3月8日(水)、コープ自然派おおさか(商品委員会主催)は宇和島じゃこ天でおなじみの島原かまぼこ(株式会社島原本舗)営業部長・山口智史さんを招き、練り製品のこだわりや製造工程について聴きました。
新鮮な魚を手作業で加工
島原かまぼこは、愛媛県宇和島市で1949年に創業。四国と九州に挟まれた豊後水道(宇和海)海域で水揚げされた地魚を主原料とし、鮮魚の状態で加工したじゃこ天やかまぼこ、ちくわなどの練り製品を製造しています。
「宇和島じゃこ天」は、毎日市場から仕入れるアジやタチウオなどの頭や内臓を一尾ずつ手作業で取り除きます。生の魚をさばく際、鮮度を保つために大きなまな板に魚を盛り、その上に氷をのせて作業します。多い時は1トン近くの魚を下処理しますが、冬場は洗面器に湯を張り、かじかむ手を作業の合間に温めるなど工夫をしているとのこと。できる限り余すところなく使い切りたいのですが、頭の骨は硬すぎてどんなにすり潰してもガリっという食感が残り、内臓は苦味とえぐ味が出るので取り除きます。新鮮な小魚の骨も身も皮もすべて摩擦熱の出にくい石うすで時間をかけてすり潰し、なたね油で揚げて、カルシウムたっぷりのじゃこ天に仕上げます。コープ自然派仕様「宇和島じゃこ天」は、地元で獲れたアジやタチウオにリン酸塩不使用の北海道産スケソウダラを混ぜています。一般的なじゃこ天は、身をまとめ保湿力を上げるためにリン酸塩を使用しますが、島原かまぼこのじゃこ天は、生のすり身を多く使用するのでリン酸塩不使用が可能になるとのこと。アジは年中獲れますが季節によってサイズが変化し、かつてはタチウオも年中獲れましたが、今は季節が限られているということです。特にアジは大きいものと小さいものでは脂ののり方、パサつき感が違ってきます。一般的な練りものは、冷凍すり身だけ使い、味も単一的ですが、島原かまぼこではその日獲れたものを熟練の職人がうまく配合し、安定した味を維持しています。
伝統製法を守り続ける
「宇和島かまぼこ」の主原料となるエソは淡白な白身で、1尾ずつ頭と内臓を取り除き、腹開きにします。そして、開いた状態のものをスタンプのように圧力をかけて魚肉だけを取ります。魚肉を大きなステンレス製の桶に氷水と入れて攪拌し、余分な脂や血合いを浮かせて取り除くと、きれいな魚のすり身になります。ここから水分を絞り、塩を加えて練り、かまぼこができ上がります。
一般的なかまぼこは少し甘い味に仕上がっています。これは冷凍焼けをして身の硬さが変わらないよう砂糖もしくは甘みのあるものを加えているからです。表示上はキャリーオーバー(原料中に含まれるが使用した食品には微量で効果が出ないため、法律によって表示を免除される添加物をさす)により表示しないので、購入時はわかりにくくなっています。島原かまぼこのかまぼこは、古来の漬物と同じようなつくり方で、地元の魚に塩をふって水分を出し、それをすり潰して練り上げていく昔ながらの製法なので、少し塩っ辛いと言われることもあるそうです。
大手の練りものは海外の冷凍すり身を仕入れてつくりますが、東南アジアではコロナの影響で、漁に出られず工場も操業できず、また為替の問題もあり、商品の価格が上がっています。島原かまぼこは、地元の鮮魚の割合が高いので、価格は抑えられているとのこと。しかし、世界的にはヨーロッパでは寿司ブームが追い風となり、近年カニカマ用の冷凍すり身が多く消費され、調達する時に日本の商社は買い負けるという現象が起きています。
山口さんは「じゃこ天の食べ方は、そのまま食べたり炒めて使うことが多いと思いますが、地元では魚のうま味がしみ込むよう野菜やひじきと炊いたり、ちらし寿司やいなり寿司の具としても使います。昔は練りものをくずしと呼び、魚としては値が付かないような小魚を練りものの原料として使ってきました。有効利用の観点からも海の恵みに感謝しながら、気軽に食べられる伝統食品として次世代へつなげていきたいと考えています」と話しました。
Table Vol.488(2023年5月)より
一部修正