2019年12月7日(土)・8日(日)、コープ自然派おおさかは役職員による産地見学を実施。「菌興椎茸協同組合」(鳥取市)では、栽培・育成方法について学びました。
原木しいたけの栽培方法
菌興椎茸協同組合は原木しいたけをはじめ、やまぶしたけ、やなぎまつたけ、トキイロヒラタケ、たもぎだけなど多種類の食用キノコの品種開発・栽培を行う組合です。キノコは約5,000種類あり、各地域の気候に合わせた品種の開発や種菌の育成を行い、全国の原木しいたけ農家に届けています。また、原木しいたけ生産者の生産・技術指導、新規生産者の育成など生産者のサポートも行っています。
しいたけの栽培方法には菌床栽培と原木栽培があります。菌床栽培はおがくずを固めたブロック状の菌床にしいたけの種菌を植え付け、室内で人工的に栽培し、3~6ヵ月のサイクルで収穫。原木栽培はクヌギ、コナラ、ミズナラなどの原木(直径約10㎝、長さ約1mに切り揃えて乾燥させた丸太)に種菌を植え付け、1年半~2年かけて自然栽培されます。
種菌は、おがくずに栄養分を混ぜてしいたけの菌糸を培養した「おが菌」、木片(駒)にしいたけの菌糸を培養した「駒菌」、おが菌を駒上に固めてしいたけの菌糸を培養した「形成菌」の3種類あります。「駒菌」と「形成菌」は長さ約2~3cmの鉄砲玉のような形で、原木にドリルで穴をあけて植え付けます。種菌を植え付けた原木を「ホダ木」、しいたけを栽培する畑のことを「ホダ場」と言い、ホダ木は風通しが良く涼しい、適度な湿度が保たれる森の中に並べます。原木に菌糸が張り巡らされ、木の栄養分を吸収して育ち、原木の厚い樹皮を破って芽吹く力は1ニュートンもあるということです。
原木栽培で循環型農林業
原木の利用は計画的に広葉樹林を伐採することで山を再生し、川や海を守ります。原木は4年間でしいたけ栽培を終えますが、使用済みの原木にはしいたけ以外のキノコに使える栄養分が残っているため、粉砕してまいたけの培地として再利用、味が濃くおいしいまいたけが育つと好評です。杉の間伐材を利用したキノコ栽培では、間伐材と米ぬか、小麦のふすまのみを原材料にした培地で、たもぎだけ、パールマッシュルーム、エリンギを栽培(市販のキノコは栄養剤、輸入のスイートコーン芯、米ぬかが培地の3分の1含まれているものが多くある)。使用済みの培地はキノコの菌で分解され、そのおがくずを豚舎や畑(らっきょう、ネギ、梨など)の堆肥として、地域の循環型農業に利用されています。また、福島第一原発事故によって森林が放射能汚染された福島県から木が調達できなくなったことをきっかけに杉に合う菌の開発が行われました。樹齢50年の杉16本が行う光合成から1人の一年間分の酸素が供給され、間伐材の利用による山の再生、落ち葉や菌の栄養が川や海に流れる循環型農林業がキノコ栽培を通して実現しています。
新タイプの乾燥しいたけ
しいたけは乾燥させることで旨み(グルタミン酸、グアニル酸)、栄養価(カリウム、ビタミンD、葉酸)が増加します。乾燥しいたけは45~55度で20時間以上、高温乾燥させますが、1970年頃まではしいたけを木のまま持ち帰り、炭窯やいろりの上に吊るして40~50時間かけて乾燥させていました。「旨味椎茸」はこの時代と同様の条件でつくられた旨みたっぷりの乾燥しいたけ。低温乾燥させることで木干しの状態をつくり、灯油消費量を従来の75%に削減した最新技術です。「旨味椎茸」は湯戻しして15分程度、苦味や雑味が少なく、甘みが強いため、子どもたちがだし汁を喜んで飲むほど。従来の乾燥しいたけに比べて、グアニル酸(旨味成分)、エリタデニン(コレステロール値を正常に保つ、血圧を下げる)、エルゴチオネイン(抗酸化作用)が豊富で機能性が高いことも特長です。
Table Vol.413(2020年4月)