北海道の十勝北東部・音更町にある広大な牧場で約600頭の牛を飼う北十勝ファーム。国産牛肉のうちわずか0.1%以下というオーガニックビーフの取り組みについて上田さんに聞きました。

──北十勝ファームの特徴を教えてください。
上田 牛の自然なリズムに合わせて、夏場は放牧して雪の季節は牛舎で過ごす「夏山冬里方式」で育てています。天然の湧き水を飲んで、いいエサを食べて、のびのびと健康に飼うこと。炭や有用菌のバランスを整えているので牛舎に匂いがないのも特徴だと思います。
「雄大な自然の優しさと厳しさ、そして人間の英知と努力。その調和の中にこそ本物の農業、本物の食、本物のおいしさがある」というのが私たちの理念です。牛たちが私たちに飼われて幸せだったと思ってくれるような牛飼いになりたいと思ってやっています。

──オーガニックビーフへの挑戦は?
上田 もともと有機に近い環境で牛を育てていていたので、エサを有機JAS認証100%にすることでオーガニックビーフをスタートしました。国内の有機JAS牛肉の生産量はわずか0.1%未満ですが、これまでも他ではない突出したチャレンジをしてきたので。オーガニック以外の牛も、牧草やデントコーンなど6割以上を自社農園でつくり、99%以上国産原料で、人が食べても安心な素材を自家配合しています。肉質は赤身なのにしっとりとした食感で、レストランのシェフからも「透明感のある味」と評されています。

──アニマルウェルフェアも実践されていますね。
上田 〝本質〟を見ることが大切だと思っています。スタッフのつなぎにはAWFC(アニマルウェルフェアフードコミュニティ)のロゴマークをつけていますが、これは、スタッフたちが「このマークを身に着けている以上、牛たちにどう接するべきなのか」を考えるために使っています。いまの家畜って僕から見ると家畜じゃなくて産業動物。やっぱり健康に飼うことが大事だと思います。ストレスのない家畜の肉を食べることが、人間のストレスがなくなることにもつながるのではないでしょうか。

Table Vol.517(2025年9月)