世界的に注目されるプラスチックごみ問題。環境や健康への影響が懸念されるなか、生協として、また日々の暮らしで私たちに何ができるのでしょうか。書籍の翻訳や執筆などを通じてサステイナブルな暮らしを発信する服部雄一郎さん・服部麻子さんに、連合リサイクル委員会の筆口智子さんが話を聞きました。

服部雄一郎/服部麻子| Hattori Yuichiro/ Hattori Asako
神奈川県葉山町、カリフォルニア、南インド、京都での生活を経て、2014年、3人の子どもたちと高知県に移住。ゼロウェイストやプラスチックフリーなどの実践的な取り組みが注目を集める。夫婦の共著に『サステイナブルに暮らしたい』『サステイナブルに家を建てる』、雄一郎さんの新刊に『がんばらないコンポスト生活』、訳書に『ゼロ・ウェイスト・ホーム』『プラスチック・フリー生活』ほか。エコロジカルな配慮に満ちた宿「ロータスリトリート」も運営。
トライすることには価値しかない
筆口 服部さんの著書『サステイナブルに暮らしたい』にある「ちょっとした変化や工夫を取り入れてみることで、日々の手ざわりやものの見え方が劇的に変わっていく」という言葉が素敵だなぁと思いました。ただ、今の情報化社会では、さまざまな情報が入りすぎて「完璧でなければ」とか「私はできていない」と考えてしまって一歩も踏み出せない、あるいは挫折してしまうこともよくあると思うんです。
服部麻子(以下、麻子) 「トライアンドエラー」という表現がありますよね。「試してみて、いっぱい失敗して」といった響きですが、私は「失敗」というよりも「トライしたら必ずその結果がわかる」とポジティブな経験として捉えています。実際、思い描いた結果にならないことがほとんどですが、「やってみたらこうなった!」という結果の「気づき」となる。ひとつトライすれば、ひとつ結果が出て、また次のトライができると思うんです。
筆口 なるほど、気づくことで自分に起きた小さな変化は、成功の方向に向かっているプロセスということですね。
麻子 そうですね。成功よりも「変化」に価値を感じますね、「ちょっと違ったかな」と思ったら軌道修正すればいい。気づきを重ねることで、自分の向き不向きがクリアになっていって、より自分に合った選択ができるようになる。その意味では、「トライすることには価値しかない」という風に感じています。
筆口 ただ、環境やリサイクルのアクションとなると、難しく感じる人も多いです。
服部雄一郎(以下、雄一郎) 「そもそも何をすべきなのか?」、さらに「こんなことを自分がやっても意味があるのか?」といった疑問が生じるのは自然なことだと思います。
麻子 私もいまだに分からないことだらけです。でも、ちょっと考えてみたり、調べたり、そのトライだけで「一歩前進」という部分はありますよね。
雄一郎 そう。必ずしも効果的なアクションにつながらなくてもいいと思うんです。なぜなら、「知ろうとした」こと自体が変化ですから。常に結果を求めてしまうと、どうしてもしんどくなりますよね。楽しくないことは続かないし、無理せず「これならできる」を選ぶほうが簡単。その過程で「これならできる」の幅が広がっていったりもする。うちはそんなスタンスでいろいろなことにのびのび挑戦し、やった分だけ面白い結果や学びがついてきたかな、というのはありますね。

「ごみの仕事」で見つけた心地よい暮らし
雄一郎 よく「そんなにごみを減らして、意識が高いですね」と言われますが、実は20代の終わり頃まで、ごみに何の関心もなかったんです。都会のオフィスでアート系の仕事をして、外食三昧・消費三昧の夜型生活でした。転機は子どもができたことで、家族との時間を大切にしたいと思って役場に転職したら、まさかの「ごみ担当」に配属されて。そこで分別とコンポストを始めてみたら、なぜか燃えるごみがほとんど消えてしまったんです。その圧倒的な心地よさに価値観が変わって、義務ではなくて、自分を自由にするエコの面白さにのめり込んでいった。「本当に大切なものが見えた」という感覚がありました。
筆口 そこから、1年間のごみが瓶1本分というライフスタイルを紹介した書籍『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳につながったのですね。
雄一郎 はい。あの本の内容は極端に思えるかもしれませんが、ゼロウェイストの本質はシンプルです。わが家も、生ごみをコンポストすることでごみ箱の匂いからも解放されたし、ごみ出しの回数も激減しました。あとは、すぐに使い捨てるようなものを買うのをやめて、なるべくモノを減らすことで、すごくスッキリ気持ちよく暮らせるようになったんです。
「Return Me(僕を戻して)」―ユーモアが行動を変える
筆口 コープ自然派の日々の買い物から出るプラごみについて、気をつけていることや工夫などありますか。
麻子 カタログを見ながら、何となく包装が少なそうなものを選んでいますね。私のお気に入りは「自然派Style神山鶏のぱくぱく餃子」。安心な材料とおいしさはもちろん、袋にそのままゴロゴロ入っている「最小限パッケージ」なのがうれしい。トレーに入っていない肉もありがたいです。資源も浪費しないし、ごみ出しの手間も省ける。ごみをゼロにはできなくても、「できるだけ少なく」「でも無理はせずに」と思っています。
雄一郎 僕もトレー入りのものは買いづらいですね。ただ、コープ自然派では「同じプラ」でも、ポリ塩化ビニルなど危険性の高いプラの使用は避けられているので、安心して買い物ができるなと感じています。
筆口 実は、ミールキットのトレーも、組合員の要望を受けて「トレーからトレーへ」のリサイクルをしていて、プラスチックの外袋も回収してリサイクルしています。リユースびんも始まりましたが、いずれもまだ回収率が低いのが課題です。
麻子 回収してリサイクル、という循環は理想的。組合員の声から変化が生まれるのもすばらしいですね。
雄一郎 「返せる」ことをポジティブに捉えられるように、情報の可視化をさらに一押ししてみてもいいかもしれません。何にリサイクルされていてどんなメリットがあるのか、といった情報を繰り返し伝えたり、エコ包材マークをつけてみるとか。レシピに「このトレーは回収しています」と一言あるだけでも受け取り方はかなり変わるかも。
「ユーモアが行動を変える」という事例もいろいろあります。スウェーデンのスーパーの冷凍食品棚には「孫のために早く扉を閉めましょう」と書いてあるそうですよ。あと、海外のおしゃれなリターナブルカップには「Return Me!(僕を戻してね)」と印字されて返却が促されていたり。こういうお茶目なひねりにも大きな可能性がある気がします。
プロセスの信頼感
雄一郎 取り組みの姿勢として、コープ自然派が情報公開を徹底して、「途中のプロセス」も伝えてくれているのはとても大事なことだと思います。パタゴニアのような企業も「目標にはまだ到達していないけれど、ここまでやっている。この先こうしたい」と、現在地にとどまらない「理念」をきっぱり提示しています。単なる義務や報告を超えた啓発的なパワーも感じます。
麻子 不完全さも込みで「誠実に説明しようという姿勢」には信頼感がありますね。私はちょっとした疑問を知り合いの組合員理事さんによく話すのですが、その度にいつも丁寧に経緯や理由を教えてくれる。そういったひとつひとつも納得感につながっています。
筆口 組合員がつくる生協として、予定調和ではなく、多様な意見を取り入れてプロセスを共有していくことが大事ですね。
台所から社会を変えるコンポスト生活
筆口 家庭で今日からできるおすすめのアクションはありますか。
麻子 「劇的な効果」といったら、やっぱりコンポストですよね。生ごみのストレスから解放されることの快適さは絶大です。
雄一郎 うちはコンポストで人生が変わりましたからね。日本では家庭ごみの約8割が「燃えるごみ」として焼却されていますが、その半分近くが生ごみといわれています。これをコンポストすれば、ごみは一気に減りますし、「腐るもの」がなくなると、ごみ箱って全然怖くないんですよ。
麻子 最近はマンションのベランダでもできるタイプも出てきていますし、循環のある暮らしの心地よさを体験していただきたいですね。新刊『がんばらないコンポスト生活』もぜひ参考にしていただきたいです。
雄一郎 もうひとつ、効果抜群なのは「雑がみ」の分別。プリント類や、封筒、お菓子の箱などの紙は「燃えるごみ」に混ぜずに古紙として資源化できる自治体が多いんです。これをすることで、ごみはますます減って、「燃えるごみ」は月に1回のごみ出しで十分。雑がみの分別はまだまだやっていない人も多いので、ぜひ取り組んでいただきたいアクションです。

モノを届けるだけでなく「循環のハブ」に
雄一郎 これからのコープ自然派への期待として、たとえば「リペア(修理)」や「レンタル」などの「循環」の枠組みが広がっていったらおもしろいだろうなぁと感じています 。日常の消費は一方通行になりがちだけれど、生協にはすでに「配送と回収」という双方向の流れがあって、それはすごい強みなので。
麻子 ネット上の知らないサイトでレンタルするのは心理的ハードルが高いけれど、コープ自然派のトラックで届けてくれるなら、すごく安心感があります。
雄一郎 既に取り組まれている「ふとんのまる洗い」などの延長線上で、ちょっとした小物を修理してもらえたり、たまにしか使わない工具や旅行用品、来客用の布団などをレンタルできたり、「新品の消費」以外のマーケットがもっと広がっていくといいな、と。環境負荷ゼロを目指す「ZERO PC」のようなリユースパソコン企業と提携して「リユース」を後押しするなども素敵です。単なる「商品の購⼊」を超えて、すごく楽しい未来につながっていきそうな感じがします。
麻子 あとは「パワーシフト(電力会社の切り替え)」のような呼びかけもできたらいいですよね。自然エネルギーの電力を「コープ自然派の皆さんもどうぞ」と紹介できたりしたら、誰でもできる大きな変化になると思います。
心地よいほうへ、手を伸ばす
筆口 最後に、これからサステイナブルな暮らしを始めたいという方へメッセージをお願いします。
麻子 キーワードは「がんばらない」でしょうか。やってみたいこと、簡単なことから「やってみて」ほしいですね。楽しければ、無理なく自然に続けられます。自分が心地よいところ、こだわりすぎずに家族がしあわせになれるところをぜひ見つけてください。
雄一郎 「自分ひとりがたったこれだけ行動を変えたところで、ほとんど意味がない」と感じてしまう人もいると思いますが、ひとりずつは少なくても、より多くの人が取り組むことで、それが「集合の力」となって無視できない変化となる。そういった部分こそがエコアクションのいちばんの価値じゃないかな。
麻子 それに、エコは「生き方」や「価値観」と重なるから、実はすごく根本的なものなんですよね。エコを考えることで、自分にとって「何がしあわせか」「何を選ぶか」というダイナミックな自己変容が生まれてきます。
雄一郎 情報を得てみると、びっくりするようないいソリューションやアイデアも見つかる時代です。そういう情報に触れて、知ろうとすること。コープ自然派の仕組みや情報も、それを後押ししてくれる素晴らしい材料だと思います。
筆口 「こっちの方が気持ちいいから、この道を選ぶ」そんなワクワクするようなスタンスで、コープ自然派全体でポジティブな視点を広げていきたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。
Table Vol.523(2026年3月)

