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生産者訪問・商品学習会

かめのこ農園キャラバン てんとう虫とともに育つピーマン

2025年7月22日、コープ自然派奈良(地域連携ボード)は、高知県土佐市「かめのこ農園」の岡本さんを招いて天敵農法の学習会を開催。一緒にやってきた虫たちを観察し、とれたてのピーマンを味わいました。

岡本啓伯さん(右)と佳直さん(左)

天敵農法で育つ虫守ピーマン

 岡本さん一家のピーマンは「天敵農法」で育てています。天敵農法とは、農薬で虫を退治するのではなく、ピーマンに害を及ぼす虫の天敵をビニールハウスの中に放って被害を避ける方法です。こうして育てられたピーマンは「虫守ピーマン」と名付けられています。

虫は従業員

 虫の話を始めると止まらないという虫好きの岡本さんのピーマン栽培は、虫捕りから始まります。天敵昆虫を探して、捕虫器につながった2本のチューブの片方を口にくわえて吸うと、もう一方のチューブから虫が容器に入ってきます。そして、捕まえた虫たちは好みの植物と一緒にピーマンの隣のハウスで育てられ、かめのこ農園の「従業員」として働きます。ピーマンハウスの中は自然の営みを活かした、まさに生物多様性そのもの。天敵昆虫たちが、農薬も農家の労力も必要としない引き算の農業経営の一端を担っています。

かめのこ農園の従業員、ヒメカメノコテントウ

土着の虫のチカラ

 天敵の虫は販売されていますが、えさを与えられて育った虫は害虫を捕る能力が低いそうです。また、被害が出始めてからの注文では間に合いません。外来種の虫が増えていることもあり、「地域の生態系を考えて、できるだけ土着の虫、地域に生息する虫を使いたいんです」と岡本さんは話します。

害虫にあわせた天敵を

 ピーマンのハウスにはコナジラミ、ハダニ、アブラムシなどの害虫が発生します。作業中に虫の被害を見つけると、その場所に印をしておいて、そこに天敵となる虫を施します。コナジラミにはクロヒョウタンカスミカメ、アブラムシにはヒメカメノコテントウというように、発生した害虫に合わせて天敵となる虫を選びます。

天敵農法との出会い

 岡本さんが天敵農法を始めたきっかけは、農薬をかけても対処できない虫が増えたこと、農薬散布後はいつも体調を崩していたこと。そして、長女のアトピーから農薬の悪影響に気づき、自分が食べられないものを人には売れないと感じたこと。天敵農法の先駆者である浜田忠光さんや仲間の農家とともに切磋琢磨し研究してきたといいます。

生のピーマンをまるかじり!

 この日、岡本さんと一緒にやってきた従業員は「ヒメカメノコテントウ」。参加した子どもたちは虫かごを一所懸命のぞき込み、興味津々です。「アゲハチョウの幼虫の被害には何がいいですか」という質問もありました。試食は「ピーマン蒸しパン」と「丸ごとピーマン」。最初はびっくりした顔をしていた子も、苦みがなく甘いピーマンをおかわりして食べていました。

まるごとピーマンをパクリ!

生産者と組合員のつながり

 ハウスに現れる害虫の種類は毎年変わるため、天敵を足し続ける必要がありますが、気候変動で土着の虫を捕まえるのが難しくなってきています。天敵農法を続けるにも苦労はありますが、「農薬に頼らない栽培の大変さを理解し、適正な価格で購入してくれる組合員さんの存在は、本当に嬉しいです」と岡本さんは話します。そして、「生産者と組合員が安心・安全なものを通して交流し、理解を深めれば、農家の減少にも歯止めをかけられるのではないでしょうか。かめのこ農園のピーマンを食べながら、虫たちの営みに思いを馳せてください」と伝えました。

Table Vol.519(2025年11月)

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