2024年10月13日、コープ自然派奈良(チームtenTEN・カラフル共催)は「みんながしあわせになる勉強会」と題した学習会を開催。DVを中心に、人間関係の問題をひとりで抱え込まないためのヒントを聞きました。
※ DV (ドメスティック・バイオレンス)配偶者や恋人など親密な関係にある人から振るわれる暴力のこと。

生きづらさを抱える当事者として
さまざまな生きづらさを抱える人たちをサポートする一般財団法人ワンネス財団。川端理之さんはその職員ですが、もともとは自身が薬物依存の当事者として支援を受けていました。人に頼ることができず、努力を重ねて〝良い高校〟〝良い大学〟、そして〝良い会社〟に就職した川端さんがプレッシャーを乗り越えるために頼ったのが違法薬物でした。このままではいけないと施設に入所したのが29歳のとき。その後回復した川端さんは、ワンネス財団に就職しました。「ワンネス財団では、職員約70名のうち約7割がもともと支援されていた人たちです。当事者にしか分からない苦しみを理解して支援できるのが私たちの強み。困った時の相談先のひとつとして、こんな場所があることを知ってもらえたら」と川端さんは話します。夫による壮絶なDVから逃れ、入所当初は精神が不安定で自傷行為を繰り返していた女性も、回復して職員として勤務しており、いま入所中の女性たちに希望を与える存在となっているそうです。

加害者にも被害者にもならないために
うるわ総合法律事務所の松田真紀さんは、DVやLGBTQ訴訟にも見識の深い弁護士。DVがからむ事件やトラブルも多く扱ってきました。DVには、身体的暴力、性的暴力、経済的暴力、精神的暴力、行動の制限などがあります。殴る蹴るはもちろん、モノにあたる、ドアを大きな音で閉める、避妊をしない、暴言を吐く、不機嫌な態度でコントロールしようとする、ケータイチェック、連絡の強要など、相手を支配しようとする関係がDVに当たります。性的暴力に関しては、2023年7月、刑法が改正され「不同意性交等罪」が新設されましたが、恋人や夫婦関係などすでに肉体関係にある場合でも、「その時」セックス等をしたくない人に強要することもこれに該当します。「恋愛と混ざると、それが暴力だと気づきにくい傾向があります。被害者にならないためには、相手に支配的な傾向がないか見極めること、加害者にならないためには、相手との一体感を求めすぎていないか自省することが重要です」と松田さんは話します。
そして、DVが起きてしまった場合は、とにかく第三者に相談すること。「弁護士に限らず無料の相談窓口もいろいろあるので、まずはどんなことでも相談してみてください。相談してみて適切な支援、提案が得られないと感じたとしても、他にも相談支援を求めることが問題解決の大きなポイントになります」。

それぞれの考え方を尊重すること
株式会社グランエスペランサの棚橋美枝子さんは、行政とタッグを組んで結婚応援事業を行っています。結婚応援といっても「誰もが結婚をするべき」と考えているわけではありません。結婚したいのにできない人、したくないのに結婚への圧を感じている人、結婚したけどやめたい人、それぞれの希望が叶えられるように応援したいと取り組んでいます。その取り組みの中でDVにまつわる相談を受けることも多くあります。棚橋さんは、「暴力は、自分の弱さを見つめることができず、その不安を相手にぶつけるときに起きるのではないか」と考えています。支援者として大切なのは、加害者も被害者も、どちらも苦しんでいる当事者同士として捉えること。加害してしまう人の生い立ちや育ちを知ることで、暴力の背景が分かる場合もあります。「どちらが悪いではなく、それぞれの考え方を尊重した上で、関係性を再構築する支援ができれば」と棚橋さんは話します。

3人の話に共通するのは「あなたはひとりじゃない」というメッセージ。ひとりで悩みを抱え込まず、まずは誰かに話してみませんか。
Table Vol.509(2025年1月)