Table(タブル)はコープ自然派の情報メディアです。

食と農と環境

令和の百姓一揆 ~日本の農業への危機感で立ち上がった農家たち~

離農が止まらない

 2025年3月30日、全国の14都道府県で一斉に農家や酪農家たちが「日本の食と農を守ろう」を合言葉に「令和の百姓一揆」を決行。東京では約30台のトラクターと約4500人の農民・消費者が集まり、奈良のデモにはコープ自然派奈良の上市理事長も参加しました。
 「令和の百姓一揆」実行委員長で山形県の米農家である菅野芳秀さんは、「洪水のように離農が進んでいる」と現状への危機感から百姓一揆を呼びかけたといいます。日本で農業を主な仕事にしている農家は2023年までの23年間で約240万人から約116万人へと半減。平均年齢は69.2歳と高齢化が進み、2040年には30万人に激減すると推定されています。

※イメージ

時給10円という現実

 米農家など1経営体の2022年の収入は補助金を含めて378万円。肥料代や光熱費などの経営費を除けば手元に残る所得は1万円、平均の労働時間で割った時給はわずか10円です。(※)さらに、近年の異常気象や肥料・資材費の高騰、高額な機械の買い替えが離農に追い打ちをかけています。
(※)出典公益財団法人民間放送教育協会「時給10円という現実〜消えゆく農民」

枠組みを超えて大きな連帯を

 報道によると、菅野さんは「日本の村から農民が消え、農民がつくる作物が消え、村自体が消えようとしている。間違いなく今、農業が滅びようとしている」と話し、その影響を一番受けるのは農民ではなく消費者だとして「枠組みを超えて大きな連携をつくり出してこそ、日本農業の行き詰まりを打開する道が開けていく」と語ったといいます。

基盤を支える農家への所得保障

 現在の農水省の補助金制度では、農地の集約や大規模化、輸出拡大を目的として法人など一部に多くの交付金が支出されていますが、中山間地が7割を占める日本では大規模化には限界があります。 
 百姓一揆では、「農業で暮らし、後継者をつくれる環境を整えてほしい」と、農地の規模に応じた直接払いによる所得保障を求めたとのこと。事務局を担う山田正彦元農相は、「欧米の農業を支えているのは国から農家への所得保障です。日本にはそれがない。農家と農業を守るための所得保障が必要です。生産者も消費者も日本の農業と食料を守るために立ち上がろう」と呼びかけました。

中山間地の農業を守る農業政策を

 日本の農業は中山間地を丹念に耕してきた小さな農家によって成り立ち、日本の風土と文化を形成してきました。農業の基盤を支える小さな農家にこそ農業政策が行き届くことが、日本の農業の再生につながるのではないでしょうか。

※イメージ

熊本の「百姓一揆」に参加したくまもと有機・田中誠さんからのメッセージ
 志高く農業と地域を支えてきた生産者も高齢化し、現実問題としてこのままではこれ以上日本の農業を営んでいくのは難しいのです。今回の百姓一揆は、生産者が「さすがにこのままでは日本の食が危ない」と立ちあがったデモです。
 食と環境は何があっても未来へつなげていかなければなりません。対立や批判ではなく、多くの人にもっと関心を持ってもらうことが必要だと思います。

Table Vol.514(2025年6月)

アクセスランキング
DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
アーカイブ

関連記事

PAGE TOP