インターネットの力が増すなか、SNSや動画が選挙にも大きな影響を与えています。新しい時代のメディア「インターネット(以下ネット)」と「テレビ」をどう受けとめればいいのでしょうか。2025年7月31日、コープ自然派兵庫(ビジョン平和)は龍谷大学社会学部准教授の松浦哲郎さんを招き、話を聞きました。

メディアの発達
人と人のつながりやコミュニティは、メディアにより影響を受けます。人類が視覚情報を記録し始めたのは、約4万年前の洞窟壁画から。絵が象形文字に発展し、1445年グーテンベルクが活版印刷を発明し、本の印刷とともに知識の広がりは加速しました。やがて新聞、写真、電信、電話、ラジオが登場。1941年にはテレビ放送が始まり、日本では戦後の1953年に本放送がスタートしました。1990年代になるとネットが普及し始め、2005年にはYouTubeが誕生。当初、テレビ局はネットを競合とは思っていませんでしたが、2010年代後半には動画投稿を中心に情報発信の主流が逆転しました。
テレビとネットの違い
テレビは不特定多数に向けた「放送」ですが、ネットはもともと個人と個人の間の「通信」でした。テレビは発信者が限られ、信頼性や公平性が重んじられる一方、ネットは誰でも自由に情報を発信できます。放送法で政治的公平性が求められるテレビと違い、ネットは規制がなく、真偽不明の情報が拡散しやすい特徴があります。兵庫県知事選でネット上の噂をテレビが検証できなかった背景に、この制度の違いがあります。松浦さんは「ネットの新しい定義づけが必要です」と指摘します。

検索とクリックという“魔物”
ネットは自分で検索するという能動性から、クリックを重ねるうちに“真実にたどり着いた気になる”という危うさがあります。便利な反面、偏った情報を信じやすくなるのです。一方、テレビには権力を監視し、不正を明るみに出す役割があります。政治家の表情ひとつも逃さず映し出すテレビは、権力者にとって疎ましい存在です。松浦さんは「ネットの力を無視できない今こそ、テレビのジャーナリズム機能をどう再構築するかが問われている」と語りました。
映像を“批評的に”見る力を
1920年代、ソビエトの映画人クレショフによって「クレショフ効果」と呼ばれる心理作用が実験で示されました。同じ人物の映像でも、間に挟む画像によって視聴者が読み取る感情が変化するというものです。テレビやネットで流れる映像は、編集次第で印象を変えることができます。松浦さんは「信頼回復を図るため、時系列や編集方針を視聴者に開示する仕組みを作っては」と提案します。私たち自身も、映像をただ“見る”のではなく、“批評的に見る”姿勢が求められています。
情報を選び取る力を
松浦さんは「自分が何を見て、どんな情報に影響を受けているかを意識することが、メディアリテラシーの第一歩」だと話します。情報があふれる時代に求められるのは、“信じる力”ではなく、“確かめる力”。流れてくる情報をそのまま受け取るのではなく、「なぜ、誰が、どんな目的で」発信しているのかを立ち止まって考えること。メディアは社会の鏡であり、民主主義の土台です。松浦さんは最後に「良い番組を評価し、複数の情報に触れる習慣をつけてください。信頼できる社会をつくるのは、メディアではなく私たち一人ひとりです」と締めくくりました。

Table Vol.520(2025年12月)

