2024年10月17日、コープ自然派奈良(チームゆったりさん)はチーズケーキ専門店seed学習会を開催。専務の菊早苗さんを迎えて、商品への思いとこだわりを聞きました。

カフェダイニングからのスタート
むかしむかし、といっても20年ほど前のはなし。南大阪にステキなカフェダイニングがありました。18坪の小さなお店は、野菜を中心としたビュッフェと薪窯のピザが人気。年間100件以上のウェディングパーティやバースデイパーティが開催され、「お祝いはこの店で」と地域に愛される店でした。しかし、そんなお店を2度の大きな災害が襲います。ひとつは台風の直撃。壊れたお店を直すため1カ月の休業を余儀なくされます。さらに翌年、新型コロナが世界中に蔓延。今度の休業はいつまで続くか分かりません。なんとか従業員を守らなければ……そう考えた社長と専務は、カフェダイニングを閉店し、お店で人気だったチーズケーキの卸売りに会社の業態を変えることを決断します。「南大阪を飛び出して、素材にこだわったスイーツを求める人にチーズケーキを届けよう」。そうして生まれたのが、cheesecake lab seedでした。
エシカルスイーツ専門店として
2018年の台風21号、2019年のコロナ禍を経て、2020年にチーズケーキ専門店としてseedが再出発したとき、コンセプトとして打ち出したのが「エシカル」というキーワードでした。社長の南さんは、2002年のseed創業と同時に双子の娘の母になりました。娘のひとりがアトピー体質だったことから、「安心して食べられるお菓子をつくりたい」と思うようになります。さらにそれは、未来の子どもたちに豊かな地球を残していきたいという思いへと広がっていきます。「スイーツを通して食の業界の社会課題を解決していきたい。人と地球に優しい未来をつくっていきたい」。それが「エシカル」ということばに込められた思いです。
とはいえ、当初エシカルやオーガニックについてはまだまだ知識不足の状態だったといいます。菊さんは、「実はコープ自然派と取引ができるメーカーになろうというのがひとつの目標でした。コープ自然派の基準を満たせるように勉強するなかで、必要な知識や考え方を身に着けていったんです」と話します。
こだわりの原材料
seedのチーズケーキの主原料は、すべて国産です。よつば乳業のクリームチーズ、鹿児島県産の粗糖、旭商事のたまご。そして、小麦粉ではなく玄米粉を使用してグルテンフリーでつくっています。さらに大紀コープファームの柿、津軽産直組合のりんごなど、コープ自然派でおなじみの生産者のフルーツもたくさん使われています。
玄米粉の生産者は、熊本県の野口さん。「蛍がいっぱい飛び回っていた子どもの頃の環境を取り戻したい」という思いで、標高600メートルの田んぼに湧水をひき、農薬も化学肥料も使わずに米を育てています。「このような生産者の思いを、スイーツという形にして消費者につなげるのがseedの役割だと思っています」と菊さん。規格外フルーツのアップサイクルなどフードロス削減にも取り組み、〝もったいない〟を〝お客さんの喜び〟に変えることにもやりがいを感じています。

共感・共創の時代
菊さんは「商品を選ぶ基準が、価格や表面的な価値ではなく、そのモノに込められた思いに共感できるか、望む未来を一緒に実現していくパートナーになりえるかといった視点に変わりつつあるのでは」といいます。「seedでも、生産者、取引先、そしてコープ自然派の組合員のみなさんとしっかりつながって、子どもたちに豊かな地球を残していきたいと思います」と締めくくりました。
Table Vol.511(2025年3月)