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生産者訪問・商品学習会

りんご栽培を次世代につなぐ津軽産直組合のチャレンジ

生協との産直を大切にネオニコ系農薬を使わずにりんご栽培を続ける津軽産直組合が、新しい栽培法にチャレンジしています。2025年7月6日、連合産直委員会は新しいりんご園の植樹を行いました。

前列右から2人目斉藤篤寿さん、3 人目工藤和仁さん、4 人目斉藤勇太さん

今のままでは将来はない

 津軽産直組合代表の斉藤篤寿さんの話は「今のままでは青森のりんご農家に将来はない」という言葉から始まりました。栽培の手間も技術の継承も必要なりんご栽培。生産者の高齢化などで毎年400軒もの青森のリンゴ農家が廃業しています。特にネオニコフリー(ネオニコ系農薬不使用)の栽培は技術が必要な上に、皮に傷がつくと売り物にならず、取り組む生産者は増えません。
 異常気象で多発する病害虫に加え、今年の冬は記録的な豪雪災害がありました。連日除雪しても雪の重みでりんごの枝が折れてしまい、青森県内の被害額は過去最悪の約203億円と発表されました。園地には根元から折れたりんごの樹があり、倉庫も倒れたそうです。

ネオニコフリー栽培の課題

 甘いりんごはネオニコフリー栽培が難しく、病害虫に負けないように樹を強く育てていますが、病害虫被害が深刻になっています。慣行栽培のように強い農薬で病害虫を抑えられないため、被害を早く見つけて対処したり、広がった場合は樹を切り倒すしかありません。周囲を慣行栽培の畑に囲まれている現状では、周囲の畑から農薬の飛沫が飛んでくるドリフト問題も解決できません。

次世代が続けられるりんご栽培へ

 いま津軽産直組合では、労働力不足のなかで省農薬りんごを安定的に届けるために、従来の樹の枝を大きく広げる「丸木栽培」から、「高密植栽培」へのチャレンジを始めています。
 高密植栽培とは長野県で始まった樹の間隔を狭めて植える栽培法です。樹が一列に並ぶので生育診断がしやすく農薬や肥料を減らせ、病害虫が出た樹は伐採できるので被害を最小限に抑えられるとのこと。丸木栽培に比べて面積あたり3倍の量が収穫できます。
 高密植栽培のりんごは食味も良く大企業が参入していますが、一般に農薬使用が前提です。ネオニコフリーが可能なのは、30年前からBLOF理論を取り入れるなど高い栽培技術があるからこそ。斉藤さんは、「栽培方法をマニュアル化して、事業計画を立て、若い人がやっていけるりんご栽培にしたい」と語ります。

地域まるごとネオニコフリーへ

 高密植栽培では高所作業も機械化できるため、少ない人数で広い園地を管理できます。除雪車が入る道沿いの耕作放棄地を買い取る計画もすすめていて、数年後には「地域一帯ネオニコフリーに」という夢がかなうかもしれません。青森でも夏は40℃近くなるため、暑さに強い品種を選んで栽培することで、将来的にはオーガニックへの転換の可能性も見えてきました。

みんなで育てるりんご園

 新しい園地にみんなでシナノスイートの苗木を植えました。指南役は津軽産直ファーム代表の工藤さん。スコップで穴を掘って苗木を植えて支柱に止め、しっかり根が張るように土を踏み固めます。1人10本、全部で360本の植樹は汗だくになっての作業です。

植樹会の様子、元気に育ちますように!

 2年前から生産者に転向した工藤さんは、「産地の持続が困難になりつつありますが、私でもできるんだと見せて、若い生産者に挑戦してもらいたいと思って始めました」と話します。また、斉藤さんの息子の斉藤勇太さんも、「周りのみんなのモデルになりたい。今年は一人で3千本植えました」と。
 高密植栽培には多額の初期投資が必要ですが、「これまでも周りに助けられてきたので、自分も次の生産者たちにつないでいきたい。一番大切なのは、子どもたちが安心して食べられるりんごを作ること」という斉藤さん。この日植えたりんごは3年後から届く予定です。

糖度や内部を判別する光センサーの説明を聞く参加者は「小玉や皮に傷があっても取り扱ってほしい」と話していました。

Table Vol.517(2025年9月)

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