300年以上の歴史を持つ庄分酢。伝統を守りながらも新しい挑戦を続ける庄分酢のものづくりについて聞きました。酢がもっと好きになる、そんな話がたっぷりです。

──庄分酢の始まりについて教えてください。
高橋 1624年(寛永元年)、高橋家の初代が筑後国(現・福岡県南部)に移り住み、二代目が造り酒屋を開業しました。豊かな水と大地に恵まれた筑後は米どころ、自然の恵みを生かして四代目清右衛門が酢造商いを始めました。それが庄分酢の始まりで、以来、頑なにいい酢をつくり続ける心と技を大切にしています。

── 大切にしている思いは?
高橋 時代とともに、暮らしも大きく変わりました。酢の製法も短期発酵や大量生産が主流になっていますが、私たちは「昔ながらの製法を、手間を惜しまず守り続けることこそ、本当の価値がある」と信じています。支えてくださるお客さまを裏切らない最高の酢を届けたいという思いが、私たちの原動力です。

──酢づくりについて教えてください。
高橋 いい米を使い、300年以上棲みつく蔵付き酢酸菌の力を借りて、静置発酵でゆっくりと酢を育てます。いい酢づくりは子育てに似ています。目を離さず、手を抜かず、菌たちが心地よく働けるように、季節に応じて甕の上にかける莚を調整し、酢酸菌の膜の状態を毎日見守っています。
2001年には有機JAS認証を取得しました。「自然派Style 国産有機純米酢」は、有機米のもろみをしぼり、旨みをたっぷり引き出しています。角のない酸味と、米の旨みが詰まった芳醇さが食欲をそそります。サラダやマリネにひとさじ加えるだけで、料理全体の味がぐっと引き立つ酢です。

──酢で新しい提案をされていますね
高橋 歴史の価値を融合しつつ、現代の生活にマッチした酢の楽しみ方として、果実を使った飲む酢や、肉・魚料理やパスタソースにも使えるドレッシング、ビネガーサイダーなど、「毎日が少し楽しくなり、体にもうれしい」酢のある暮らしを提案しています。
Table Vol.513(2025年5月)