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食と農と環境

農産物の安全基準について考える

9月1日(土)、コープ自然派兵庫(なでしこ原っぱ東チーム主催)は、橋本慎司さん(兵庫県有機農業研究会理事長)を講師に農産物の安全基準について学習会を開催、自身も農業者の橋本さんの豊かな経験も交えた学習会は話が尽きませんでした。

講師の橋本慎司さんのお話は豊富なデータと自身の思いが溢れる内容でした。

国際派有機農業者への道

 講師の橋本慎司さんは1961年広島県で生まれ、父親と祖父は広島原爆に遭っていました。高校3年間は父親の仕事の関係でブラジルのインターナショナルスクールに通い、帰国して日本の大学でも語学を学んだという国際派。コープこうべを退職後、有機農業を志して丹波市市島町に移住し、市島町有機農業研究会に入会、就農して30年近くになります。2001年に有機JASを取得、現在は平飼い採卵鶏300羽と40〜50種類の有機野菜や米を栽培しています。平飼い養鶏は、緑飼(畑の雑草・畔草・野菜残さ)、NON-GM飼料、ヨーグルト(氷上乳業)、家畜複合飼料などを与えています。また、米は合鴨農法を取り入れ、自然の循環を大切にしています。

 語学が堪能な橋本さんは、1996年にIFOAM(国際有機農業運動連盟)アジア・インド大会でアジア理事に就任し、約121ヵ国で行われた有機農業についての話し合いに参加、表示問題などについて20年間にわたり国内外の有機農業普及活動に尽力しています。

 学習会当日の朝まで、「WWOOF」を通して日本文化と有機農業を学びたいというカナダの若者を受け入れていたという橋本さん。「WWOOF」は農業体験と交流を目的とするNGOで1971年にイギリスで始まった活動。橋本さんは年間16ヵ国・約45人を受け入れ、祭りの神輿担ぎを手伝ってもらうなど交流を深めているということです。

世界第3位の農薬使用量

 2006年に厚生労働省が定めたポジティブリスト制度は、一定基準を超えた残留農薬が検出された農作物や食品の流通を禁止。日本は有機リン系・ネオニコチノイド系を含め農薬はアメリカの7~8倍、スウェーデンの25倍の使用量で農薬使用量は世界第3位だと言われ、残留農薬の基準値も徐々に緩くなっている現状です。橋本さんは「農産物は工業品とは違い生き物です。同じ形があるはずなく、ちょっと虫がいる、土がついているとクレームをつける消費者
にも責任があります」と訴えます。

食品表示の安全性を知る

 福島原発による放射能汚染は深刻な環境問題ですが、日本の放射能基準は世界でも驚かれるほど緩い基準です。橋本さんも利用している阪神・市民放射能測定所では個人の持ち込みも測定できるので、ベクレルフリー農産物かどうか確認できます。また、橋本さんは食の不安に応えるため「兵庫県認証食品」委員としてとして「ひょうご推奨ブランド」と「ひょうご安心ブランド」に関わっています。兵庫県は農産物、畜産物、水産物、加工食品について国とは別の基準を設定。このような自治体独自の安全表示は、北海道、栃木、滋賀、愛媛、和歌山などがあります。

 南米などでは小規模農民の育成や在来種・少量多品目というアグロエコロジーを推進し、またフランスやニュージーランドでは市民による食品表示という参加型保証システム(PGS)をつくる動きが起こり始めているとのこと。参加者からの質疑も多岐にわたり充実した学習会となりました。

参加者からは家計内で何をどのように食べたらよいのかなどの質問がありました。
「エアコンの効いた部屋では気候変動はわからない」と橋本さん。市島町はたびたび大きな災害に見舞われています。

Table Vol.378(2018年11月)

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