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生産者訪問・商品学習会

コープ自然派アンバサダーin九州① 若手生産者がつくる有機にんじん

2019年11月21日(木)〜23日(土)、コープ自然派アンバサダーは九州(福岡・熊本・鹿児島)の生産者を巡る研修会を開催、コープ有機九州支所(熊本県山都町)の若手生産者グループの畑を見学しました。

「リーフレットファーム」の畑で収穫体験。にんじんジュースとかき揚げをいただきました。

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コープ有機九州支所開設

 熊本県山都町は九州中央部・阿蘇外輪山に位置し、冷涼な気候を生かして有機農業に取り組む農家が多い地域です。2019年7月、コープ有機九州支所が山都町に開設されました。コープ有機は2016年コープ自然派事業連合の「農産部門」を分社化し誕生。2019年からはアイチョイス事業連合も出資に参加して、計画的な生産、余剰野菜の販路づくり、流通の仕組みづくりなどに生産者とともに取り組んでいます。

 山都町有機農業サポートセンターでは、新規就農希望者を対象に有機農業技術の研修が行われていました。研修生は高品質・多収穫を実現する「BLOF理論」による化学的な有機農業を学びます。そして、BLOF理論を学び実践する若手生産者グループがつくる有機にんじんが2018年に続き2019年も大豊作となりました。

有機農業を志して山都町へ

「YASKI FARM」鳥越万里子さんと靖基(やすき) さん夫妻、岸千恵さん(左から)。鳥越さん一家(夫妻と娘さん)は築160年の古民家を居に、11家族から成る集落の一員として、五穀豊穣を願う年中行事や消防活動、環境保全などに参加しています。

 鳥越靖基(やすき)さん・万里子さん夫妻と岸千恵さんが営む「YASKI FARM」は、東日本大震災後、東京から移住した新規就農者グループ。「YASKI BAND」としてライブや映画・舞台・CMの楽曲など音楽活動に励んでいた3人は、被災した人たちのために宮城県石巻市で炊き出しやライブのボランティア活動を始めました。しかし、時間が経過するにつれ、被災地では菓子パンやカップ麺ばかりの食事に野菜不足が常態化して体調を崩す被災者が多くなり、「私たちは何もつくっていない」と山都町有機農業サポートセンターの研修生に応募。小祝政明さんのBLOF理論の講義や「キッチンガーデン」のミニトマトのおいしさに感動し、有機農業への一歩を踏み出しました。

 「YASKI FARM」の畑は阿蘇外輪山の中山間地域に点在し、火口から約8kmの畑一面に火山灰が降り注ぎます。ミネラル分豊富な火山灰は硫黄の香りが漂い、カルシウム・鉄分が豊富な地下水、外輪山の土をエサに混ぜた抗生物質不使用の豚・馬・鶏の糞、自生する牧草、乳酸発酵させた竹粉、菌床椎茸の廃菌床など自然由来の堆肥が豊富。春先に野焼きをすることで微生物が増えて害虫駆除にもなります。これらの条件が重なり、「YASKI FARM」の畑には団粒層と呼ばれる真っ黒でふかふかの土ができ上がりました。また、土中に空気層があるため保水性が高く水やり不要。土着菌が作物の病気を防ぐ性質を生かして有機農業を続けています。

 「山頂で農業を営んでいるので、水を育む土づくりをしています。熊本県内や山都町内にあるエネルギーを活用して、BLOF理論をもとにミネラルなどの養分を畑にチューニングするのが私たちの仕事です。データだけに頼らず、土の感触や気候を肌で感じることが大切。子どもたちに胸を張ってここは素晴らしい土地だと言える生き方をしたいです」と鳥越さん。耕作放棄地は10年以上、農薬が使われていないので有機JAS認証を取得するのに理想的な土地だと耕作放棄地の開墾にも積極的に取り組んでいます。

「YASKI FARM」自慢の土。熊本県は古墳が多い地域で全国の約3割が集中、「YASKI FARM」の畑からも土器やヤジリなどが発掘されます。

手掘りで収穫しています。

土と向き合う時間は大切です。土に触れていると心が落ち着き、免疫力が上がります」と「リーフレットファーム」今村剛喜さん・絵理さん夫妻。

  就農して約10年、「リーフレットファーム」今村剛喜さん・絵理さん夫妻は9,500㎡の畑で有機JAS認証を取得。就農1年目はピーマン6,000本が全滅し、イノシシににんじんを食べ尽くされ、長男が誕生した日に大雪でハウスが壊滅するなどの苦難を味わいました。

 小祝政明さんの著書「有機栽培の野菜づくり」を読んで人生が変わったという剛喜さんは、「ド直球のBLOF理論を実践しています」と自信に満ちています。当初、1,000㎡当たり1トンの収穫だったにんじんは現在5〜6トンに。阿蘇の火山灰をはじめ、太陽熱で殺菌された馬300頭の糞、竹パウダー「山都タケル」、地元の菌床椎茸「あぐ里」の廃菌床、鶏糞、自家製雑草堆肥など、「YASKI FARM」と同様に自然の恵みを活用し、7月中旬の種まき前に堆肥を入れてよくすき込み、太陽熱で消毒して土づくりします。12月から始まる収穫は手掘りにこだわり、注文された数だけ剛喜さんがにんじんを抜き、絵理さんが葉を取る連携作業。「手掘りするとにんじんの状態がよくわかります。ポンッと抜ける感覚が楽しくてやめられません」と剛喜さん。「仕事と家庭、いつも一緒なので、ケンカするとつらいです」と絵理さんは笑います。土の表面が凍ると、手で雪をかき分け凍土を砕きながら作業を進めますが、しっかり土づくりしているので土中はふかふか、にんじんは寒さに耐えるために糖度やビタミン濃度を高めます。「おいしいと言ってもらえた時は農業をやっていて良かったと心から思います」と剛喜さん。害獣の被害にあった時でも「5%ほどは食べてくれてありがとう」という気持ちになるということです。

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Table Vol.410(2020年2月)

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