一行は近鉄・JR鳥羽駅近くの「鳥羽マルシェ」に移動、「鳥羽の漁業とSDGsについて」をテーマに、鳥羽磯部漁業協同組合のみなさんにお話を聴きました。

今回の研修プログラムをコーディネートした鳥羽磯部漁業協同組合・戦略企画室室長・小野里伸さん。
会場は鳥羽磯部漁業協同組合とJA鳥羽志摩が協同で立ち上げた「鳥羽マルシェ」。

鳥羽の漁法と豊富な魚種

 鳥羽市は全域が伊勢志摩国立公園に位置し、美しい海と豊かな海産資源に恵まれた地域です。漁業と観光業が盛んで、人口約1万7000人の小さな町に年間400万人(コロナ禍前)を超える観光客が訪れます。伊勢湾の栄養豊富な海水と外洋からの温かい海水が混ざり合う豊かな漁場は、沿岸漁業が中心で、ほとんどの漁師が個人経営です。サワラやアジ、サバなどは一本釣りで漁獲され、なかでもサワラの一部は「一本釣り答志島トロさわら」としてブランド化されています。伊勢湾の小魚(イワシ類など)は豊富なプランクトンを食べて育つため脂がのっていて、その脂がのった小魚を食べる鳥羽のサワラはトロけるような味わいになるとのこと。そこで、三重県水産研究所の協力を得てサワラの脂肪含量を計測し、全国的にトップクラスの高さが証明された「一本釣り答志島トロさわら」を売り出しました。商品案内ポスティ掲載の「サワラの味噌漬け」は答志島で水揚げしたサワラを大阪の九里株式会社で加工した商品です。一般的にサワラは西京焼きや塩焼きにしますが、鳥羽では刺身か炙り(たたき)で消費されるため、現地で味噌漬けに加工する会社が少なく、大阪で製品化することになりました。離島地域で行われる船曳網漁ではイワシやシラスなど、刺し網漁は伊勢海老やカレイ、ヒラメ、マダイ、スズキ等、また、貝や海藻等を素潜りでとる「海女漁」もあり、鳥羽ではさまざまな魚介類と漁法があります。

佐田浜と離島を背景に記念撮影、近隣にドルフィン公園、ミキモト真珠島、鳥羽水族館などがあります。

鳥羽市の海洋ゴミの状況

 鳥羽市は一級河川が多い地域で、台風や大雨で河川が増水し、川の最後の地点である伊勢湾にすべてが流れ着きます。近年、山の荒廃が進んだことで流木量が増え、伊勢湾流域を発生源とする海洋ゴミも年々増加、海洋ゴミは年間1万1000t(1年間に1世帯あたり排出されるゴミの量は約1.2t)を超えるといわれ、そのうち約5000tが鳥羽市に、答志島桃取町の奈佐の浜には約3000tが漂着。最近、増えているのがプラスチックゴミで、なかでもプラスチックを使用した被覆肥料による環境汚染が深刻です。

海藻を増やす取り組み

 日本各地の沿岸で、海藻が消失する「磯焼け」が起きています。磯焼けは、海藻が減り海の生態系に影響を及ぼす現象のことです。海藻は魚のエサや産卵・生活場所でもあることから、海藻が減ると漁獲量も影響を受けます。地球温暖化や海洋汚染、海藻を食べるウニ類や魚類の増加などの問題が背景にあると考えられますが、直接的な原因はわかっていません。そこで、石にアラメなど海藻の種苗を取り付け海に沈めて育てる、海藻の植樹を地元の中学生と協力して始めました。

 ニザダイ、ブダイ、アイゴ、イスズミ、メジナなどの魚は海藻を食べます。なかでも、アイゴという雑食性の魚は、背ビレと尻ビレに毒性の棘をもち、特有の臭いがあるため、漁獲されても市場に出されず廃棄されてきました。そこで、「相差machioko志(おうさつまちおこし)」メンバーがアイゴの加工商品化に取り組み、「おかず味噌」やアヒージョにした「アイージョ」などを商品化。アイゴを食べて豊かな藻場の再生、海藻による二酸化炭素の吸収、魚介類の産卵・育成など持続可能な水産資源の循環を目ざしています。

 相差町は海女漁従事者が日本一多い地域です。海女漁では、春のワカメ、ヒジキに始まり、夏はアラメ、アワビ、タコ、岩ガキ、秋から冬にかけてサザエ、ナマコなどバラエティ豊かな海産物を漁獲しています。海女歴6年の中村文美さんは「海女を始めた頃に比べて、海藻量が激減し、貝類が育たない、黒ウニが増えるなどの変化が見られ、ここ数年、海底は岩だらけになり、藻場が激変しています」と地球温暖化の影響を肌で感じているということです。

相差町の新たな特産品をつくる取り組みをしている「相差machioko志」の野村恵美子さんと現役海女の野村浩美さん・中村文美さん(右から)。

答志島に残る文化と歴史

 鳥羽市には4つの有人離島があり、その1つ答志島の支所長を務める濱口輝満さんに島の文化や歴史について聴きました。生まれも育ちも答志島の濱口さんは、漁業を営む両親の働く姿を見て育ったと言います。「子どもの頃、親父に連れられ家族で海に出ました。海女をしていた母さんが海に飛び込み、海藻が生い茂る中を見えんようなっていくのが、子ども心に怖かったです。現在は磯焼けが進み、海の中を覗くと岩が見えます。18歳で漁協に入りましたが、当時に比べて水揚げ量が激減し、海況の変化と海水温度の上昇でこの辺では見たことがない魚がとれるようになりました。後継者不足も深刻で、漁師で生計を立てるのが厳しいことから別の職業に就く人が増えています」。答志島は「寝屋子制度」が全国で唯一残る地域で、「寝屋子制度」とは中学卒業後の男子5〜6名がグループを組み、血縁関係のない家で毎日寝泊まりする風習です。受け入れる側を寝屋親、寝泊まりする子たちを寝屋子と呼び、寝屋子と寝屋親、寝屋子同士は深い絆で結ばれる関係が生涯続くとのこと。「日本に古くからある思いやりや助け合いが残る島です。ゆっくりした時間を過ごしたい、美味しいものを食べたい時に最適な島ですよ」と濱口さんは話します。

答志島のコミュニティーや独特の風習、魅力について語る鳥羽磯部漁業協同組合・答志支所支所長・濱口輝満さん。

鳥羽の漁業の現状と課題

 新型コロナウイルスの影響で高級魚介類の需要が低迷しています。近年、伊勢湾では黒潮大蛇行(黒潮が紀伊半島沖で大きく南に蛇行する現象 魚の生息域が変化して漁業に影響が出る可能性があるほか、潮位の上昇により高潮などの被害が発生しやすくなる)や貧栄養化、赤潮の発生、海水温の上昇など、漁場環境の変化から漁獲量自体が減少。漁業経費の高騰、漁業者の高齢化など漁業経営は厳しい状況です。

 鳥羽市で行われている黒ノリ・ワカメ・カキ・あおさ(ヒトエグサ)の養殖では、2019年から黒ノリの色落ち、カキの突然死が発生するなどの被害が増え、生産量が激減。船曳網漁ではイワシ類などを安定的に漁獲してきましたが、最近は年ごとの変動や低下が顕著に見られ、春先の名物イカナゴ(年間数億円の漁獲高があった)は2015年から全くとれなくなり、マダコの漁獲量も激減しています。

 限られた資源を守りながら漁を続けるため、昔から「口開け制度」(漁の解禁日を決めている)を取り入れ、操業日数、操業時間の制限を行ってきました。サワラの流し網漁は産卵期までを禁漁期間とし、産卵後の7月に解禁。サワラ釣り漁は週2日の休漁日を設定、2021年からサワラが減少し始めていることからさらに厳しいルールづくりを検討中。地域ごとに厳しく漁期を定め、漁獲できる貝の大きさを定めるなど、資源を獲り過ぎないよう守り続けているということです。

鳥羽のエコ・ツーリズムを運営する「海島遊民くらぶ」・江崎貴久さん、海女さんとの交流や相差・石神さんお参りツアーなどを企画しています。

海産&酪農アンバサダーin三重県の記事一覧はこちら>>

Table Vol.478(2022年12月)より
一部修正・加筆