は種を食べる文化をもつ国、できる限り玄米や分づき米、雑穀を取り入れ、雑穀は粒が小さいほどミネラルが多くアマランサスがおすすめとのこと。1日水につけてふやかし、白米に少し混ぜるだけでもいいそうです。油はすべて種からできていてミネラルたっぷり、ミネラルをカットした油ではなく、オリーブ油やエゴマ油を使うことも菌ちゃん先生はすすめます。

 おなかを発酵状態にしておくにはよく噛むこと、小食が基本、空腹は免疫システムを活性化させます。繊維質の多いものを食べると腸内発酵が活発になり、発酵を促進させる食品を摂ることも効果的です。

地域で連携する取り組み

 講演前には、NPO法人花と緑のネットワークとよなか・高島邦子さんが取り組みを報告。2002年から給食センターの野菜くず、出し殻、食べ残しなどからつくった堆肥「とよっぴー」を活用して「とよっぴー農園」で野菜や米を栽培、農業体験や調理実習を通して子どもたちに食の大切さや資源の循環などを伝えています。自身も生ごみを燃えるゴミにしない暮らしを20年以上続けています。

 豊中市立走井給食センター・富士原洋子さんは、2万3000食を調理する給食センターでカレーやシチューのルーやダシは手づくり。人参と大根とレンコンは皮ごと調理するなど微量栄養素を摂る給食を全国に先駆けて実践しています。大量調理でのおいしさを追求し、切り方も工夫。また、自身が栄養教諭として勤務する小学校では野菜を栽培し調理する食農教育も実践。これらの取り組みについて菌ちゃん先生は高く評価しました。

 子育て真っ最中のママ&パパ、栄養士、農業者、料理研究家などが参加し、交流会では取り組みを紹介し合うとともに今後の連携についても語り合いました。

Table Vol.391(2019年5月)