畑を荒らす鹿、猪の獣害が深刻化する一方で、鹿肉はジビエ料理の高級食材として人気が高まっています。2018年12月11日(火)、コープ自然派兵庫(ビジョン未来)は丹波産の鹿肉を利用した企画を開催。鹿の生態から活用方法、効能までの学習会と調理実習、試食が行われました。
人的理由による鹿の増加
鹿肉学習会や産地訪問、料理教室などコープ自然派兵庫の組合員活動をきっかけに、2015年、コープ自然派で野生鹿肉の商品化が実現しました。
今回は、コープ自然派兵庫・上﨑常任理事を講師に学習会を行いました。上﨑常任理事が鹿に関心をもつようになったきっかけは、大江山に親子でバードウォッチングに出かけた際、山の様子がすっかり変わっていたことから。15年前に観察できたコルリという鳥の姿はなく、木の皮や芽、若木、下草などが食べ尽くされ土や木の根が見えている状態でした。
兵庫県の鹿は1999年から急増し、ピーク時の2010年は20万頭(神戸市の人口150万人)にまで増え、その原因として日本人の生活の変化や気候、生態系の影響などがあります。第二次世界大戦後、農村の過疎化が進み、狩猟者が減少、日本オオカミの絶滅、保護政策の実施(乱獲による激減から)などの理由で急激に鹿が増加したとも言われています。2011年、鹿による兵庫県の農作物被害面積は191.5haで、被害にあった農家は経済的・心理的打撃から農業をやめるケースも多く、耕作放棄地が増加。森が育たず、小動物や昆虫が減り、生物多様性が損なわれ、保水力が失われた山は倒木や地すべりなどの土砂被害も深刻です。
対策としては柵の設置、番犬を飼う、人が山に入る、エサを減らす、捕獲などがあります。しかし、柵の設置には農家の負担が大きく、また、年間約3.5万頭(兵庫県2013年)捕獲される鹿の多くは山へ投棄、産業廃棄物として焼却・埋設処分されているということです。
野生の鹿を丸ごと活用
鹿肉は高級レストランでジビエとして利用されるだけでなく、最近はアスリートにも人気です。低カロリー(牛の8分の1)、低脂肪(牛の86分の1)、高たんぱく(牛豚の1.5倍)、鉄分・ミネラルがレバー並みに豊富と鹿肉は理想的な食材。中でもカルニチンと言われる成分が豊富で、体脂肪抑制・疲労回復などに良いとされます。角は医薬品・漢方薬や装飾品に、皮は革製品や洗顔クロスなど余すことなく利用できるとのこと。地域の資源を無駄にせず、有効活用するために兵庫県では「狩猟マイスター育成スクール」の開講や1体2,000円で買い取る報奨金制度などの支援を実施しています。「学習会の内容は娘が小学6年生(現在、中学生)の時に自由研究として発表したものです。夫は狩猟免許を取得し、現在、娘は陸上選手として鹿肉を食べて練習に励んでいます」と上﨑常任理事は話します。
学習会の後は、鹿汁、春巻き、青椒肉絲、鹿肉ミートボールのトマト煮をメンバーが考案したレシピで調理実習を行いました。調理前の鹿肉は美しい赤色で新鮮なレバー肉のよう。脂身がほとんどないため、ミートボールはしっかり捏ねるのが秘訣です。鹿汁は切り落とし鹿肉から出たダシの旨みたっぷりで、噛めば噛むほど深い味わい。「ボリュームのあるランチですが、あっさりしていてペロリと食べられます。プリプリの食感が癖になりそう。カルニチン効果のおかげか、身体がぽかぽかしてきました」と参加者たちは大満足の様子でした。
Table Vol.387(2019年3月)