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生産者訪問・商品学習会

北海道の有機農業をリード!「いましろオーガニックファーム」を訪ねる

2019年7月下旬、コープ自然派事業連合・松尾副理事長、小泉顧問、コープ有機・佐伯専務、コープ自然派パン工房・福井工場長たちは北海道小麦の生産者「農業生産法人・有限会社営農企画」・今城正春さんが運営する「いましろオーガニックファーム」を訪ねました。

「いましろオーガニックファーム」は、今城さん夫妻と息子さんの3人で運営し、農作業は息子の浩貴さん(右から3番目)が中心に担っています。収穫後に巨大コンバイン前で記念撮影。

今年の北海道小麦は豊作

「農業生産法人(有)営農企画」取締役専務・今城正春さん。

 「いましろオーガニックファーム」は、北海道中央部、旭川市に隣接した比布(ピップ)町に約200haの畑をもつ大規模農家です(2018年の1経営者当たり耕地面積は北海道28.52ha、全国2.99ha、農水省HPより)。比布町の耕作面積は約2100haでその1割を営農企画が畑として運営、畑は町内に点在し、その半分が有機JAS認証農場です。高齢化による離農で北海道でも耕作放棄地が増加傾向ですが、比布町では条件が悪い土地でも今城さんが引き受け耕作放棄地はありません。

アメリカの大規模農家さながらの収穫風景。「いましろオーガニックファーム」のスケールの大きさに圧倒されます。

 今回、オーガニック小麦の収穫を見学。横幅6mの米国ケースインター社製コンバインが1.5haの小麦畑をまたたくまに刈り取っていきます。昨年、北海道は日照時間が短く小麦が不作でしたが、今年は天候に恵まれ質・収量とも良好。収穫に立ち会った「ゆめちから」は穂がアメ色に色づき、実がぷっくりとつまり、最高の出来だということでした。

 1988年、今城さんは42歳で「㈲営農企画」を立ち上げ農業経営に参入、デパートなどの陳列棚を手掛ける店舗設備の会社経営からの転身でした。バブル期を経てインターネットや通信販売の普及など、時代の変化とともに小売販売の方法が変わり、今城さんは仕事の変化をいち早く予想。「人類がいる限り、食べものは必要だから」と農業の世界に飛び込んだということです。「農業を営む同級生たちから『お前にできるわけがない』と笑われ、失敗しながら独学でやっていくしかありませんでした」と今城さん。当初、店舗設備の会社からの収入でコンバインなどの農機具を購入、耕作放棄地を買い足し、委託作業の請負いなどをしながら農地を広げていきました。

有機栽培で差別化を図る

 営農企画が有機JAS認証農場の認定を得たのは2012年。特別栽培(農薬使用量は慣行栽培の半分以下)による農地面積を広げてきた今城さんは、慣行栽培との販売価格に差がないことに不満を抱き、「人と違うものをつくらなければ。オーガニックで差別化を図ろう」と有機栽培の勉強を独学で始めました。有機農業は有機資材が高価で費用がかかるため、自社有機肥料センターで鶏糞、キノコの廃菌床、もみ殻で堆肥・ボカシ肥料をつくり、1反当たり5トンの堆肥を投入。「日本の農業は便利さだけ追求したため、微生物を畑から根こそぎなくしています。微生物に十分な栄養を与え、『利息』だけいただくことで有機農業を永遠に続けることができるのです」と話す今城さんのモットーは「畑に貯金」です。

自社の有機肥料センターも広大。堆肥は1週間で発酵し、温度が70℃まで上がれば切り返して熟成させます。

自由な発想で斬新な商品

 2014年、有機JAS加工食品認証工場の認定を取得し、焼き立てパン工房をスタート。2016年には旭川市にオーガニック工場を開設、大豆、麦、そば、小豆、カボチャ、トマトなど自社農園の収穫物を使用し、栽培から加工、販売まですべて自社で行う6次産業化を図ります。「オーガニックどら焼き」は有機アガベシロップで炊き上げた小豆の風味豊かなこし餡を使用。黒豆・白大豆・かぼちゃ・あずき4種の「オーガニックSOYアイス」は、有機豆乳・有機アガベシロップ・塩のみをベースにしたシンプルな原材料で、豆乳アイスに使用されることが多い植物油脂を使わずクリーミーで濃厚なヴィーガンアイスです。アガベシロップは血糖値が上がりにくい健康甘味料で、その特長に惚れ込んだ今城さんは自社製品すべてに使用、オーガニック水羊羹やクッキーなどヴィーガン・ノンシュガー・スイーツという新タイプのデザートをつくりました。

 また、今城さんの豆乳は大豆特有の匂いと粉っぽさがほとんどないのも特長。市販の豆腐や豆乳は大豆を茹でる時に出る泡を消すため消泡剤を添加しますが、今城さんは大豆が煮崩れるまでしっかり茹でて煮汁を利用することで消泡剤を使わない製法を考案、大豆臭さや粉っぽさも同時に解消しました。

 「農業はビジネスです。事業として成り立たせるには、農産物をつくるだけではダメです。ターゲットを絞った商品を企画し、最新機器の導入など先行投資も必要。時代の変化とともに仕事の内容も変わります。人と違うものをつくり、人がやらないことをして利益が生まれます。日本の農業を守るために生産者や農産物を増やすことは大切ですが、原料をつくるだけでなくストーリー性ある加工品を自分でつくらなければなりません」と今城さんは話します。

付加価値とブランド力

デザイン会社に依頼したスタイリッシュな新ロゴが誕生。「いましろオーガニックファーム」はブランディングにも力を入れ、戦略的、革新的な手法で今城ブランドの確立を図ります。

 オーガニック商品を扱うスーパーマーケットの店員が知識不足であると今城さんは憂慮しています。「常温で腐らないサンドイッチなどを食べてきたコンビニ世代は、カビを見たことがないという店員もいます。オーガニック食品を扱うには知識と注意力が必要です。オーガニックの需要が高まり、さまざまな企業から声をかけていただきますが、有機JAS認証マークがついていれば良しとする店では弊社の商品を販売したくありません。『今城ブランド』としてオーガニック以上の付加価値を理解していただける方たちに商品を販売し購入してもらうことを望んでいます」と今城さんは話します。

 昨年、コープ自然派パン工房はオーガニック小麦10トンを「いましろオーガニックファーム」から仕入れ、すでに全量を使い切っています。今回の訪問でオーガニック小麦の「ゆめちから」「きたほなみ」を50トン販売してもらうことを約束しました。

Table Vol.400(2019年9月)

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