2025年2月7日、コープ自然派兵庫(Gブロック)は、フェアトレード商品を扱うプレス・オールターナティブ の久保木敦子さんと高生連の岡円香さんを招き、生産現地の話を聞きました。

「創業当時、しぼりたての無殺菌牛乳をコーラなどの空き瓶に詰めてお届けしていました」と岡さん。
久保木さんは「フェアトレードラベルがなくても、団体の取り組みを知って選ぶことで応援できる事を知ってもらえたら」と。
「プレス・オールターナティブ」って?
プレス・オールターナティブは1985年に創業し、翌年から日本で初めてフェアトレード事業を始め、「第3世界ショップ」を立ち上げました。フェアトレードとは、開発途上国でつくられた原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、生産者や労働者の自立をめざす貿易の仕組みです。第3世界ショップはプレス・オールターナティブの輸入販売部門で、有機コーヒーや紅茶、ナッツ、ドライフルーツ、お菓子などを取り扱っています。「第3世界」という名には、多様性を認め合い、これまでにない新しい選択肢をという想いが込められ、「生産者と対等に直接対話する『顔の見える関係』を大切に、知恵を出し合いながら関係を深めています」と久保木さんは話します。
高生連とプレス・オールターナティブの出会い
高生連は1989年高知県で設立し、人や環境を守りたいという生産者とつながって、無農薬・減農薬の農産物やオーガニック加工品を製造・販売しています。代表的な商品は、35年以上前から取り扱っている「山地酪農牛乳」です。日当たりの良い山岳地帯に日本芝を敷き、365日自然の中で暮らす牛の乳をノンホモ加工しています。プレス・オールターナティブ創始者の片岡勝さんが「フェアトレードのコーヒー豆を輸入したい」と全国を行脚していたところ、高生連の創始者である現会長の松林直之さんと出会いました。 69 ㎏の生豆を輸入し、高知県内で焙煎し、コープ自然派で販売したことがはじまりです。
1枚のチョコレートから広がる世界
第3世界ショップのチョコレートはくちどけが良く、甘くて華やかな香りがします。その秘密は原材料と製造方法にあります。カカオ豆はペルーとドミニカ共和国でつくられ、粗糖はコスタリカとパラグアイ、バニラはマダガスカル。すべての原材料が小規模農場でつくられ、スイスに運ばれて伝統製法によりチョコレートが仕上がります。
カカオ豆の生産地の一つ、ドミニカ共和国はカリブ海にある小さな島国です。かつて農家はカカオ豆の生産だけでは収入が不安定で出稼ぎをしていましたが、スイスのチョコレート生産者がサポートして有機認証を取得。カカオ豆の品質が向上し、有機という付加価値を価格に反映することで安定的な収入を確保できるようになりました。出稼ぎから脱却し、農家同士の協働も進み、現在ではより強い農園づくりに取り組んでいます。

神奈川県の福祉施設で活動する「嬉々!!CREATIVE(キキ・クリエイティブ)」のアーティストたちの作品と第3世界ショップがコラボした商品です。

「カレーの壺」のマリオさん
第3世界ショップの人気商品「カレーの壺シリーズ」は、スリランカのマリオさんが開発しました。マリオさんは、毎日何十種類ものスパイスを調合して料理をするスリランカの女性のために、カレーペーストをつくりました。女性たちを長時間の家事から解放したとして、主婦たちから熱烈な支持を受けました。そのカレーペーストを日本向けにアレンジしたのが「カレーの壺」です。

2022年、スリランカで経済危機が起き、燃料や原材料が高騰して大混乱を招きました。マリオさんは「今できることを!」と、工場内に自家発電機やスパイス畑をつくり、プレス・オールターナティブはレシピ本の作成など持続可能な事業のための支援に取り組みました。商品を買ってもらうことが生産者の力になるからです。会社設立当初からマリオさんは障がい者の雇用を進め、無料の食堂やレクリエーション施設をつくるなど、当時のスリランカでは画期的な福利厚生を充実させ、スリランカの人々の自立に貢献しています。
Table Vol.513(2025年5月)