2023年7月7日、コープ自然派兵庫(商品委員会主催)は旭商事株式会社の山根浩敬さんを講師に「もっとたまごが好きになる!知ってるようで知らないたまご講座」を開催。山根さんからアニマルウェルフェア(動物福祉・以下AW)とオーガニック・平飼いたまごの物語を聴きました。
たまごの価格高騰
たまごの市場価格は需要と供給で決まり、旭商事のたまご1個当たりの価格構成は65%がえさ代、残り35%が人件費と光熱費などです。2020年10月頃に原材料が高騰し、えさ代は170%値上がりし経営を圧迫しています。また、オーガニックたまごの鶏の有機飼料は、PHF(収穫後農薬不使用)の約3倍と更に高価です。有機JAS認定を継続する経費もかかります。飼料価格の高騰により養鶏農家は減羽をせざるを得ない状況。結果、全国的に供給が減少。そこへ追い打ちをかけるように鳥インフルエンザが猛威を振るい、国内の鶏1億3千万羽の10%強が殺処分となりました。山根さんは25年養鶏を営んでいますが、昨年のように10月から流行する事態は初めてでした。
アニマルウェルフェア+さらなる取り組み
香川・徳島県に3農場構え、徳島県吉野川市にある山川農場でオーガニックたまご・平飼いたまごを育む鶏を飼育しています。農場はAWの考え方に対応し、野外飼育に近く、自由に動きまわれて、砂浴びや止まり木で休息するなど鶏本来の行動ができる健康的な環境です。日本の主流であるケージ飼いはいわば檻。その中で鶏はお勤めが終わるまで過ごします。羽根を広げるなど、鶏本来の行動が抑制されますが、1羽単位の管理がしやすく、多段式で数多く飼えるのでコストパフォーマンスに優れています。平飼いはいわば庭。1羽単位の管理が難しく、どの鶏が産卵したのか把握しにくく、敷地内で飼育できる羽数も限られてしまいます。
また、えさがとても重要で「鶏が食べたものでたまごができるので、鶏が安心な食事をすると安心なたまごになり、人も安心していただけます」と山根さんは話します。平飼い・オーガニックたまごは、鶏も作る人も食べる人もhappyなたまごかもしれません。
なぜオーガニック畜産に取り組むのか
有機飼料で育てるには、遺伝子組み換えでない作物を育てる耕作地が必要です。耕作地が増えると農薬や薬剤に汚染されない土壌が増えます。動物福祉を優先して飼育すると、動物本来の行動がとれる家畜や家きん(鳥類)を一頭・一羽でも増やせ、ストレスから解放できます。2つが両輪となり、三位一体で持続可能な社会へつながる方法がオーガニック畜産です。味はわかりやすい差別化ですが、ストレスなく育った畜産がおいしいのは当然。山根さんは「味以上の背景に目を向けてほしい」と語ります。家畜に限らず、いただくものすべてに共通します。
限りなく卓越したものを求めて
旭商事はさらなる一歩を踏み出します。「AWやオーガニックを生産するうえで、包材も重要と考えモールドパック(紙資材)化に取り組みたい。また、廃鶏もいのちをいただく観点から、いずれ循環していくよう考えたい。そして、日本に平飼いたまごを広げるために選んでほしい」と話します。モールドパック化(プラスチック資材から紙資材へ切替)へは大規模な設備投資が必要です。組合員からカタログを回収し、売却益を原資にモールド化を進めています。さらに旭商事は経済産業省中小企業庁がすすめる「ものづくり補助金」の採択を受けました。また、農水省がAWの指針を初めて取りまとめたこともあり、国内での広がりに期待が高まります。
Table Vol.494(2023年10月)