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食と農と環境

遺伝子組み換えナタネの自生が広がらないように

2023年7月22日、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン主催「2023年全国遺伝子組み換えナタネ自生調査報告会」が開催されました。

※イメージ

遺伝子組み換え(GM)ナタネ自生調査の意義

 日本で実際に流通しているGM作物は、大豆、トウモロコシ、ナタネ、綿の4種類。使用目的の多くは家畜飼料や製油です。輸入されたGMナタネが港からの輸送中にこぼれ落ち、道端などで野生化したものが「GMナタネ自生」です。2004年、農水省がGMナタネ自生を公表したことに危機感を覚えた人たちが自発的に調査を開始し、翌2005年から報告会が開催されてきました。

 調査では、家畜飼料工場周辺や輸入港から製油工場までの沿道などを中心に、自生ナタネを探し、抜き取ってGMかどうかを検査します。ナタネが属するアブラナ科は交雑しやすいことで知られており、ブロッコリー、カラシナ、ミズナなどとの交雑が確認されています。GM自生ナタネが広がらないように、毎年調査を行い監視を続けること、関係企業や行政に自生汚染の防止を求めること、見つけたものは抜き取り処分することの継続がとても大切です。

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの天笠啓祐(あまがさ・けいすけ)さんから、遺伝子組み換え食品の最新情報が報告されました。

今年は38都道府県で調査

 今年の調査では、7団体(生活クラブ生協、あいコープみやぎ、なのはな生協、パルシステム東京、コープ自然派、グリーンコープ共同体、遺伝子組み換え食品を考える中部の会)が38都道府県で調査を実施、9道県でGMナタネを発見しました。調査検体数は723検体に上ります。昨年までとは違う試験紙を使ったためデータの比較が難しいのですが 、GM自生ナタネが減ったとはいえない状況です。今年使用した試験紙については、検査を通して、試験紙の強度や検出感度に課題があることと、この試験紙では検出できないGM品種があることが分かりました。これまで使っていた試験紙の価格が約3倍に高騰したことによる避けられない変更でしたが、来年は再度そのような課題をクリアする試験紙に変更予定です。

遺伝子組み換え食品を考える中部の会の河田昌東(かわた・まさはる)さんから、GM ナタネ自生調査の意義と課題について説明がありました。

 コープ自然派からは、日本でいちばんナタネの輸入量が多い神戸港周辺の調査を中心に報告しました。2019年の調査で採取した検体の75%が陽性だったことから、神戸市環境局と製油工場に再発防止と管理の徹底を求めて申し入れを行って以来、工場とは連絡を取り合う関係が続いています。工場での日常的な刈り取りによる除草作業の強化や、社員教育などの取り組みの結果、工場周辺はこの2年自生ナタネを発見できない環境が実現しています。また愛媛県では、水産物や柑橘へのゲノム編集技術研究施設設立の計画があり、コープ自然派しこくを含む3団体で県議会に中止を求める請願書を提出しました。残念ながら否決されましたが、改めて意見交換の場を持つ予定です。

コープ自然派の報告を担当した、遺伝子組み換え食品ストップネットメンバーで、コープ自然派しこくの野島常任理事

遺伝子組み換え食品の最新情報

 カナダではGM鮭の養殖が中止に、フィリピンではGM稲の市場化が市民によって阻止された一方、韓国では未承認のGMズッキーニの種子が8年間流通していたことが判明するなど、世界のGMの広がりは予断を許さない状況です。また今年3月、日本ではもちのように粘り気のある「ワキシーコーン(もちとうもろこし)」が、高GABAトマト、マダイ、トラフグに次ぐ4番目のゲノム編集食品として届け出がされました。さらに、日持ちメロンや高温耐性ヒラメ、成長が早いコオロギ、低アレルゲンの鶏卵などの開発が進行中です。

 遺伝子操作技術はますます精密化し、フードテックへの応用も広がっていますが、生態系や食の安全への影響評価は不要とされています。また日本では食品表示制度が改正されて「遺伝子組み換えでない」表示が事実上なくなりつつあり、ゲノム編集食品や種苗にはそもそも表示義務がありません。消費者や農家の選ぶ権利が脅かされていることに対して、声を上げていかなければなりません。

Table Vol.493(2023年9月)

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